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優等生魔術師は隣の芝生の青さに目が眩む  作者: まさみティー
『魔力視』のある優等生魔術師
4/50

リオ君欠乏症だよ〜!

 翌日、フレイはもういなかった。急な転校だったと教師は言っていた。クラスはなんだかんだ残念がる奴、リベンジしたかったとぼやく男子、ちょっと怖かったから安心したと言った女子など様々な反応だった。


 放課後、誰もいない教室でぼーっとしていると、フローラが近づいてきた。そういえばあれから毎日フレイに放課後すぐ引っ張られていたから、こうやってフローラと放課後ゆっくり会うのは久々かもしれない。


 フローラは夕日を浴びて白い肌が光る場所に腰を落ち着けて、少し目を落としながら優しい声で言った。


「行っちゃったね」

「そうだね」

「……寂しい?」


 そう言って目を向け、下から覗き込むように聞いてくる。


「うーん……そう、そうだなあ。賑やかだからねー彼女。確かに寂しいっちゃ寂しいかもしれない」

「そう……」

「一緒にいた時間が長いからかな、あのやかましさが懐かしいね」

「……そうだよね」


 目を細めて、フレイのいた席を眺めるフローラ。その白い顔と髪は傾いた太陽であっても大きく光を吸収し、彼女自身がふわりと光を纏っているように幻想的に輝かせる。


———しかし、今の僕にはそうも言っていられない理由がある。僕は立ち上がり、大きく手を2度叩き、「ハイこの話ここでおしまい!」と切り上げた。あまりの変化に彼女も目をぱちくりさせて驚いている。僕の影で彼女への日光は遮られた。


「それではフローラさん」

「はっ、はひっ!? なんでございましょうでしょうかっ!?」


 焦っているのかなんだか意味不明な答え方になっている。綺麗で幻想的なフローラさんは、口角を上げつつ汗ダラダラの残念かわいいフローラさんに変身していた。なんだかこういう反応を見るのも久々で、それだけで嬉しくなってくる。


「今日からまた、魔術を見せてね」

「……あっ」


 フローラもそれに気付いたようだ。笑顔をしながら胸の前で拳をぐっと握る。


「っ!」


 かと思ったら、何故か急にふらついてしまって慌てた。


「だ、大丈夫?」

「うん……えっと、それでね?」

「明日にしようか? なんだか」

「ううん! 今すぐがいい! 今すぐだね! やったね!」


 練習疲れだったんだろうかと思ったけどそうでもないらしい。貧血かな?

 フローラはすぐに持ち直して、


「もう一人は飽きちゃってリオ君欠乏症だよ〜! また私のこと見てね!」


 そう言って立ち上がり、満面の笑顔をするのだった。


 魔術を見せてほしいと言ったのにはもちろん理由がある。きっと元来の真面目な性格がいい影響を与えているんだろう、フローラの魔力は、2年前に比べて明らかに大きくなっていた。本当はフレイに遅くまで教えている時間の後に無理にでも時間を作って、何度か教えたいなと思っていたのだけれど、それだけのためにフローラの家に行くというのは……ちょっと今の僕には勇気がなかった。


 -


 フローラとの練習場。彼女とここに来るのは本当に久々になる。


「じゃあ……いくね! ウォーターカッター! ヤッ! ハッ! フッ!」


 久々に見た彼女の魔術は非常に安定していて、多数の魔術を無詠唱で使いこなしていた。その上魔力量自体が非常に大きく、水の刃は地面を大きく切り裂いている。その威力はフレイに匹敵するんじゃないかというほどだった。……というか匹敵して火属性と水属性なら、正面向かって勝負するとフローラが圧勝しちゃうのでは……?


「……おどろいた。これ授業で隠してる、よね?」

「えへへ……いやぁ……お恥ずかしながら、目立つと私も決闘させられそうだなあって……」

「ええと、一応もう大丈夫だって確認したよね」

「うん。でもでも、やっぱりそれでもちょっと目立っちゃうのはあんまりなーって思っちゃって」


 そう言って左手の杖を見ていた。


「それに、フレイと勝負をしたくなかったというより……男子軒並み倒してる女子を私が倒しちゃうのって、なんかこー、やだなーっていうか、へんなあだ名つけられそうというか悪目立ちしそうというか」


