彼女は絶第12話なれない
彼女は絶対、自由にはなれない。
拝啓 ママへ
私これから死ぬっぽいです。
敬具 有沙より
辞世の句を詠みました。(違)
マストさんに半強制的にドラゴンの前に連れてこられる可哀想な私。
「あのー。これ倒すのムリだと思うんですけど……」
「ああ。しかし倒さねば世界が滅びる」
「だから勝てないって……」
「私は信じている。人間に、君の中に宿っている力。夢を抱き、希望を紡ぎ、愛を奏で、平和をもたらす。人間の心を!」
この人日本語通じてないっ!!
だいたい愛で世界が救えるわけないじゃん!!
そういうの45回は見てきたよ!?
「さあ、呪厳竜は目の前だ!」
あなたが目の前にしたんでしょーが!
近くで見るとほんとおっきい。
こんなんどうやって……。
マストさんがすっごい期待の目で見てくる。
ずるいよその目……断れないよ……。
「と、とりゃあー!」
もうやるっきゃない!
ドラゴンの足元に思いっきりパンチを入れた。
ポス。
「やったか!?」
やった時の音じゃないでしょうよ。
それはもっとこう、煙とかがいっぱいモクモクしてるときのセリフでしょうよ。
グワーーっと目の前が暗くなる。
「えっ」
~~~~~~~~~~
「アサ! 大丈夫か!? しっかりするんだ!」
まぶたを上げると悲痛な表情のマストさん。
全身に変な違和感が……なんだろうこれ。
「気がついたかアサ。呪厳竜に踏みつぶされたときは心配したぞ」
えっ……そんなことが。でも別に痛くはなかったけど。
「私どうしたんですか?」
「君は死んでいた」
は!?
「はぁ!?」
はぁあああああああ!?
死んでた!?
「死んでた!?」
「ああ。私の力でどうにか蘇らせたが」
まってなに今どういうなにがもうわかんない!
なんだっけ生き返れるのってたしかええっと、そうだ3回までだった!
「あと3回死んだら死ぬってことですか!?」
マストさんは苦い顔をした。
「その話なんだが……すまない。思いのほか私の力が弱まっている。君を復活させられるのはあと1回までだ」
「えっ!? あと1回!?」
なんで予定より減っちゃうの!?
打ち切りでも決まったの!?
わからないことなら普通最初は少な目に申告するよね!?
文句言ってやる~!
「マストさん!」
「本当に申し訳ない……」
しょげてるマストさんもなんか可愛い。
……ああ、ダメ。イケメンオーラに乱されるー。
「それよりアサ、呪厳竜が!」
この人本当は反省してないな?(そんなことはない)
私が呪厳竜の方を見ると……。
『グォオオオオオオオ……』
うーわー。怒ってらっしゃる。
喉のうねり方が違う。
「アサを蘇らせるために放った光を呪厳竜が感じ取ってしまったようだ。気をつけて戦うんだ!」
はいはい私のせい私のせい。
ドラゴンが大きく口を開いた。
『カッ――――――――』
!????
いきなり周りのものが次々吹き飛ばされていく。
「ぐ……咆哮だけでこの力か……。アサ! 額の宝石から結界を!」
結界!?
どうやるんですか!?
よーし……。
「け、結界できろーっ!」
おでこの宝石が光輝いて、私の身体を覆う丸い緑のバリアーができた。
「すごいっ、ほんとに出たっ!」
どうなってるんだろう?
授業中には教科書も出せたし、結構なんでも出せたりする?
「私の分は出してくれないのかーーーーー」
キラーン☆ミ
「ま、マストさーん!?」
ありゃりゃ。飛ばされてっちゃった。
案外デスナさんと似た者同士?
シーーーーン、と辺りがしずまる。
ドラゴンの声がやんだみたい。
周りを見渡すと、なんか違和感が。
なにかなくなってるような……。
って、えーーーっ!?
校舎が、ない。周りの林も。
あるのは学校っぽさのある瓦礫とおがくずだけ。
まさか今のドラゴンの声の衝撃だけで全部コナゴナになったってことはないよね?(そのまさかです)
ちょっとまってこんなんどうしようもないよ。
マストさんもいなくなっちゃうし。
私一人じゃ絶対ムリだよ。
……もういいや。帰ろ帰ろ。
帰っておいしいもの食べて終末に備えましょう。
まわれー右。
ズドーン!!
ドラゴンが思いっきり足踏みをした。
私は身体のバランスを崩してすってんころりよ。おころりよ。
思いっきり地面に顔面を打ちつけた。
「いったーい!」
えーん! もうやだ!!
