21 魔法
「ねえー、葵ー? どうして敵がいるってわかったのー?」
刺客達を引きながら郷への道を急いでいると亮が聞いてきた。
「え」
(やばい。魔法のこと言ってないのに、目の前で使ってしまった。素の身体能力って言えば信じてくれるかな? ・・・亮はちょっと抜けてるからいけるかも)
「気配で分かったんですよ」
「うそだね。人間が四キロも先のことを感じれるわけがない」
意外と抜け目のない亮。
(くっ、騙せないか。もういっそのこと正直に話すか・・・)
私は覚悟を決める。
「実は・・・魔法で刺客達の存在を感じ取りました」
「「「魔法?」」」
「あ」
(しまったこの時代には魔法という言葉自体がないんだった・・・)
「えーと、術みたいなもの・・・ですかね」
「へー、術か。それなら納得がいくねー。ついでにその身体能力も魔法とやらでしょー」
「まあ、はい」
意外と驚かない三人に逆に驚いてしまった。
そしてさらに驚くことを言ってきた。
「僕にもー魔法つかえるかなー?」
「葵、教えろ」
「俺も」
「えっ、でもそれは―」
魔力がないと。
(あれ、そういえばこの三人・・・魔力持ってるな。しかも結構多い・・・)
「できますね」
「やったー。じゃあ、明日から修行だ~」
「「おおー」」
「え、あの、ちょっと、ちょっと待ってください!」
いつも通りの三人に私は困惑してしまった。
「なんだ葵?」
「何でそんな普通でいられるんですか。普通はもっと怖がったりするでしょ」
「ないな」
「え?」
「怖がることなどない」
「どうして・・・」
どうしてか私には理由がわからなかった。
「だって、面白いじゃないか。この魔法という力はこの世界にはなかったものだ。少なくとも俺は知らなかった。そんな未知の力を使うことができるかもしれない。これほどワクワクすることはないだろう?」
「蒼焔様・・・」
「そうだよー。もうワックワクだよ~」
「亮・・・」
「俺も強くなれるなら、どんなことも挑戦すると決めている」
「いっつ――」
「いっつんはやめろ」
「・・・ふふっ」
やはりこの三人と一緒にいるのは楽しい。
常に予想外の答えが返ってくる。
(ずっと共にいると決めているが、また覚悟が強まった気がする)
これからも覚悟は強まり続けるだろう。
なぜか、そんな気がした。
今日は・・・面白い場面が少なかったかな・・・?