 そう言ってちらちらとこっちを見ながら、


「君はどう……? 私がそんな、えーっと、ゴリラ女! とかでどん引きする?」


 とか言い出す。


「しないしっていうかそもそも僕は君の魔術威力最初から知ってるし、…………ていうか君の見た目でそんなひどいあだ名つける男子とか絶対いないと思うよ」


「えっ?」

「ああいや、なんでもないよ」


 ぽろっと出てしまったけど、最後の声は小声で聞き取られなかったようだ。よかった。


「……ところで、さっきの魔術の発動見ていて思ったんだけど」

「うんうん! 何かあったかな!」

「体内の魔力から緑の光が出ている……たぶんフローラ、僕と同じ風魔術右手から出るよ」

「リオ君の!? や、やってみたいやってみたい!」


 フローラの魔力は一体何の影響か、風の魔術に適性が出来ており、威力を底上げできる色になっていた。2属性あって風と水となると、フレイだけじゃなくて僕も間違いなく勝てないなあなんてことを、楽しそうに飛び跳ねる彼女を見て思っていた。


 フレイがいなくなった空白がどうなるかわからなかったけれど、彼女が一緒ならきっと大丈夫なんじゃないかなと思うのだった。

 フローラはリオ君欠乏症なんて言ってたけど、どうも僕もフローラ欠乏症だったらしい。


 ……じ、自分で意識すると結構恥ずかしいなそれって……。


 -


 中等部に上がったけれど目新しいことはなく、僕は初等部同様、授業に出て、実技をこなして、放課後はフローラと一緒に練習をしていた。


 時間があれば魔術ではなく、その他の冒険者用の文献に触れた。恐らく僕は、このまま行ってもそこまで強い魔術職にはならないだろう。

 だから、せっかくだし冒険者にでもなっていろいろ見てみたいな、と考えていた。その際に必要な知識でも集めておこう。


 初めて得る知識は面白い。もともと魔術の知識など本という本を読むのが好きなこともあり、学園にあるそれらの書物を連日読みふけった。




 2学年に上がると、だんだんと魔術の能力が追いつかれていった。もともと持っている魔力自体が中ぐらいだった自分は、それでも追いつくのに必死だった。魔力の高い生徒に追い抜かれている。


「おっ、ついに1位のリオが陥落か。まあ初等部6年間1位が異常すぎたよなー」


 そう言ってクラスメイトたちは軽く流してくれたのがありがたかった。元々限界まで使って中の中といったところなのだ、最終的に真ん中ぐらいがちょうどいい。


 例えば、クラス平均の彼は魔力が6割馴染んでいる。あそこにいる彼女は総量はそこそこで、7割馴染んだ姿で魔術を使っている。なので相応に上位だったはずだ。

 今は僕の方が彼女より上にいるけど……きっと最終的には追い抜かれるぐらいになるんじゃないだろうか。


 -


 4限目が終わって、教科書を仕舞うといつものようにフローラが正面に来て椅子に後ろ向きに座りながら


「やっほ、今日も学食一緒に食べよ」


 と声をかけてきた。彼女は相も変わらずそこそこ平均威力の火魔術師。しかし本当は、得意の水魔術は2位を引き離して圧倒的、教師でも特別赴任の現役の先生以外ではとても太刀打ちできるものではないはずだった。もちろん僕以外には内緒だ。……それを意識するとなんともむずかゆいきもちになる。


 気がついたら顔つきはやや大人びて本当に綺麗になり、背は女子平均以上まで伸び、胸も他の女子と比べて……いつの間に……これはかなり……ってダメダメ見ないようにしなくちゃ!


「おおっ!?」

「あっ……。……ええっと、もしかしなくても、気付いてらっしゃるでしょうか……?」

「んっふっふ〜、胸でしょ。いやーリオも興味あるようで安心したよ」


 やっぱり……ばれてる。今絶対顔真っ赤だわ。


「いいよいいよ、他の男子はもっと見るし……っていうか胸しか見てないし……なんか教師とかも会話してても目合わないし! アタシの口おっぱいについてないぞっ!」

「あははなにそれ」


 彼女は神秘的な雰囲気に加えて中等部では屈指の女性らしさの出た体になり、更にその容姿には似つかわしくないぐらい変わらず明るい喋り方で誰とでも気さくに話すため、男子にも女子にも人気の的だった。結構頻繁に告白されて……いやもう告白してない男子いないんじゃないのかな? ちょっと罪作りな美貌だった。


 ただ、OKを出したことは未だに一度もないらしいので、ちょっと安心している。———安心している?


「じゃ、先に練習場行ってるね」

「分かった、図書室で書籍を交換したら後から行くよ」


 浮かび上がった疑問はフローラの声を聞いてふわっと消え、そして彼女との練習は再び続いた。


———……既に自分の魔力効率は95%以上。総量は少しずつ上がっていったけど、これ以上大きく上がることがないのは、誰よりもこの目を持った自分が分かっていた。

 優秀な人ほど番号の若いクラスに振り分けられる中等部第一組。クラス3位の自分の魔力総量はクラスで一番下だったのも、よく見えていた。


 放課後の練習は、ほぼ彼女を教えているのみとなった。

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