第十九話 水着回は基本
何やかんやで素材を集め終わり、カリンさんの元へ戻ってきた。先に集めていたシャロさん達もいる。
「あ、遅いわよアクト達…その子がカリンさんの言ってたハルカちゃんかしら?」
「は、はい!よろしくお願いします!」
「んもう、もっと楽にしても良いって言ったのに…」
ハルカちゃんが自己紹介をしている間に、こちらは素材を渡す。
「ふむふむ…これだけあれば十分ね。で、二人は何でそんな疲れた顔をしてるの?」
「………何でもない」
「き、気にしないでくれ…」
いくら走っても疲れない仮想空間とはいえ、精神的には疲れる。悪戯に怒ったアクトに追いかけ回されて疲れたとか言えない。
「まぁそれは置いておいて、早速水着の作成に入るわね。そこまで時間はかからないから、雑談でもして待っててちょうだい」
「あぁ、頼んだぜ姉さん」
「まっかせなさい!!」
アクトに頼まれた瞬間やる気が数割増しになったように見えたけど、気のせいだろう。うん気のせいだ。
カリンさんが作成に入ったので、私達も雑談に入ることにした。
「ふぅ、全員分出来たわよ!」
しばらくすると、カリンさんがやり遂げた表情で戻ってきた。デザインから作るには結構時間かかるらしいけど、この早さは流石だ。
「じゃ、皆に渡すわね」
トレードで送ってきたので、お礼代わりに持っていた素材を幾つか渡しておく。私はあまり使わないので、使う人が持っていた方がいい。
送ってきた水着の効果を見ると「水中での移動速度アップ」と「水中持久力の増加」という効果が付いていた。水中持久力はたぶん息のことだろう。これはもう泳ぐしかない。
「おぉ、ありがとな姉さん!」
「お礼はリアルでのアレ(・・)で良いわよ」
「な、何ですかアレって!?」
何やら意味深な言葉に周りが反応してるけど、こういう時は変なオチがあるのは世の常なので気にしない。
「………とりあえず、目的地に行こう」
「そ、そうですね、い、行きましょう」
この島には、水着装備専用のエリアがあるらしい。話し合った結果、そこに皆で行って水着を装備してみようということになったのだ。
「ふふ、見てなさい。私のデザインした水着で悩殺してあげるわ!」
「カリンさん、ここ仮想空間」
「そんなの関係ないわ!」
何やら変な会話が聞こえるけどスルーして、皆で目的地へ向かった。最近スルースキルが強化されてきてる気がする。
「………何やってるの」
「ハ、ハクアか!?助けてくれ!!」
ちょっとリアルでやることがあったので、数分ログアウトした後に水着を装備して、目的地の砂浜に来たのだが…何やらシャロさんにヘッドロックされているアクトという構図が出来ていた。水着であんなことしたらハラスメント警告とか出てそうだけど…ほんとに何やってんのさ。
ちなみにシャロさんとミリアさん、カリンさんは王道のビキニである。それぞれイメージ色に合わせてシャロさんが赤、ミリアさんが緑、カリンさんが青だ。シャロさんはパレオつきだ。色気を出しつつやり過ぎていない絶妙なバランスはカリンさんの手腕だろう、さすがだ。
何より恐ろしいのは、体に「作った感」が無いことであろう…やっぱりあの胸部装甲は天然物らしい。
御影さんはワンピースタイプだ。色はやはり黒。可愛らしい柄だが、本人が恥ずかしがってるのを見るに、カリンさんにデザインを任せたのだろう。ちゃんと似合ってるのを見るに、変に疑わずカリンさんに任せても良かったのかもしれない。
そう思っていた時期が私にもありました。
ハルカちゃんが…スク水なのだ…
いや、本人が小学生っぽいし違和感はないけど、何だか…アレだ。先ほどの認識を速攻で塗り替えて、希望出しておいて正解だったと自分の勘に感謝した。
アクト?ただの黒いトランクスタイプだ、別段言うことなんてない。
「ぐふぅ、助けろよハクア……………」
私の水着は白いセパレートだ。レースっぽいのが付いており薄い胸部装甲を誤魔化しているけど、効果は見込めない。可愛いから良いけど。
…ところでこいつは何ガン見しているのだろうか。アバターとはいえリアルとほぼ同じ体型なのだ、流石に恥ずかしい。
「………あまり見ないで欲しい」
「え?あ、す、すまん!ちょっと驚いて…」
…こいつまさか
「「「ロリコン!?」」」
「違う!!?」
シャロさんが御影さんとハルカちゃんを守るように抱いたのが見えた。さりげなくミリアさんも私を庇うように立つ。ロリ扱いされたのが気にくわないが事実なので仕方ない。
「私とハルカとハクアに近寄ることを禁ずる」
「だから誤解だっての!?」
「………近寄らないで」
「ハクアまで!?」
ちなみに後から本人に聞き出すと、私がちょっと恥ずかしそうな顔をしてたのが衝撃的だったらしい。いや、だから君は何故私の表情がわかるんだ…
とりあえず女性キャラには一度は水着を着せておけって偉い人が言ってた。




