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生徒会役員達は変わり者!?  作者: 沙由梨
Past1 ~東真~
4/8

第3話 迷いと怪我

遅くなってすみません!

設定を考えていたし受験シーズンだったもので…。


これからもどうぞよろしくお願いします!


 翌日、俺はHRが終わった後、東真先輩に言われた通り屋上へ向かった。

 するとその途中、欠伸をしながら歩いている父さんを見つけた。

 つーか欠伸してんじゃねーよ。教師なのにみっともない。

 そう思っていた時に父さんが俺に気づき、手をあげながら俺に声をかけた。

「よー、竜也。これからどっか行くのか?」

「ちょっと東真先輩に屋上に来るよう言われたんだよ。それからみっともないから欠伸するな」

「んぉ、悪い悪い。今度から気をつけるわ。ぁふ…」

「言ってる側からするな! とりあえず、俺は行くからな!」

「りょーかい」

 俺がそう言うと、父さんがヒラヒラと手を振ってきた。

 それを一瞥し、屋上に向かって歩き始める。


「あいつらのこと、頼んだぜ。竜也……」


 この時父さんがこう言ったのを、俺は気づかなかった――。


 ――――――


「遅くなっちまった…。先輩もう来てるよな、絶対……」

 俺は屋上の扉の前に突っ立ったまま、そう呟いた。

 とりあえず遅くなってしまったことを謝ろうと思いながら、音をたてないようにゆっくり扉を開けた。

 眩しい光に目を細めながら、俺は屋上を見渡した。

 するとそこには悲しい顔をしながらペンダントを握っている東真先輩がいた。

 そんな東真先輩の表情を見て呆然としていると、東真先輩は一言呟いてから腕を振りかぶった。

「ちょっ――」

 俺が慌てて止めようとしたが既に遅く、東真先輩は振りきってペンダントを投げてしまった。

「と、東真先輩!? 何してるんですか!?」

「あ、竜也……」

「どうして投げちゃったんですか!? さっき先輩、呟いてたじゃないですか!」

 本当にこう呟いてたかはわからない。

 でも、その呟きが俺の見間違いじゃなければ…

「『ごめんな』って、呟いてたじゃないですか! それって、謝るほど大切な物だったんじゃないんですか!? 東真先輩にとって、あのペンダントは!」

「っ!? 見て、たのか…?」

 そう、だ。先輩は確かにこう呟いていたんだ。『ごめんな』って。

 俺の知らない、だけど東真先輩にとって大切な人に。

「だったら投げちゃ駄目ですよ! 先輩が探しにいかないなら、俺が探しに行きます!」

「は? おいっ、竜也!? 待てよ!」

 東真先輩が俺を呼んでいたけど、そんなの気にしていられない。


 東真先輩の大切な物を、絶対に見つけるんだ!