「誰か私を助けてーー!!」
私は大声で叫んだ。
『ザザ……ピー……ガガガ……の声は……アサ……アサなのか?』
あれっ、マストさんの声が聞こえる。
なにこれ走馬灯の耳バージョン?
その割には雑音がすごいけど。
※読みやすさを考慮してここからは雑音を排除してお送りいたします。
『アサ、伝達術を使えるようになったのか。やはり君の才能は確かだったようだ』
伝達術?
私スマホ買わなくてよくなった感じ?
「マストさん? 今どこにいるんですか?」
『すまない。場所までは解らない。呪厳竜の咆哮で鼓膜をやられてしまって位置感覚がつかめないんだ』
鼓膜と位置感覚になんの関係があるんですか。
「周りになにか見えませんか?」
『……そうだな、リンゴがたくさんある』
「そこきっと青森ですよ!」
『アオモリ……? すまないが私は人間界の地名に疎い。アオモリとはどこだ?』
「リンゴがいっぱいあるとこです!」
『……どうやらここはアオモリのようだな』
やっぱり!
どんだけ飛ばされちゃってるの神様なのに!
『私も急いでそちらへ向かう。今の状況はどうなっている?』
「校舎がなくなりました」
『そうか……つらいだろうが勝てば問題ない。すべてはうたかたの悪夢ということになり被害は全て元に戻る』
あーもうずれてる!
ほんとこの人ずれてる!!
「勝つのはムリだって言ってるじゃないですか! っていうか私1回死んでるんですよ!? もうやめましょうよこんなこと!」
『……君が君が諦めることは世界が滅びることを意味する』
「だったら滅びたっていいです! 私があきらめたくらいで滅びる世界なんて滅びてるのと同じです!」
気づかないうちに私は声を大きくしていた。
『君は今錯乱しているようだ。本来の君を思い出せ。困っている誰かを見放せない優しい性格の君を!』
「世界は滅びたら困ってる人もいなくなるもん!! だいたい今世界で1番困ってるのは私なんですけど!!」
『アサ……?』
「行き倒れてる人とか、カツアゲに遭ってる人がいたらいくらでも助けたいです! マストさんの言う通り私は他人を見捨てられない人間かもしれません! でも今はそんなの関係ないです! 人間みんなが同じように苦しんだらそれは苦しみでもなんでもないじゃないですか! 誰かが死んだら残された人は悲しみますけど全員死んだら悲しむ人だっていませんよね? だから私が勝っても負けても結果はなにひとつ変わらないんです! 勝ったときの見返りだってないし、そもそも勝てないからどっちにしろもらえませんけどね!」
『……人間だけの話ではない。闇の世界では今ある動物や木々でさえも』
「なんですか動物って! なんですか木々って! 私は動物嫌いです! 動物って人間と見た目全然違うし変な臭いするしただただ気持ち悪いじゃないですか! 植物だってそうです! 森の中で浴びるお日様が好きとか花がきれいとかまったく理解できません! 意味わかんないです!」
私はついつい大声でまくしたててしまった。
なんかいろいろ溜まってたのと、あとマストさんの顔が見えないからイケメンオーラみたいなのを感じずに済んだのもあるというか。
『……それが君の真実の声か。聞かせてくれてありがとう。私からはこれ以上何も言わない。だが私が頼れるのは君だけであることも知ってほしい。 ガチャ、ツー、ツー、ツー』
マストさんからの通話が途切れた。
やっちゃったかな私……。
で、でも仕方ないよね。だってムリなものはムリ!
通話中にドラゴンは襲ってこないのかって?
私のことなんて眼中にもないみたい。
さっきからずっとあっちの方で紫色の煙を口から吐いてる。汚そう。
なにしてるのかな?
私は興味が出てグラウンドに出てみた。
煙が……あっ、へー。
なるほどすごいこれ。
煙があたった芝生がどんどん茶色く変色してく。
これ林の方でもやってたんだ。
案外地道だなあ。(笑)
私は茶色くなった芝を手に取る。
カサッとしてるし枯れてるのかな?
植物嫌いって言ったけどこれは結構推せる。手触りが好み。
寝そべってみよ。
目をつむって感触を味わってみる。
うーん。のびのび。
こういうことできるのもこれで最後かあ。
悪くない人生だったなあ……。
ん?
急に暗くなった?
うわっ。びっくりした。
目を開けたら私の真上にドラゴンが。
やっぱりおっきい。
もう逃げるとかも意味ないか。
私はもう一度目をつむる。
フシューー。
全身になにかを浴びせられた。
私は思わずせき込む。
「ケホッ、ケホッ」
なにこれ? さっきの紫の煙じゃん。
あれ……気分が……。
んんっ、おでこが、なんか、カーッと、熱いっ。
変なっ、感じにっ。




