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#29

(まあ、せめて見つかりにくい場所に移動させてやるか)


 俺がそう思って近づいて体を起こすと……


 カタッ……


 倒れた拍子に留め具が緩んでいたのか、鬼人が着けていた仮面が外れて地面に落ちた。


「あ……え?」


 思ってもない展開に驚いた俺は仮面の下から現れた顔に更に驚くことになった。


「シ、シンシア!?」

「え、ロイドの知り合い?」 

「知り合いって言うか、妹だ」


 シンシアは俺の妹で何かと衝突してきたダズリーとは違って仲は良かった。いや、今はそれどころじゃなくて……


(ウェルズリー家にいるはずなのに何で!?)


 よく見ると角のように見えていたのは仮面についていた飾りだ。身につけていた鎧も身体をしっかりと覆うタイプだから体つきもまるで別人だ。


“ロイドの妹? あまり似ておらぬの”


(血は繋がってないからな)


 そう答えながら鎧を脱がし、俺はシンシアの服をめくって──


「ちょっとロイド!」


 え?


「いや、怪我の具合をみなきゃと思って」


「それなら私が見るから! ロイドは周りを見てて」


 ……? リタは何を言ってるんだ?


「いいから!」


 俺は言われるがままにシンシアとリタに背を向けて周りを警戒した。


(と言っても後十分くらいは大丈夫だけど)


 まあ、それでも警戒するに越したことはないけど……


「もうこっち向いても大丈夫。大きな怪我はないみたい」


 そう言われて振り向くと、シンシアはあちこちに包帯を巻かれていた。が、まだ意識はないようだった。


「とりあえず村に連れて帰ろう」

「ああ」


 何故シンシアがこんなところにいるのか。それに何故鬼人の格好をしていたのか。謎だらけだが、今は安全なところで休ませるのが先だ。


(シンシア視点)


(ここは……)


 目が覚めた時、目に入ったのは見たことのない天井だった。


(私は一体……)


 兄様が追放された後、どんどん状況が悪くなるウェルズリー家を出た私は伏魔の森に向かって……


(そうだ、遂に兄様を見つけたんだ!)


 鬼人の面の力が切れて魔物に追い詰められていた時に兄様が現れて……


(やっぱり兄様は格好良かった……)


 ピンチに颯爽と現れたこともだけど、その後急に現れた透明の魔物にも冷静だった。


(冷静でどんなピンチにも諦めない。やっぱり兄様は変わってない)


 そんな兄様のことを私は……って違う!


(探さなきゃ!)


 私は勢いよく体を起こして……


 ガタッ


 あ、あれ!?


「大丈夫!? まだ動いちゃ駄目だよ!」


 物音を聞きつけたのか、部屋に獣人の女の子が入って来た。


(この人、確か兄様と一緒にいた……)


 しかもめちゃくちゃ可愛い。一体兄様とどんな関係なんだろ……


「大丈夫? 痛い?」

「あ、ううん。大丈夫」


 目の前の女の子があまりに可愛かったからつい余計なことを考えていたら心配をかけてしまったみたい。随分優しい子なんだな……


「えっと、ロイドの妹さん……だよね?」

「あ、はい。シンシアと言います」

「私はリタ。よろしくね」


 リタと名乗った女の子はそう言うと、兄様との今までの出来事について話してくれた。


(凄い! 流石兄様!)


 父様達は兄様の〈等価交換〉をクズスキルだと言って馬鹿にしていたけど、やっぱりそれは間違いだった。兄様の手にかかればどんなスキルだって奇跡を起こせるんだ!


(それに今は父様達も後悔してるはず……)


 だってウェルズリー家は今……


「大体こんな感じ。で、私達は鬼人が攻めて来るかも知れないと思って色々と準備をしてきたんだけど……」


 物思いにふけりそうになった私をリタの言葉が現実に引き戻す。そうだ、今度は私が説明しないと!


「次は私のことを話す番ね。でも、その前に一つだけ聞かせて」


「?」


 私が真剣な顔で見つめると、リタは軽く首を傾げた。彼女の説明のおかげで大体のことは分かった。でも、一つだけ分からないことがある。たった一つだけど、とても大切なこと。それは……


「兄様専属のメイドってどう言うこと?」


(ロイド視点)


 リタに呼ばれて部屋に入ると……


「兄様ッ!」

「シンシア、無事で良かった……」


 いきなり胸に飛び込んできたシンシアを抱きしめながら俺は何とかそう言った。正直何を話したら良いか分からない。でも、とにかく良かった……


「兄様こそ! 私がいない間に伏魔の森に追放だなんて……どれだけ心配したか!」


 手紙さえ残せず、その後も連絡出来なかったんだから大分心配をかけたんだろう。本当に悪いことをしたと思う。


 ギュッ!


 シンシアがさらに俺にしがみつく。やや距離が近いかも知れないけど、久しぶりだから仕方ないよな。

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