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第三章 使命vs食欲
ほとんど痛みが消えたが、まだ空腹感は抜けない。
突然どこからか足音がした。そちらの方を見ると、そこには、中学生か小学生かほどの、男が一人、歩いていた。
突然、空腹感がより一層大きくなる。
これが「人間を喰いたい」という感情であることはすぐにわかった。
自分を抑えつける。
僕は、人間の命を救うため、人狼を殺してきた。
そんな僕が...僕が!
「人狼なんかに屈してたまるか...よ...」
数十分後には、その空腹を抑え切った。
はっ...人狼に勝ってやった...
俺は人狼に勝った...そう思った。
けど、頭に手をやり、そこにふさふさの耳があることを把握して、それはすぐに撤回した。
家に帰ったころには、空腹感は普段と同じ程度にしか感じなかった。
むしろ、逆にすっきりして食欲が戻ってきたぐらいだ。
そのときには、獣耳も尾もはえていなかった。