説明書
『主人公』
一年で会社を辞め、生きる意味を見失っていた女性。
現実の世界に絶望していた彼女に残されていた、唯一の趣味。
それが、乙女ゲーム――『恋する姫と終わらない奇跡』だった。
彼女はそのゲームを毎日のようにプレイし、何度もクリアしていた。
登場人物の性格。
攻略対象の好感度。
イベントの発生条件。
学園の構造。
隠しイベント。
ゲームのことなら、誰よりも詳しい。
そんなある日。
ゲーム画面に、奇妙なノイズが走る。
そして――。
彼女はゲームの世界へと転生する。
転生先は、自分が何度も見てきたキャラクター。
悪役令嬢――エラーラ・ウィクスだった。
『エラーラ・ウィクス』
主人公が転生した悪役令嬢。
銀髪のツインドリルに、紫色の瞳を持つ少女。
ゲーム本編では、序盤に婚約者から婚約破棄を告げられ、物語から退場するキャラクターだった。
しかし――。
主人公がエラーラへ転生したことで、本来存在しなかった「エラーラの人生」が始まる。
ゲームには存在しなかった屋敷。
ゲームには存在しなかった人間関係。
そして、ゲームには存在しなかった選択。
すべてが少しずつシナリオを変えていく。
彼女が選んだ生き方は――「悪」。
誰かに理解される必要もない。
誰かに好かれる必要もない。
最後まで悪を貫く。
そして彼女には、一つだけ絶対に変わらない目的がある。
カリバー学園
――ロイン・デルフォルを殺す。
ゲームの知識を武器に、何度失敗してもその目的を果たそうとする。
『ロイン・デルフォル』
『恋する姫と終わらない奇跡』の主人公。
金色の髪と赤い瞳を持つ少女。
誰に対しても優しく接する、穏やかな性格の持ち主。
相手が敵であっても、悪意を向けられても、簡単には人を嫌いにならない。
その優しさは、時にエラーラにとって理解不能なほどだった。
エラーラが殺そうとしても――なかなか思い通りにならない。
一筋縄ではいかない存在。
そして現在。
ゲームでは本来一つ星から始まるはずだったロインが、二つ星として学園生活を始めている。
小さな違和感。
その違和感はやがて――ゲームそのものを揺るがしていく。
『フレン・ドレド』
ロインの親友。
茶色の短い髪をした、明るく親しみやすい少女。
ゲームではプレイヤーをサポートする役割を持っていた。
『アンラ・ダグネス』
エラーラの寮での同室。
黒く長い髪をしており、その髪によって顔の大部分が隠れている少女。
非常に眠そうで、マイペース。
基本的にいつでも眠そうにしている。
エラーラが部屋へ入った際も、二段ベッドの上で眠っていた。
ゲーム『恋する姫と終わらない奇跡』では、プレイヤーにとってなるべく避けたい存在だった。
アンラに関係するイベントでは――。
能力値が下がる。
勉学の成績が下がる。
周囲の好感度が下がる。
その他にも、プレイヤーにとって不利益となるイベントが発生する。
そのため、ゲームをプレイしていた主人公はアンラ関連のイベントを可能な限り避けていた。
しかし――。
転生したエラーラは、まさかのアンラと同室になる。
ゲームでは避けていた存在。
それが今では――毎日顔を合わせる同居人。
エラーラにとって、新たな不安要素となる。
攻略対象の好感度。
イベントのヒント。攻略に関するアドバイス。
ゲームをプレイしていた主人公にとっては、何度も話しかけた馴染み深いキャラクター。
いわば――ゲームの「案内役」。
しかし、この世界では彼女もまた、一人の人間として存在している。
ロインとは親しい友人。
そして現在、エラーラとも知り合うことになる。
『ケイン』
カリバー学園の学園長。
そして――強大な魔力を持つ「賢者」。
赤い髪と整った顔立ちを持つ女性。
年齢を感じさせない、異様なほど若々しい姿をしている。
その美貌には、ある秘密がある。学園の地下に存在する、
かつて新たな魔法を生み出すために作られた研究室。
現在、その場所を知る者はほとんどいない。
ケインは夜になると誰もいない図書室へ向かい、火・水・雷の三つの本を特定の場所へ置くことで、地下研究室へと入る。
そして現在、その研究室は――。
彼女自身の美貌を保つためにも使用されている。
ゲームでは中盤でその秘密が明らかになる重要人物。
しかし、エラーラはゲームの知識によってその秘密を知っていた。
それがきっかけとなり、ケインはエラーラに興味を持つ。
さらに――。
エラーラの祖父、トニックとは昔馴染み。その縁もあり、エラーラのカリバー学園への入学を認める。
『カリバー学園』
