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優等生魔術師は隣の芝生の青さに目が眩む  作者: まさみティー
『魔力』のある優等生魔術師
12/50

私、役に立ててるかな?

 卒業式なんてもうめんどいからいーの! そんなことより、リオと一緒にパーティ! あっもちろん両親にも話は通してるからね! これからもリオとずっと一緒で活動なのだ! やったね!


 そしてまさかのリーダーにさせられた。


「な、なんで!?」

「いや大会一回戦でやられた僕が、優勝者の君を部下として連れ回してるとかなんかアレだし、それにリーダーってやっぱ基本的な実力はもちろん、対外的なインパクトもいるんだよ」

「いんぱくと!?」

「つまり、大会優勝者って看板がランク上昇に役立つかもよ?」

「ランク上昇に……! うーんうーん、そう言われちゃうと断れないなあ。リオは私を乗せるのうまいからねー」

「ははっ、そう言うなって」


 でも彼の乗せ方は上手い。さすが長年の付き合いってやつだね!




「ところでフローラ……」

「ん、なになに?」

「前に病院で言ったけど……その、新しい魔術を……」

「あっ思い出した! 言ってたね!」


 新しい魔術は大歓迎です! リオが教えてくれるのなら必ずモノになるはず!


「それはね……」

「うん!」

「……それは……えっと……」

「……な、なになに? 言いにくい?」

「うん……その、闇魔術なんだ」

「闇魔術?」


 闇魔術って、あの闇魔術?


「ちょっとフローラのイメージに合わないけど……昔から少しあったけど、魔力として使えるのかわからなかったんだよね。でも今は、かなり強くて澄んだ黒をしているから大丈夫かなって」

「そう、なんだ。あでもわかるよ、あるのかもねそういうの」


 いや、私ははっきり知っている。その闇魔術は多分、私の過去の心だ。その黒いヘドロを精算したから……というかリオに救って貰ったから、私の中に元々あった要素から、汚いモノだけ落として綺麗な黒が残ったのだろう。


「つまり女の子には色々あるってことだよ!」

「そ、そうなの?」

「そうなのだ! はっはっはー精進したまえ!」

「むう……女の子はわからないなあ」


 そうして私は、白い手から黒と紫の闇魔術を撃ち出せるようになった。青空に向かって黒曜石のように輝く黒の刃は、過去に因縁のあった黒い私もまた私の一部なんだって受け入れられたことを祝福しているようだった。


 -


 護衛任務、回収任務、そして討伐任務。彼は、やはり何か特殊なものを見ているようで、敵の発動魔術が分かるようだった。未知のものに対しても対応している。

『魔力視』。未だに秘密にしているモノ。

 彼の見ているものは圧倒的に正確で、戦闘のサポートとしては破格の能力だった。的確に指示を飛ばしてくれるし、そもそも彼自身が結構実力のある魔術師なのだ。指示が飛んでこずに彼だけで済ませてしまう場合も多い。ギルドの職員も知らないような知識を使って任務をこなしていた。


「ねえ、なんでそんなに詳しいの?」

「ほら、中等部の時に図書室に籠もってたでしょ」

「あ、ああーっ! あの時からだったんだ!」

「うん、そういうこと」

「サポート力すごい! これはサポートさんだね! スーパージョブの最強サポートさん!」

「なにその仰々しい名前やめてよ」


 彼はそう言って困った顔をしていたけど、本気で嫌がってはいないようだった。いないよね? いないことにします!


 そして私は今までの分を取り返すように、彼の役に立ちたいと彼に教えてもらった魔術で任務をこなしていったけど、結果的に彼のサポートがないと成り立たないようになっていた。というかこのパーティ、私が強い魔術師なら代用できるけど、どう考えてもリオなしだと成り立たない。やっぱリオがリーダーでよくない!?


「『雪花魔術団』ってこないだAランクになったばかりですよね……もうワイバーンの異常発生抑えたんですか?」

「うん、ていうかあれBぐらいじゃないです? もしかして成り立てだから簡単なのにしてくれたとか」

「はあ、まあもちろんワイバーン討伐自体は決して難しくないですが、弱い魔物では……。それに報告に上がったこの数では間違いなくA相当以上ですよ。すごいですね……」


 正直な感想を言ったつもりが驚かれてしまった。というかリオが迎撃場所を指定してくれていたので、まっすぐ飛んでくるワイバーンを安全に撃ち落とすだけだった。リオは自慢げに頷いてるけど、ぶっちゃけ私いなくても倒してたよね?

 そんなもんだからEからAになるのに、難易度の差を全く感じていなかった。まあつまり、リオが優れているんだろうなと思う。職員さんからすると、私が強いからみたいに感じるけど、どうしても自信が持てなかった。


 私、役に立ててるかな?


「ねえねえ、受付さんから見て、私たちの『雪花魔術団』ってSとか目指せそうです?」


「この調子なら十分可能性はありますよ。AAAとSには断崖絶壁の大きな壁があると言われているので大変でしょうが、油断して命を落とさなければ……」

「あっそれなら大丈夫、うちには最強のサポートさんがいるからね! ねっ!」

「ん? ああうん……」

「もーっ聞いてたの?」

「というかその恥ずかしい紹介はそろそろやめてくれない?」

「やなこった!」


 この名前は気に入ったのだ。今更譲るわけにもいかないっ! ほらほら、職員さんも覚えてるって顔してるよ!




