長峰涼子④
――今度のレクのペア決めしてる?
ホームルームの最中、恵美からメールが届いた。
――うん、してるよ。男子が騒いで中断しているけど。
南君が佐井君に絡んでいる。
――涼子が佐井君とペアになって!
――なんでよ!
恵美がよくわからないお願いをしてくる。
どうして私が佐井君とペアにならなくてはいけないのか。
「とにかく俺に彼女はいない」
ケータイに集中していたせいで、男子が何の話をしていたかはよくわからないけれど、佐井君の言葉は耳にしっかり入った。
――佐井君彼女いないって!
恵美から返信がまだだったけれど、これは伝えないといけない、と思ってすぐに知らせた。
――え!? どういうこと!?
――佐井君が男子たちの話の流れで言ってた。
――じゃあそれは後で詳しく教えて。とにかく佐井君とペアになって。小川さんが狙ってるでしょ?
そういうことか。小川さんのアプローチを阻止するためか。
だとしても恥ずかしい。私が佐井君に気があるのかって思われちゃうんじゃないか。
「ちょ、ちょっと、男子だけで盛り上がってないで話進めてよ」
小川さんが動き出したようだ。
――頼む。
――お願い。
――求める。
――乞う。
恵美が同じ意味の言葉を連投してくる。
「それじゃあペアの続きをします」
大沼さんがペア決めを再開する。
「ペアの希望はありますか?」
しょうがない。やってやるか。
――今度美味しいものおごってよ。
そうメールを入れて、手を挙げた。