1/15
第一章 慈悲
あの時...僕が二人を殺してから、数日が経ち、トラちゃんはもう退院していた。
「僕は...二人を殺したんだ...」
「だから、そんなに考えんな。俺はお前に救われたし、あのままヘリオが人狼として生きていけば、もっと多くの命が失われていただろう。」
トラちゃんはそう言うが、僕には友達を殺したという記憶でしかなかった。
僕たちは、ヘリオさんの墓を作った。
僕らは、ヘリオさんは人狼にまだなっていなかったということで落ち着いた。
そして、ヘリオさんの墓を造ってあげた。墓と言っても、あの日、死体は見つからなかったため、気持ちだけの物だ。
あれから僕は毎日ヘリオさんの墓参りに来ている。
今日も僕は一人で来た。今日は少し空気が違う。嫌な予感がする。
「おや?貴方は...」
後ろから声がする。とても低い声だった。ふと後ろをふり返る。
すると、そこには、
人狼が立っていた。
今まで見た人狼の中で一番でかい。
「丁度良い。新型を貴方に使ってみましょうか」
僕は、足が動かなかった。恐れか、何かはわからないが、そいつに頭を掴まれようと、指一本動かせなかった。