魔法、剣術、知識。
あらゆる才能を持つ者たちが集まる名門学園。
かつて魔王を討った勇者「カリバー」の名を冠している。
特殊な能力。
優れた剣術。
卓越した知識や頭脳。
強大な魔力。
何か一つでも突出した才能を持つ者なら、正規の入学時期以外でも入学することが可能。
そして学園には――「星」によるランク制度が存在する。
一つ星
三階の教室。
半日は勉学に励む必要があり、自由は少ない。
教室は一般的な作りで、掃除も自分たちで行う。
二つ星
二階の教室。
一つ星よりも自由が認められている。
教室も綺麗で、掃除の時間もない。
ゲームではロインがここへ昇格することが、一つの重要な目標になっていた。
三つ星
一階にある特別な教室。
授業への参加もある程度自由。
自分に必要な授業を選択して学ぶことができる。
ただし、あまりにも授業を怠れば二つ星へ戻される。
ゲーム攻略上、必ずしも三つ星になる必要はない。
そして現在――。
エラーラは一つ星。
ロインは、本来なら一つ星で始まるはずだったにもかかわらず、二つ星から始まっている。
攻略対象
『ジョミナー・オーサー』
ロインの幼馴染。
『恋する姫と終わらない奇跡』に登場する攻略対象の一人。
身体能力に優れており、剣術にも秀でている。
ロインとは幼い頃からの付き合いで、彼女のことをよく理解している。
ゲームでは比較的攻略しやすい攻略対象。
ロインとの距離が近いため、物語序盤から関わる機会も多い。
普段はロインに対して落ち着いた態度を見せるが、ある出来事をきっかけに、彼の内面に変化が起こる。
エラーラにとっては――。
ロインのすぐ近くにいる、警戒すべき攻略対象の一人。
『セレブス・ノーブル』
王族に連なる、カリバー学園の攻略対象。
『恋する姫と終わらない奇跡』でも特に人気の高いキャラクター。
豊かな家柄と高い身分を持ち、周囲からも注目される存在。
しかし、ゲーム内では攻略難易度が高い。
簡単には心を開かず、好感度を上げるためには複数のイベントをこなす必要がある。
そして――。
ゲーム序盤に存在する、エラーラの「婚約破棄」に関わる重要人物。
ウィクス家
『アルゴー』
ウィクス家に仕える人物。
エラーラがカリバー学園へ向かった後、屋敷の管理を任されている。
以前はエラーラの行動に対して不満を持つこともあった。
しかし――。
エラーラがウィクス家の借金問題を解決したことで、現在は以前ほど強くエラーラへ口出しすることができなくなっている。
エラーラから見れば、屋敷を任せることのできる人物。
ただし、完全に信用しているわけではない。
『ナイナ』
エラーラに仕えるメイド。エラーラが屋敷にいた頃から身の回りの世話をしていた。
エラーラからの信頼も厚い。
現在はエラーラがカリバー学園へ入学したため、屋敷に残っている。
エラーラとは手紙で連絡を取り合う。
また、エラーラが取引している「月雫」にも関わる重要人物。
エラーラにとっては、学園の外にいる数少ない信頼できる存在。
『トニック』
エラーラ・ウィクスの祖父。
かつてウィクス家に関わっていた人物。
カリバー学園長・ケインとは昔馴染み。
エラーラがケインと対面した際、「ウィクス」という名前からトニックの孫であることが判明した。
その縁が、エラーラの入学許可にも繋がる。
エラーラ自身が知らない過去や、ケインとの関係など――。
今後、物語の中で重要な情報が明らかになる可能性を持つ人物。
『ヤーショル』
エラーラと取引をしている人物。
エラーラにとって、信用できる味方というより――「利用できる手札」。
彼との取引によって、エラーラはカリバー学園へ向かうための道を得た。
その代わりに、エラーラは毎月「月雫」を渡す。
ヤーショルが何を考えているのか。
なぜエラーラに協力するのか。どこまで信用できる人物なのか。
そのすべては、まだ明らかになっていない。
エラーラ自身も、彼を完全には信用していない。
それでも――。
目的のためなら、使えるものは使う。
それがエラーラの考え方だった。
『月雫』
ウィクス家が扱う酒。
ケインが気に入っている酒でもあり、エラーラの入学許可を得る際にも条件として要求された。
エラーラにとっては、単なる酒ではない。
屋敷を維持するため。人と取引するため。
そして、自分の目的を果たすため。
様々な場面で利用できる重要な「切り札」の一つ。
エラーラがゲームの知識だけではなく、現実の人間関係や取引を利用していくことを象徴する存在でもある。




