長峰涼子③
翌週の月曜日の放課後。図書室。
まだ恵美は来ていない。私一人で放課後の図書室解放の準備を始める。
佐井君の借りていた本が返ってきているはず。
あれから佐井君の借りた本について調べたら、かなり話題の本らしく、読みたくて仕方がなくなった。
準備をしつつ、書棚を確認しに行く。
「あれ? 返ってきてない?」
あるべきところに本がない。佐井君が延滞しているのだろうか?
受付に戻り返却カードを確認する。
やはりここにカードがある。
しかし佐井君は水曜日に返していた。
「大沼さんってこういうのも読むんだ」
金曜日に大沼さんが借りていた。
佐井君はずいぶんと早く読んだようだけど、大沼さんはどうだろう。いつもマンガを読んでいるイメージだったけれど。
借りられるのは来週以降になりそうかな。予約は特に入っていないからけれど、入れておこう。
「あれ? 今日は一人?」
佐井君が図書室にやってきた。
「うん。まだ恵美は来てないから」
「そうなんだ。あの死神のうわさについて調べたから教えようと思ったんだけど」
「調べたの?」
「うん。図書館で過去の新聞を検索したり、ネットで雑誌のルポなんかを探した」
「す、すごいね」
何してんの、佐井君。ちょっと、普通そういうことするかな?
「気になっちゃったからね」
「そ、そっか。で、どうだったの?」
「それがなかなかショッキングだったんだ」
佐井君が死神について、萩山さんについて教えてくれた。
もともと学校の近くで事故があったことは知っていたらしい。
そして最後に佐井君がこう言った。
「俺、幽霊とか心霊とか信じてないけど、そこで人が死んだのであればふざけちゃいけないと思う。遊び半分で、肝試しみたいな気持ちで、そういうスポットに行くのって良くないと思う」
なんかいいなって思った。そういう考え、いいと思う。
一通り話すと、佐井君は狂骨の夢を借りて帰っていった。
あんなブロックみたいな本、よく読めるなって思った。
「お疲れ、涼子。ごめんね遅くなって」
「あ、恵美。ううん。全然大丈夫」
恵美は受付に入り、鞄から本を出し、いつものように席に着く。
「さっき佐井君来たんだよ」
「え!? なんで!?」
恵美が飛び上がる。
「なんでって、図書室の利用に」
「それはわかるけどさ、なんか言ってなかった?」
「うん、死神のこと調べたみたいで教えてくれた。恵美に教えておいてって言われた」
「なんでよ! なんで涼子経由なのよ! 佐井君から直接聞きたかったのに! 引き留めてよ!」
「わかったわかった。次そういう事があったら引き留めるよ」
ふてくされている恵美に佐井君から聞いた話を伝える。
途中何度か受付業務で中断したけれど、多分ちゃんと過不足なく伝えられたと思う。
「それ佐井君が調べたの?」
「うん、そうみたい」
「さすが佐井君。すごいな。涼子経由でよかったかも。うん。佐井君から直接聞いていたらボーっとして話頭に入らなかったかも。私も反省しよう。七不思議とか言って楽しんでたし」
「そうですかそうですか」
でも確かに佐井君はすごい。ちょっと尊敬しちゃうかもしれない。
私にはできない。いや、しようと思わない。そもそも自分で調べようという発想に至らない。
なんかやる気のない感じというか、冴えない感じなのに、こんな一面があったなんて。
恵美には悪いけど、気になる存在になっちゃったな。
まあ恋愛的感情じゃないから、悪くもないか。
隣で恵美は楽しそうにBLを読んでいた。




