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可能性の選択  作者: 桃鍋
第5幕
38/62

第1章 少しだけ変わった日常

 海月がセレクターの悪意に巻き込まれ、僕と一緒に生活するようになって一週間が経過した。あれから僕は、海月が住むために必要なものを買ったり、左手の異様な感覚に慣れるために大学を休んでいる。何せ右目失明以来の“生活に支障が出るレベルの代償”だ。痛覚喪失や嗅覚鈍化も困ることに変わりはないけど、気をつけさえすれば今までと同じ生活ができていた。だから、代償が原因で大学を休むのは久しぶりな気がする。一応、以前何も言わずに三週間休んで心配をかけてしまったから、先輩と翔の二人には状況を説明している。そして今は、海月の生活用品もある程度揃え終えたから、左手のことで色々と試しているところだ。

「どう、お兄?」

「う〜ん、やっぱり小さいものや細かいものを掴むのは今まで通りにはいかないかも。」

 たまたま部屋にサイコロがあったから、それを左手で摘もうとしている。案の定、やっぱりいつもの感覚で摘まもうとすると、サイコロに触れることすらできない。自分の左手が自分の体と認識できないんだから、当然かもしれないけど。その後も何度か挑戦したけど、目でしっかりと左手を見ながら、ゆっくりと左手を対象物に近づけないと、サイコロを摘むどころか触れることもできなかった。もう無意識に、つまりノールックで左手を使うことは基本的にしない方がいいのかもしれない。痛覚もないから、それで怪我をしたら大変なことになってしまうし。まさか体の一部の存在感を認識できないだけで、ここまで日常動作に制約が生まれるとは思わなかった。

「まぁでも、利き手じゃなかっただけよかったかな。元々補助的に使う手の方だし、どうとでもなるしね。」

 前向きに捉えようと思って出た発言だったけど、ジトっとしま目で海月が見てくる。あれ、僕何か変なこと言ってしまったかな?

「…………お兄、“よかった”とか“どうとでもなる”とかそういうこと言わない方がいいよ。お兄はそう思ってても、周りの人は全然いいと思ってないんだからね。」

「ヴっ……はい、以後気をつけます。」

 そうか、他の人が聞いたらそんな風に思うんだ。このように、海月は僕の改めた方がいい考え方を指摘してくれるようになった。一人でいる時は間違いなく思いもしなかったことだから、こういう時遠慮なく指摘してくれる家族の存在って、やっぱり大事だなと思った。

――――――――――――――――――――――――

 海月の作ってくれたお昼ご飯を食べ終わった頃、さっきのサイコロ実験で左手の取扱い方をある程度掴めた僕は、そろそろちゃんと先輩と翔に海月を紹介しないとなと思ってRAINのアプリを起動した。まずは先輩からだ。

『先輩、お疲れ様です。セレクターの対応や、海月のことを改めて紹介したいので、明日16:00頃に部室に来られますか?』

 そう送って、次は翔にメッセージを送ろうとしたら先輩から返事がきた、って速!?まだ送って3秒も経ってませんけど?

『明日の16:00ね!私は大丈夫だよ〜ᐕ)ノ

 追伸:左手は大丈夫?何か手伝えることあったら遠慮なく言ってね(^^)』

 やっぱりこういう時の先輩の言葉には温かみがあると思う。気遣ってくれるけど、過剰に重くならないように配慮した言葉選びをしてくれるから、何かあった後の先輩とのやり取りは心から落ち着く。僕はクスッと笑いながら返事を返した。

『ありがとうございます。今のところ大丈夫です(^^)』

 さて、心も温まったことだし、今度こそ翔にメッセージを送ろう。

『明日の16:00頃に部室に来れる?今後のことと、改めて妹の海月を紹介したいんだ。』

 そう送ってから5分ほど経過して返事がきた。

『わかった』

 返事はその一言だけだった。それ自体はいつもの事だし、特に違和感もないはずなのに、何かが引っかかった。元々返信も即レスってわけではないけど、四文字入力するだけでこんなに時間がかかるようなやつだったっけ?あ、もしかしたら何か作業中だったのかもしれない。だとしたら悪いことをしたかなぁと思いつつ、まぁ気にしなくて大丈夫だろうとも思い、僕は明日二人に話す内容を頭の中で整理することにした。

 ちなみに、その日の夜、海月に明日二人を紹介するってことを伝えたら「聞いてないんだけど!?」ってすごい剣幕で怒られた。ゴメンて。

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