第4話 過去と落下
短いですごめんなさい!
屋上に着くと、東真先輩は俺の方に振り向いて悲しげに笑った。
「話に必要不可欠なペンダントは投げちまったけど……でも、それでも聞いてくれるか?」
「当たり前ですよ。一体何のためにわざわざ屋上へ来たと思ってるんですか?」
「ははっ、それもそうか」
そう言って今度は自嘲気味に笑うと、どこか遠い目をしながら話し始めた。
「俺、さ……中学一年の時に好きな子がいたんだよ。見た目は勿論、性格も良くてさ……でも、付き合うのは無理だと思ってた。だけどある日さ、その子に相談されたんだよ」
「相談、ですか……?」
「ああ。『ストーカーされて怖いから、彼氏のふりしてしばらく一緒に帰って』って。好きな子だったっていうのもあるけど、何よりストーカーが許せなくてさ……すぐに了承したよ」
そこまで言って、東真先輩は一度言葉を区切った。
俺が東真先輩の次の言葉を待っていると、先輩は辛そうな顔をしながら口を開いた。
「その一週間後くらいだ。俺はその子に呼び出されてさ、屋上に行ったんだよ。そしたらその子、フェンスを越えて向こう側に立っててさ……。そのことに呆然としてたら、その子は『ごめんね、ありがとう……愛してるよ』って言って――――そのまま、自殺したよ」
「っ!!」
その言葉を聞いて、俺は目を見開いた。
だって、そうじゃないか。好きな子が一年の時に死んじゃって、それまでその子のことを思って二年間、今までずっと生きてきて……。
俺は、震える口をゆっくり開きながら問いかけた。
「も、しかして……あの、ペンダント、は……」
「ああ、その子のだよ」
「そんな……っ!」
俺は今すぐ、駆け出したい気持ちになった。
耐え切れなかったんだ。そんなにも大切なペンダントが、東真先輩の近くになかったことが。
俺はその衝動を抑えながら、東真先輩に話しかけた。
「先輩、だったら早く探しに行かなきゃじゃないですか! どうして探しに行かずに、俺に話すことを優先したんですか! 確かに約束してたから話さなきゃと思ったのかもしれません、でも「竜也」……っ!? が、は……っ」
「………悪いな」
そんな先輩の声が聞こえた後、俺は意識を失った。
――――――
「………ふーん、そーゆーこと」
「どうだったのかしら?」
「ビンゴだよ。お前らの予想通りだ」
「じゃあ、わかったところで次の行動に移そっか!」
「そうですね。この時間すら惜しいですから」
「それじゃあ、行きましょうか」
「「「あなたの闇は、必ず晴らします」」」
――――――
俺は気絶している竜也の頭を膝に乗せ、フェンスに寄りかかった。
俺は竜也の様子を見ながら、あの時のことを思い出した。
「……そういや、丁度この辺のフェンスらへんにいたんだっけ……」
彼女が自殺した時、この辺であの言葉を聞いた。その時のことは鮮明に覚えている。
俺はため息をついて、空を見上げた。そして呟く。
「にしても、入ったばかりの後輩の腹を殴っちゃうとはな……俺ってやっぱ最低なせんぱ――」
そこまで呟いて、俺はふと疑問に思った。
自殺してしまった彼女の名前は翠川竜奈、そして今気絶している後輩の名前は――……
「……っ、まさかっ!」
俺はある一つの考えに至り、竜也を放置して屋上を飛び出した。
――――――
気がつくと、俺は屋上に一人だった。
「ん? え、あれ……先輩? いない……えっ、もしかして俺一人!?」
まずいと思った俺は、慌てて屋上を飛び出そうとした。
しかし東真先輩の話が頭に浮かび、足を踏み止めた。
(先輩、確か中学一年の時って言ってた……それじゃあもしかして、その人もこの学校の生徒だった……? それに屋上に呼び出されて自殺ってことは、もしかして飛び降り自殺……?)
そう思った俺は、フェンスに駆け寄って足を地面から離して身を乗り出した。
下を見ると、地面はコンクリートになっており、周りには少しの草ですら生えていなかった。
「うわっ……これは、落ちたら即死じゃん……」
まだ死にたくなかった俺は足をつけようとした。
しかし次の瞬間誰かに足を持ち上げられ、逆にフェンスを乗り越えてしまった。
反射的に手を伸ばしてフェンスを掴もうとしたが、それは空中を掴んで終わった。
「うっ、うわぁぁああああああっ!!??」
太陽の光に反射して姿は見えなかったが、俺を落とした犯人は口元を歪ませて言った。
さ よ う な ら
走馬灯が、はしった。




