第18話:剣聖、初日の成果に満足する
日が暮れる前に門まで戻ってきちんと出入りを終える。
「さて、急がないとな。今日は買い取ってもらうものが昨日より多いし、夜の鐘に間に合わないかもしれないな。血抜きはしてあるからある程度はいいとして、数があるからな。できるだけ急いで買取に出さないといけない、テンポよく行こう」
「はい! 」
一日体を動かしてやる気があふれているのか、セルフィが鞘に入ったままの剣をぶんぶん振り回しながら町中を進む。
「まず、冒険者ギルドに向かう。そこで今日の稼ぎを換金してもらって、それからそのお金で夕食をとって、宿を取ろう……もう宿は取ってあるんだけどな」
「はい」
「夕食は……それなりに硬いが、食べられないよりはいいし、味もそれほど悪くない。何より安くて腹にたまる」
「はい」
「セルフィのおかげで綺麗な形でモンスターを討伐できたからな。きっとそれなりにいい値段で買い取ってもらえるだろう。えらいぞ」
頭をなでてやる。
「えへへ」
「もうすっかり仲良しさんですねえ。よかったです」
イアンちゃんがまだついてきてくれているので、セルフィとその間に仲良しタイムを取れた。お互い過去のことは気を使いつつ、何をしていくのか、ということについて話し合った。
とりあえずしばらくはモンスター退治をしてお金稼ぎをして、何か思いつくようなことがあれば話すようにしている。
「じゃあ、私の父もご主人様と同じでお休み? でこの世界に来てたんですか。そのあいだにお母さんと付き合ってたと」
「たぶんそうだね。特別プランって奴で異世界へ来たんだ。俺はお前のお父さんみたいなへまをするつもりはないからな。立つ鳥跡を濁さずって奴で、セルフィのこともきれいに片づけていくつもりだ」
「それまでにしっかり鍛えてもらわなくちゃいけませんね。もっと危険なこともしましょう」
「そうだな……俺の手に余らない範囲でなら徐々に手を広げていこう。とりあえず東門周辺なら問題なさそうか? 」
「そうですね……ダンジョンに潜るという手もありますよ? 」
イアンちゃんがダンジョン、というキーワードを教えてくれる。ダンジョンもあるのか。
「ダンジョンかあ……また新しい楽しみが増えたな。下手に広い所で戦うよりも狭い分モンスターにも囲まれてるしそのほうがいいかもしれないな」
「ダンジョンはそれなりに危険ですよ。でもその分の儲けはあります。ダンジョンでは魔石が出ますからね。ダンジョンで一発儲ける、ということは難しいかもしれませんが、着実に稼ぐという点ではおすすめでもあります。それにさっきタカナシさんが言った通り、広くない分だけ楽に戦えることはあるかもしれません」
「ダンジョンは俺とセルフィでも大丈夫なところなんだろうか? 二人しかいないが、パーティー組んで……というともう二人ぐらい三人ぐらいで挑むようなところだというイメージがあるんだが」
たしかに、二人でパーティーと言えなくもないが、20前半の男が一人と剣聖とはいえ少女が一人。それではあまりにちぐはぐが過ぎる。二人で生活費を稼ぐためとはいえ、いきなりダンジョンとかは行けるものなんだろうか。
「まあ、冒険者ギルドでお金の計算を終えて、夕食を食べながらゆっくり話しましょう。とりあえずお金の精算が先です」
ちょうど冒険者ギルドについたので、ギルドの受付に引き取ってほしい獲物がそれなりにあることを伝えると、解体所に案内された。血抜きしたミニボアを並べていく。それぞれ解体所のガタイのいいおやっさんがそれぞれの肉の状態や血抜きがうまくできているかどうか、毛皮にする状態はどうなっているのか、などを詳しく調べていく。
「ああ、これならいい値段で買い取れそうだ。綺麗に血も抜いてあるし、肉にもほとんど損傷がない。毛皮もズタズタじゃないし、内蔵だってまだ……そうだな、まだ内臓も綺麗だ。これは再利用できる」
「内臓を再利用するのか? 余りイメージがわかないが」
「ああ、肥料になるからな。つぶして発酵させて、その後で畑に撒くといい野菜ができる。その野菜を食べるのもまた俺たち……ってことでな」
なるほど、確かに再利用だ。
「……というわけで、ミニボア15匹とホーンラビット2匹、間違いなく受け取った。費用は……満額でいいだろう。これをもって受付に再度並んでくれ」
書類を見ると、おやっさんの文字でミニボア15 100 ホーンラビット2 100 と書かれている。100ってなんだろう。満額出してくれるってことかな。だとしたらうれしいところだ。
書類をもってカウンターに再度並び、書類を提出すると、受付嬢は笑顔で俺に買取金額を告げてきた。
「Fランクなのにすごい成果ですね。ミニボア15匹討伐とホーンラビット2匹討伐、どっちも解体判定100点です。ミニボアが銅貨10枚、ホーンラビットが銅貨5枚なので……銀貨1枚と大銅貨6枚の買取になります。本日もお疲れさまでした」
支払いを受け取る。ふむ、短い時間にしては良く戦った、というところだろう。いやむしろ、一日フルに使っていればもっと稼げたってことだな。だが、みみっちぃ稼ぎではある。まだ異世界生活二日目とはいえ、もっとドカンと稼ぐあてがあってもいいな。
「さあ、今日の夜と夕食分だけは稼げたぞ。その日暮らしみたいな稼ぎだが、明日はもっと稼げるはずだ。明日は今日以上にしっかり稼いでいくか」
「おー! 」
「夕食はいつものところで取るんですか? 」
イアンちゃんから夕食の提案。何かあるんだろうか。
「そのつもりだけど、イアンちゃんから夕食のおすすめがあるならそこに行こうと思うけど……お金は、ある」
「でしたら、ちょっと贅沢しましょう。明日は今日より稼げるのはわかってることですし、その分柔らかいパンと肉ととろみのあるスープが味わえますよ」
とろみのあるスープ……小麦をふんだんに炒めてバターと混ぜ合わせたホワイトルーを使ったシチューとか出てきてくれるんだろうか。
野菜もちゃんと取れてセルフィの成長に合わせた食事ができる場所を一カ所ぐらいは知っておいたほうがいいという意味では、知っておいたほうがいいな。
「そこは、このままの服装で行ってもいいような店かな。ドレスコードとか大丈夫なところ? 」
「はいです。なので気にせず食事に出かけられるいい店ですよ。私もたまにはちゃんとした食事がしたいですし、ぜひとも行きましょう。お勧めのお店その2です」
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