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フローラの話

 聞いてしまった。とんでもないことを聞いてしまった。彼がどんな覚悟で私に魔術を教えていたのか聞いてしまった。聞いてしまったのだ。


 私、「うらやましい」なんて仲も良くない初対面で言い放って。彼は大した魔力じゃないと言った。それに対して私は嫌味だと言った。

 ……魔力が目で見えていて最初から才能のあった私に、嫌味だと言われた凡人の自覚のあった6歳のリオ。


 無知とはいえ……なんて、なんて愚かな発言……。そして、そんな嫌な私に対して、その直後に彼は私に、ま……魔術の指導を……自分の魔力総量を、置いて行かれる運命を知っている状態で……わ、私のために……ダメ……もう涙が出てきそう。


 私は首を振って、今泣いちゃダメだと自分に言い聞かせる。リオは責めて欲しいわけじゃないから秘密にしたと言っていた。じゃあ、これで彼に同情するのは、きっと失礼だ。


 ただ、有り難さと申し訳なさは今までの比ではないほど襲ってくる。同時に、彼のためにパーティを組めて、彼をSランクのメンバーに出来て、心からよかったと思う。




 言うしかない。めっちゃ怒られるのを覚悟して言うしかない! ありがとうリオ、勇気をくれて。最初から君はずっと私の味方だったんだね。


 ……今なら! ヘタレの私でも言える!


「…………ごめんなさい」

「ううん、だから、僕はこのことに謝ってもらうことなんてどこにも」


「ごめんなさい嘘ついてましたああああああああ!」


 魔術を駆使した全力のジャンピング土下座をする!


「え? え? 何なに?」


 洗いざらい話そう。それで彼との関係が終わったらそれまで。でもそれだけのものを受け取ってきたし、お返しなんてもう一生かかってもできそうにない。


「リオの魔力視だけどね、ずっと秘密にしてたけどね、っていうか自分で調べなかったんだね?」

「そうだね、あまり気にならなかったし」

「そうかー気にならなかったかー。……珍しいとは思わなかったの? 両親には言ったよね?」

「うん。そもそも調べて何か変わるものでもないし、両親も魔力視だし珍しくないかなって」

「……え、え? ……まって、まってまって!」


 頭の中で、リオの発言をかみ砕く。いや何度かみ砕いても同じ味、これはまさしくびっくりテイスト。 


「ええええええ!? 両親とも魔力視ってそれほんと!?」


 な、なんか本気でとんでもないこと言ったよ!?


「えっ、そうだと思うよ。僕のこと努力すれば使えるようになるぐらいの魔力とか最初から言ってたし」

「え、ええと……著名な方でいらっしゃいますか……?」

「先生に聞かれたけど知らないって言ってたから無名な普通の魔術師なんじゃないかな。すっごい田舎に引きこもって外にろくに出ないし、夫婦二人だけの世界に入っちゃう仲良しだから、このこと誰も知らないし話してもいないと思うけど……」


 目眩がしてきた。


「ちなみに僕はその両親に魔術を習ったよ」

「……あっちゃーそうかあ……。そりゃあ常識がそうなるよねえもう…………これはこれでとんでもない話だなあ……」


 なんという展開。頭を抱えて唸るしかない。周りの環境が違えば、常識が一気に変わってしまう。うらやましい能力も平凡な能力になるし、平凡な能力も特殊技能になっちゃうのだ。

 もちろん彼は前者です。いやもう、これが平凡な能力扱いとか、ああもうそんなことになっていたなんて! 全然知らなかった!


 深呼吸をする。すーはーすーはー。よし言おう。


「『魔力視』だけどね。これを持っている人はこの国に8人しかいません」

「は?」


 知識が豊富なリオが本気で驚いた。そうでしょうそうでしょう。これが知識でマウントに立つ優越感……って優越感感じてる場合じゃない!

 でもほんとに調べなかったんだなあ。つまり、それだけ約束をしっかりまもってもらったということでもあるけどね。あっダメこんなところで今度はにやけてしまう。にやけている場合じゃないので首を振って気持ちを平静に保つ。


「公国は3人ですっていうか本当に両親とも魔力視? ありえないよそれどんな確率なの。帝国とか全くいないです」

「そ、そうなの?」

「さっきの瞬間がぶっちぎり衝撃の新事実だよ。これで国内の魔力視は11人になりましたとか報告いかないとダメなレベルだよ」

「えええ……?」

「ま、今更誰かに教えたりとかしないけどね!」


 多分他にも秘密にしている人は本当にいるんだろうと思うし。凄すぎるもんこの才能発掘の才能。


「そして私は、学校の先生に、指導者として最高峰だから魔力視の人間がいたら教えて下さいねって言われてました」

「初耳だよ」

「うん……つまりその、私の王属魔術師よりも上のエリートコースの可能性があったの。でも、その……リオが先生に取られちゃったら、やだなーと思ったというか、学校からいなくなったらと思うととてもではないけど言い出す事なんてできなくって、はい! 一緒にいれたらそれだけでいいというか独り占めしたくて黙ってましたごめんなさい!」




「………………」

「………………」

「……………………そ、」

「…………」

「そうだったんですね……」

「…………そう……なんです…………」


「………………」

「………………」




 はあ、はあ。い、言ったー! 言い切った! 言い切ったらお互いもう後は何言おうかわかんないやって感じで、黙ってしまった。


 き、気まずい!

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