 そう思いながら、俺は屋上を飛び出した。


 ――――――


 俺は一人、屋上に突っ立っていた。

 そんな俺の頭に、さっきの竜也の言葉が流れ込む。


『それって、謝るほど大切な物だったんじゃないんですか!? 東真先輩にとって、あのペンダントは!』


 ……そう、だな。竜也の言う通りだ。

 俺にとって、あのペンダントはとても大切な物だ。謝ってからじゃないと捨てられないくらいに。

「はっ……先生の言ったことは、本当だったんだな。あいつなら、竜也なら、俺達の見えない鎖を断ちきってくれるってのは」

 昨日俺達は言われた。「見えない鎖を断ちきりたいなら、竜也にそれを話してみろ」って。

 皆は半信半疑だったが、俺はその言葉を信じて竜也に話すと決めた。

 だから今日、わざわざ屋上に来てもらった。それなのに。

「……くっそ! 何やってんだよ俺は! どんだけ情けねぇんだよ!」

 いざとなったら先生の言うことが本当なのかを疑って。話すためには必要不可欠なペンダントを投げ捨てて。最後は無関係な竜也に気づかされて。

 すごく悔しくなって壁に拳を何度もぶつけたら、そこから血が出てきて地面に垂れた。

 それを一瞥してから校庭の方に目を向けると、辺りを見渡しながらペンダントを探している竜也が目に入った。

 どうやら本当にペンダントを探してるんだな、と思ったらまた自分が情けなく思えた。

「何で竜也を疑ってんだよ、俺は…! あの目は本気の目だったじゃねーか…!」

 探しに行くと言った時の竜也の目、あれは絶対にペンダントを見つけて俺に渡すという決意をした本気の目だった。

 無関係で、むしろ巻き込んでしまった竜也は必死にペンダントを探してるのに、その原因人物である俺は何でここに突っ立ってるんだよ。おかしすぎるだろ。

「たく、先輩なんだからしっかりしなきゃ駄目だってのに……。なに後輩に労力を溜まらせてるんだ。しっかりしろ宮野東真!」

 俺は自分を一喝し、竜也のところに向かって走り出した。


 ――――――


 屋上を飛び出してからしばらく経ったけど、未だにペンダントは見つからない。

 いや、あんなに小さい物なんだ。すぐに見つかる方がおかしいか。

 しかも探してる時に草で切ったのか、少量でも血が流れてるし、こういう怪我は痛くないけど痒くなるから困る。

「とにかく、絶対にペンダントは見つけるんだ…!」

 そう呟いて再び探そうと草に手を突っ込んだ。

 その瞬間、今までとは比べ物にならない痛みが腕を襲った。

「いっ……!」

 思わず顔をしかめて手を引き抜くと、ポタポタと血が垂れた。

 その腕を見てみると、ザックリと切れており、大量に血が流れていた。

 何で切ったのかを確認するために草を掻き分けると、そこには血がついた鎌が落ちていた。

「何で落ちてんだよ、危ないだろ…!」

 被害者が俺で良かったと思いながら鎌を手に取ると、不意に俺を呼ぶ声が聞こえてきた。

 その方向に目を向けると、俺を呼びながら駆け寄ってくる東真先輩の姿が見えた。

 東真先輩はほっとしたような顔になるが、俺の腕を見て顔を強張らせた。

「竜也、その腕どうしたんだ!?」

「実は草の中に鎌が落ちていて、たまたまそこに手を突っ込んでしまって…」

「マジかよ! 怪我も気になるけど、一旦その鎌を見せてくれ!」

「あっ、はいっ」

 先輩にそう言われ、思わず鎌を差し出した。

 それを手に取ってマジマジと見ると、怪我してない方の手を取って走り出した。

「下手したら破傷風になるかもしんねーから、手当てするために生徒会室行くぞ!」

 俺は先輩の言葉に何も言えず、されるがままに引っ張られながら生徒会室まで走った。


 ――――――


 生徒会室に着くと、先輩が扉を思いきり開けた。

 そのせいで生徒会室にいた四人が目を見開いてこっちを見た。

「東真、どうしたの……、っ!? 彩花!」

「っ、うん! 今持ってくる!」

 薫先輩が訝しげに東真先輩を見たが、俺の腕に気づいて彩花先輩を呼んだ。

 彩花先輩も俺の腕に気づき、慌てて救急箱を取りに行った。

 すると薫先輩は俺の腕を痛くしないように優しく包み込み、傷の確認をした。

「……良かった、傷自体は浅いみたい。でも、大量に出血してるから包帯は巻いた方が良いわね」

「東真、その手に持っている鎌で切ったんですか?」

「そうらしい。草の中に落ちてたみたいだ」

 風真先輩が真剣な表情で東真先輩に聞くと、頷いて話しながら風真先輩に鎌を渡した。

 風真先輩はそれを手に取って観察すると、パソコンを立ち上げて残像が残るのではないかと思うくらいのスピードでキーを叩き始めた。

 その間に彩花先輩が救急箱を持ってきていつの間にか傍に来ていた高橋に渡し、丁寧かつ素早く手当てを始めた。

 すると風真先輩が手を止めて、薫先輩に言った。

「薫、どうやらこれは去年にやったクリーン活動の時に使い、そのまま放置されていたみたいです」

「去年のクリーン活動は…確か草刈りだったわね。そっか、その時に……」

 あの時確認していればと言って、薫先輩は眉を寄せた。

 それを聞いていた風真先輩と彩花先輩も顔をしかめ、東真先輩は手に拳を作った。

 その光景を見て、俺は慌てて言葉を発する。

「そんな、先輩達のせいじゃないですよ! 俺が勝手に手を突っ込んで、勝手に怪我をしただけなんですから…!」

「竜也君が勝手に…? どうして自ら手を突っ込んだの?」

「それは……」

 東真先輩のペンダントを見つけるために、と言おうとしたが慌てて口を閉じた。

 話をするためだけにわざわざ屋上に呼び出したんだから、そんな簡単に話しちゃ駄目なことだ。きちんと東真先輩に許可をとらないと。

 そう思った俺は、東真先輩を見て首を傾げる。

 俺の視線に気づいた先輩は、俺に頷いてから皆の方を向いた。

「悪い、今はまだ話せない。だけどちゃんとケリをつけたらきちんと話すから」

「ケリ…? あ、もしかして……」

 薫先輩は東真先輩の言葉に首を傾げるが、何かを理解したのか「わかった」と言って聞くのを止めた。

 そんな薫先輩の反応を見て三人も何かを感じとったのか、誰も言葉を発しなかった。

 しかし高橋が俺の方を見てから俺の腕を見た。

 その視線に合わせて腕に目を向けると、傷のところが綺麗に処置されていた。

「あ、悪いな。助かった」

「気にしないで。だけど最低一日に二回は取り替えて」

「わかった」

 俺がそう言って立ち上がると、東真先輩が近づいて口を開こうとしたが、何かを悩むように口を閉ざした。

 そんな東真先輩の様子に気づいた俺は、時計を見て時間を確認した後東真先輩に向かって言った。

「先輩、話なら聞きますよ? 時間はまだありますし」

「え……良い、のか? 怪我してるのにか?」

「大丈夫ですよ。心配しないでください」

「じゃあ、良いか? 話を聞いてもらっても……」

「はい。それじゃあ屋上に行きましょう」

 そう言って俺は先輩を導くようにして、生徒会室の扉を開いた。



まさかこの判断によって、あんなことになるとも知らずに――――。



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