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俺のとなりの編集者  作者: 作者
第4章
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19/19

私と僕と俺と

 久々に食べたい夕ご飯をお願いして満足した僕は、後片付けもせずに母親の話を聴いた。あいにく充電が切れて無くしていた携帯も、話を聴くけとによって見付けることが出来た。ゆっくりとどちらとも向き合えたのは、三日ぶりだろうか。




 充電とともに満たされたこの気持ちは何と呼べば言いのだろう。母親との話を今一度振り返ってみた。


 ゆるキャラの中にいた僕は、小さな格子と光、音を頼りに演じていた。キャラの設定から、お辞儀をしたり拍手をおくったり…はたまたうなづいて大事な話だと伝わるように。会場の設営も、バイト経験を活かし…率先しただけで何も対した話ではない。むしろ邪魔に入り、それを悔やみ反省文を友人に述べたところで『今度から気をつけようと思っているんだよね』と言われたばかりだった。…なぜだろう、話がまたひっくり返る。


 母親は僕に笑いながら話をしてた。


 「『もう、本当に大丈夫って言うから、水分補給も休憩もあげなかったんですからね?。それに二時間あの中でいたんですよ、キャラ本体だけでもサービス旺盛だったのに、脱がした後も笑顔のお兄ちゃんのままでビックリしたんですから!!』て、言われちゃってさ?でもだって嫌だったら、そもそも自ら引き受けないもんね。それに心配ないって想っていたし」


 確かにそうだ。だてに水を飲んだり甘やかされると自分の意気込みが消えていってしまう。喉が渇いたりしていたが、それは最初に「要らない」と告げた僕が悪いし、やり切れて笑顔じゃないわけがない。そんな気持ちを巡らすと万事屋もひとつの職業と位置付けられた。


 三日ぶりの携帯を開いてみると、ふたりの先輩とやり取りし終わったあとに続くメールが受信されていた。このふたりの話もまた、僕を称えるような内容で書き締められていた。白い背景にぶわっと浮き出た文字と言葉だけ今は受け取れば良いのに、会う人がいう「見た目は普通な子」「そんな風には見えない」という文だけが、僕が抱えるニュアンスのせいで上手に消化しきることが出来なかった…。








 こぼれそうになった泪を…今日の夜の空へと向けた…






   ―私と僕と俺と―






 私と僕と俺は…こぼれそうになった泪を、夜の空へと顔とともにあげた。泪でそう簡単に空が見えるはずもなく、まぶたを閉じてこぼれ落ちた。


 滲んだ空だと認識はしていた…






 …あの時の空は綺麗だった。


 こんなことを思うなんて、自分は最低だ。


 道内で大規模な地震が真夜中に起きたとき、自分は家族を優先して安全を確保した。そして家族が一安心した後で、自分は見渡した。確認しなくても、道内全域が危機に陥ったことは想像がついた。だってそれは、山に囲まれながらも畑が周囲50数キロも続く田舎町のど真ん中で夜を過ごしてもをこんな空を観たことが無かったから…。




 私は思ってしまった、何でこんなにも綺麗な星を隠さないとイケないのだろう…。


 僕は考えてしまった、何を今まで学んで大切にして、そして自分を犠牲にしてしまったんだろう…。


 俺は動いてしまった、この空が観えるということは動くべきことがあるだろう…。




 それぞれの胸に詰まった気持ちが、自分を動かさずにはいられなかった。私は、木々や草花を見て休むことを催促をした。僕はそれらを理由に心が動くままのほうに身体を委ねた。俺は、とりあえずあの揺れから想定される地盤のゆがみで避難所の心配と人の動きを読むために見回った。まだ余震の影響や朝の4時過ぎという事もあり、身の安全が優先だがそんなことよりもとにかく動いて役に立ちたかった。それぞれの気持ちが自分と言う人間を動かした夜だった。川を越えても山をいくら越えても北海道であり、海を越えなければ生まれ大地であるというところに強く惹かれていたと知った夜でもあった。…あの時の空は本当に綺麗だった。






 私と僕と俺である自分は、あの時々に戻って訂正ができない悔しさに涙した。ポロポロと落ちていく涙はまるで石のように重たくて切なくて苦しかった。泣くべきタイミングが判らない自分は、湧き上がりそうな気持ちに歯止めがかかり「泣くんじゃなくて、解決をして実績をみせること」と頭をよぎり、本気で泣く日には抽選でようやく当たったかのように歯止めがかかる思考もなく、泪する。どうやら今日はその当選日だったらしく、声もおろか身体も震えて生まれたての赤ちゃんのよう。


 そうか、私と僕と俺が一致することでようやく泣けるんだと知る。明日の誕生日には、知る人は26回目の産声をお祝いしてくれるんだろう・・・






 私、頭で自分を支えています。


 僕、体で自分を動かしています。


 俺、心で自分を引っ張っています。


 自分、支離滅裂だけど『鷹弘』として生きています。






 雪が降って溶けて、春が来て、夏で焦がれて、秋に深く。


 みんなに支えられて暖かくなって、旅路に出る。そこで新たな発見に暑くなって黒くなる。そこにまた違うみんなに出逢って繰り返す。まるで、季節のよう。












 心で動くことも多い自分は、「俺」任せ。だから、「俺」を、心を、支えてくれるみんなに編集者に・・・明日、また会いに行くよ。今回の小説はこの辺で。

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