 ギルドを出て、私はぽつりと本音をこぼした。


「私どうかな? このコンビで良い感じ? リオだけでもなんとかなる、なんてことない?」

「いやいや、むしろフローラが抜けたコンビなんて、軍隊のない軍師レベルで何も出来ないよ。というかフローラは自分を過小評価しすぎ……あんな遠いワイバーンを七面鳥撃ちとか僕無理だからね? 頼りにしてるよ」

「えへへぇ〜。たよってくれたまえ!」


 よかった、役に立てているようだった。やったね。


 -


 その日、珍しくリオは難しい顔をしていた。残ったAAA任務が北の山脈への討伐任務なのだ。


「これは、ちょっと倒せないかな」

「そっかな、今の私ならバババっとやっちゃえない?」

「この任務って確実にいるのアクアドラゴンなんだけど、メイン水魔術で挑むの? 無理じゃない?」

「ハイ……」


 無理すぎる。たき火を止めるのに火を投げるようなもんだ。うん無理だわこれ。


「油断しなければって受付の人言ってたけど、フローラほんとに魔術師としては優秀だけど、まさか授業の成績があんなに微妙だったとは……。これだと命いくつあっても足りないよ」

「トホホおっしゃるとおりですー……」


 私がリオにずっと秘密にしていたことだった。さすがにばれた。実は授業ぜんっぜんダメなのだ。もう全部冒険譚読むだけの授業にしない? あっもう卒業してたわ。テヘ。


「そうだなあ……この敵が得意なパーティを組んでみようかな」

「えっ?」


 急に全く想定していないことを言われて驚いた。新メンバー? 私はあまり……


「……でもこういう不得意が続いてAA以下ばかりやっているようなら、Sは難しいよ」

「い……言われてみれば。うー、だけど新メンバーかあ」

「剣士とか、そういうの、うち全然いないもんね」

「そういえば花型なのにいないね」


 剣士。確かに剣士とかいたらいいかもしれない。そもそも魔術師二人でここまでこなしている方が特殊なんだろうなと思う。


「もしかしたら、アテがあるかもしれない」

「えっ?」


 い、いつの間に!? リオの浮気者! とか言えるはずないですねヘタレですからハイ!


「勧誘できるかわからないけど……任せてもらって良いかな?」

「うっ、うん! もちろんもちろん! リオがうちの最強サポートだからね、大体間違いないよね!」


 それは本音だったけど、内心誰が来るか期待半分不安半分だった。


 -


 来た人物はあまりにも意外だった。


「え、え……?」


 フレイ……?


「あー、その、何? なんてーか、いろいろあったけど、こいつとは遺恨とかお互いさっぱりないから! 喋ってすっきりしたから!」


 遺恨とかない? あ、でもリオも自分の実力不足が申し訳ないって言ってたっけ。


「いや、あんたとはまだ喋ってないけど、アタシはその、まあ協力してもいいつもりというか、いやそういう言い方したいんじゃなくて、だから、まあ、その……。……えっと……」


 ああ、そういえば私って、フレイと喋ったことなかったな。苦手意識があって、それで避けちゃって……でもなんだろ。もっとキツイ子かなと思ってたけど、近くで見るとすっごい美人だしかっこいいし、髪切ってなんだか大人びているし。でもなんでこんなに話しにくそうにしてるのか……。


 そこまで考えて、分かった。

 フレイも私に話したことはないのだ。

 おまけにあの決勝だ。苦手意識があって当然だった。


 じゃあ私が聞くことは一つ。リオに顔を向ける。


「ええと、いいんだよね?」

「こちらから頼んだからね」

「リオが気にしてないなら、私がどうこう言うのもおかしいか。じゃあ私も、」


 遺恨はなかったよ……ってわけじゃない。私からフレイにしたこともあるけど、フレイがリオにしたことを思い出すと、どうしても私は謝れない。謝れるほど大人じゃない……本当は謝りたいけど、自分がイヤになるぐらい、そこは譲れなかった。

 でもリオとフレイ二人が遺恨なしなら、怪我しなかった私がフレイを否定するのはほんとうにおこがましい。なにより、リオが私にとって『彼女が必要』だと判断したんだということが私の中で大きかった。


 だから、右手を出した。


「その……リオが信じるなら私も信じるよ。よろしく」


 フレイは私の顔と手で交互に視線を泳がせて……あっこの子こうやって握手するのも慣れてないなー?


「ん……よろしくしてあげなくもないわよ……」


 あれ、この子思ったよりかわいいかも?


「思ったよりかわいいかも?」


 あちゃ、声に出ちゃった。


 それを聞くと目を一瞬見開いた後、「フン!」なんて言って腕を組んで顔を逸らした。だけど、その顔は夕日で隠せないレベルで真っ赤っかだった。


 はい決定、フレイちゃんめっちゃんこかわいいです。もっと早めに話しかければよかったなあ。




「で、フレイは剣を使って協力するの? 火魔術じゃないと思うけど」


「うん、アタシどうも雷魔術使えるみたいで。彼が教えてくれるって」


 雷魔術。

 フレイが、雷魔術。


 雷魔術。

 なんで? どうして? 


 アクアドラゴン。

 ……そうだった。そりゃそうだ。フレイが雷魔術を使えるなら、誘うのは当然だ。

 リオはそれを知っていたわけだから、何一つ問題はない。





 ただ。


 それは、私の中でずっと考えていたことだった。あの時、私は……。

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