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優等生魔術師は隣の芝生の青さに目が眩む  作者: まさみティー
『魔力』のある優等生魔術師
9/50

私はそのポジションねらってたのに!

 私の名前はフローラ。

 清楚な見た目と内面ちょっとお茶目な女の子です! あ、自分で言うのはなんか痛々しい!

 両親共々美男美女なんです! あでも普通の両親だよ、平民なの。


 一人娘の私はそれはもう大切に育てられた。パパもママも私にいろんな服を買ってくれるの! でもこれって後から考えると着せ替え人形みたいに楽しんでいたのでは? なーんてね。


 私は男の子のような楽しい冒険ものが好きだった。その中でも数々の魔術を使いこなす魔術師は「かっこいい!」って感じで、憧れだった。

 そのことを両親に話すと、魔術学校への入学の手続きをしてくれたのだ。やった……!


-


 魔術学校の入学実技。そこで私は自分に合ってるかな? と思ってファイアボールを使った。私はばんばんばーんと魔術を使いこなしてかっこいい感じにデビュー!


 ……するつもりが、うまくいかなかった。どうして? やっぱ凡人だからかな? まあ、そんなにうまくいかない、よね。


「うーん、彼女は強いかなと思って期待していましたけど、まあそこそこですかね」


 教師の小声が私のスーパー地獄耳に届く! 届いてへこむ。耳じゃなくて、魔術! 魔術の性能がほしいのー!

 最初は魔術が使えない子もいたので、それでも私はいい方だったんだなあと思いながら、ちょっと肩すかしを食らった気分で振り分けられた第一組に入っていった。


-


 クラスでの自己紹介が始まった。柔らかい茶髪のさらりとした髪の長い男の子が立った。レナード……リオ。リオくんかあ。実技一番だって。うらやましいなあ……。

 私は明るく自己紹介したけれど、その子のことを考えるとちょっともやもやっとしてしまって、クラスの友達と喋るのも上の空だった。ちらちらリオくんを見ていたけど、ずっと休み時間も長い髪で表情が見れなかったぐらい教科書を見ていた。さ、さすが優等生……。


 あと他の男子は休憩時間いたずらしてきた。もーっ、男子キライ!


-


 それから私は毎日毎日、誰もいないところで練習していた。ファイアーボールは、初日から全く大きさが変わらず、今後の私の未来を不安にさせた。


「ねえ……」

「ほえ?」


 その、覚えていないとちょっと目立たない感じの1位の彼は私に声をかけた。あっ、髪の毛長いから気付かなかったけど、やさしそうで綺麗な顔してる。


「あっ、えーっとリオくん! であってるかな?」


 うーんわれながらなんと白々しい答え! めっちゃ意識してるっていうかライバル視していたくせに、たまたま覚えていたかなみたいな言い方!

 いや、そうじゃなくて。リオくん? リオくんが話しかけてきたんだよね?


「うらやましいなー、入学実技1位だったよね、そんなすごいのでないよ、いいなーいいなー」

「いや、僕はそんな大した魔力じゃないよ」


 なんてことをいうんだと思った、私はそのポジションねらってたのに!


「あーっ、いやみってやつだ! ママがいってたもん」

「ち、違うよ! そうじゃなくて」


 よゆーだなー。あれだけ目立っておいて大した魔力じゃないよとかゆるされませんよっ!


 でも、そんなことも頭の中からふっとぶぐらい、次の彼の発言は意味不明だった。


「どうして左手で持たないのかなって」

「えっ?」

「だって君は左利きでしょ?」


 左利きとか考えたこともやったこともないよ。文字を書くのも右手、スプーンを持つのも右手、ナイフを持つのも右手だし、左手で文字なんて書いたら紙の上でミミズがのたうちまわるにちがいない。だから当たり前のように右手で杖を持っていた。


 でも、学年一位のリオくんがわざわざそんな変なことを言うなんて、不思議だった。とにかく左手で持ってミミズのぶとうかいを……じゃなかった、魔術を使ってみよう。


「ファイアボール!」


 ……あれ?


「あれ……?」


 あれ!? あれあれ!? やり慣れない感じなのに、さっきより、なんだろう、スピード感がある? あとつかれにくい!


「ファイアボール!」

「ファイアボール!」

「ふぁいあいあ! かんじった……エヘヘ」


 あ、顔を背けた。わらったなーこいつ!


「ファイアボール! あっ……今の、さいごのやつ! 右手のときより大きかった! 大きかったよね!?」


 すごい! 強い! 明らかにこっちの方がいい!

 なんと、私は左利きだったのだあっ、衝撃の新事実っ! パパとママにもおしえなくちゃ!

 でもなんで? というかなんでわかったんだろう。


「だって左手に魔力が流れてたし。さっきは右手振りながら吸ってて、左手から魔力が漏れてたのが見えたよ」

「み……みえた?」

「見えないの?」

「ま、まりょくのこと?」


 えっ見えないです。魔術を使ってなくても目で見える? 信じられない……けど、間違いなく見えてる。だってそうじゃないと私の持ち方なんて指摘できないもん。パパもママも絶対右利きだって思ってるし。

 それを自分の中でかみしめると、リオくんの特別さがじわじわとしみこんできた。


「すごいすごい! わたしぜんぜんみえないよ!」


 自分の魔術を強くしてくれたのがうれしくて、そして感動しちゃっておもわずリオくんの両手を握った。


「すごいなあー……。ねえねえ、これ二人だけの秘密にしない? ね?」

「う、うん……」


 勢いで手を握りながら、「わーおとこのこの手だー。さわっちゃったー。パパというかママよりもやわらかいなー」なんてことを考えていた。無意識に手をもみもみしていた。うん、うん、どう考えても完全に変な子の行動でした本当にありがとうございましあっ目を逸らされたっ! 絶対引かれてるやつだこれ、ごめんなさいっ! いや謝るぐらいなら離せよ! いやですもっともみもみしたいです!





「ところで……」


 そんなふうに頭の中でフローラ大会議をしているのもつかの間、更にその子は言う。


 ———どうして火魔術の練習してるの? 体の魔力は水の色してるのに。


 それが、私の人生を変えた一言になった。

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