第二十一話 vsキングシャチ
「ウェポンブースト!アーマーブースト!…お願いします!」
まず最初にハルカちゃんの補助が付与される。やっぱり居ると嬉しい職業だ。
「あまり攻撃には参加出来ないのが悔しいけど、出来る限りはやらせてもらうわ!マジックバレット!」
「キュリィィィ!!」
シャロさんが無属性の魔力弾を放つ…が、あっさり弾かれる。だがこれでいい、少しでも気が逸れた。
「先手必殺」
「………ハイスラッシュ」
この隙に私と御影さんが突っ込み、すれ違いざまに斬りつける。
…浅い。どうやら相手は結構硬いようだ…レベル30だし当然か。
「おっとそっちには行かせないぜ、挑発!こっちだ!」
シャチがこっちに向こうとした瞬間にアクトがヘイトを変えさせる。ナイス。
「キュリリリ!!!」
「ぬわぁ!?こいつあぶねぇ!?」
…気づいたらアクトに突っ込んだ後だった、どうやらかなり素早いらしい。
しかも盾で防いだにも関わらずアクトは後ろに吹っ飛んで行った。さすがの攻撃力だ。
「ひ、ヒール!…ど、どうしましょう」
「ちい…直撃はするなよ!攻撃力がやべぇ!」
「………言われなくても…ソニックブレイド」
遠距離攻撃を当てるが、やはり大して効き目はないようだ。
「…私とアクトが気を引きますわ。御影とハクアは攻撃、ミリアとハルカは補助をお願いします」
「は、はい!」
「合点承知」
簡単に作戦を決める。パーティーでボス戦は初めてだ、頑張ろう。
「よし、絶対勝つぞ!!」
「「「おー!!」」」
「ぬわー!!」
戦闘開始からどれだけ経っただろうか。アクトが吹っ飛んで行くが気にしない。あいつの今回の仕事は吹っ飛ぶことだ。
「………スティンガー」
「キュリィィ…!」
攻撃の隙を狙って突きを放つ。痛みに暴れて尻尾で薙ぎ払ってくるが、既に退避している。
御影さんは攻撃がクリティカルヒットした後に追撃され、先ほど戦闘不能になった。シャロさんもハルカちゃんの盾になって戦闘不能だ。
…状況的にはかなりまずい。今回は勝てないかもしれない。
「ぐぅ…ミリア!MP残ってるか!?」
「ご、ごめんなさい…もう少ししか…」
「くそっ…ハクア!まだいけるか!?」
「………まだ一発もくらってない」
「まじか!?」
どうやら回復は燃料切れ寸前らしい。だが回復は本業じゃないハルカちゃんじゃ到底間に合わない。
「………やられる前にやる」
「それしかないよな…ハルカちゃん、アレを頼む!」
「はい!オーバーブースト!!」
オーバーブースト。これは低レベルでも覚えるにしてはかなりアンバランスな支援スキルだ。ステータスが全体的に大幅に上がるが、時間切れになれば逆に大きく下がってしまう。いわゆる「ト●ンザム」みたいなものだ。
「よし、決めにいくぞハクア!」
「………了解」
私とアクトで挟み撃ちにする。相手も弱ってるのか、動きが鈍っている。今がチャンスだ。
「ハイスラッシュ!」
「………ハイスラッシュ」
「ギュリィィィ……」
同時にハイスラッシュを放つ。本当に便利だこのスキル。
…手応え有り。切り札は伊達ではないらしい。
「シールドバッシュ!」
「………ミドルキック」
「おわっ!?」
こっちに吹っ飛ばして来たので蹴り返す。あ、これ楽しい。
「あぶねぇよ!?スティンガー!」
「………ハイスラッシュ、ソニックブレイド」
相手が怯んでいるので、今のうちにラッシュを決めておく。逃げた所に追撃も忘れない。
相手の動きが相当鈍っている。おそらくあと何撃かで…
「ギュリィィィィ………!!」
「ん?」
…いつもより遠く離れて何かを溜める動作に入った。あ、やばい。
「…あ、やべぇ!?」
「………!!」
「へっ?」
咄嗟に本能的にハルカちゃんの前に出る。アクトも気づいたのか、ミリアさんをかばう。
「…ギュアァァァァァ!!!!」
口から竜巻のような物を出してきた。いや、海だから渦潮かな…?
咄嗟に武器を目の前に構えるが、気休めにもなるはずがなく…
「う、うわぁぁぁぁ!?」
「「きゃぁぁぁぁぁ!?」」
「………やっぱりダメだった」
私たちはその渦潮に巻き込まれたのであった。
「……………」
「…お疲れ様です」
死に戻りした先には、シャロさんと御影さんが待っていた。
隣にはアクトがいるのを見るに、どうやらこいつもやられたらしい。
ミリアさんとハルカちゃんはいない。どうやら私たちが盾になったおかげで無事だったみたいだ。でも、あの二人は戦闘職じゃない。
「…ミリアとハルカちゃんは守れたみたいだな」
「………神官と付術士だけどね」
「無理だよなぁ…あー、後少しだったのにぃ!!」
皆で悔しがっている…本当にこれで終わりだろうか。何だか変な予感…具体的に言えば、ミリアさんが何かやらかしそうな予感がするのだけど…
「…来ませんわね、あの二人」
「うーん、さすがシャチ怖いし逃げ回ってるんじゃ…」
「…………」
ピロリリン♪
「……ん?」
「…あら、何かしら」
やっぱり、この予感って…
「ゆあ、うぃん」
「あなた達の勝利です……って、えぇ!?」
「なん、だと…」
どうやら、あの二人で倒してしまったようだ…
「すげぇ、すげぇよ二人とも!!どうやって倒したんだ!?」
「アクト、落ち着いて」
「っと、すまん…」
アクトが飛びつかんばかりの勢いで迫った。気持ちは分からなくもないけど…
「二人ともどうやって倒したの?」
「そ、それが…」
「私がオーバーブーストをミリアさんにかけて、ミリアさんがカウンターにバコーンバコーンって…」
…まぁそれしかないだろう。にしても随分惜しかったようだ。神官が何度か殴って倒せるくらいにまでは弱っていたようだし。
「ミリア、お前すごいな…」
「い、いや、すごいのは支援してくれたハルカちゃんだし…」
「そんなことないですよ!?私怖くて攻撃できませんでしたし…」
何だか謙遜しあっている。あー、そうだ…
「………私はドロップいらない」
「え、えぇ!?」
「私の分は、カリンさんに渡して」
私が持っていても使わないのだ。それなら、私たちに水着を提供してくれたカリンさんに使ってもらうのが良い。
「…いや、ボスドロップは貴重だし、買い取るわ」
「………なら値段交渉」
その後無事に交渉を終え、今日の所は解散となったのであった。
…やはり私は火力不足気味だ。何か考えておかないと…
主人公強化フラグキター?(ぇ
今回で海編は一応終わりでございます。え、物足りない?作者の技量不足だよちくせう!




