6話 護衛前日生活
まずはギルドに顔を出し、弁当配達と差し入れをする。
あとは昼過ぎまで、挨拶回りだ。
1週間ほど留守にするので、指名依頼出されても消化できないからだ。
レードと手分けして回ろうと提案したら拒否された。
「私とシルドで一組なんだから二人で回るのが当然。」
確かに、たまに一人でいると「相方はどうした」って声を掛けられるからわからないではない。
ま、一緒行くか。
レードが近道などを駆使してくれたので、予定より早く終わった。
皆が「頑張れよ」「気をつけてな」とエールを送ってくれてうれしかったな。
昼弁当を食べた後、ニャルムさんとともに厩舎へ向かう。
[アネさんアニさんが来なすった。]
[ねっ今日もあの軽い馬車引くの?]
昨日は整備した馬車を引いてもらったら『軽~い』て喜んでいた。
整備した甲斐があったというものだ。
「君たちには今日も頑張ってもらうけどその前にプレゼントだ」
取り出したのは薄緑のクッキー
[ナニナニ?おいしそう<パク!>おいしい!甘くてしょっぱくて草の味がする]
[なんだ?<パク!>うまいぞー]
馬クッキーは成功のようだ。
[もっとないの?]
[腹いっぱい食いたいぞ]
「次、ちゃんと働いたらね。」
「でも…」「ねぇ~」
困ったな。なつかせようと思って作った馬クッキーが好評すぎたようだ。
「サンダ!ガイ!シルドを困らせない!」
[[イエス!マム!]]
レードの事はちゃんと言うこと聞くんだよなぁ
ニャルムさん、よだれが…あれ、馬用クッキーだからね。
「二人とも、倉庫に行くよ。」
「「ラーサー!」」
手綱や直接触ってると馬の言ってることが判るのは不思議ではある。が…何だよ『ラーサー!』って?お前らはヒーローのサポートロボか?
どちらにしろ言うことを聞いてくれるのは助かる。
馬車を取り付けて、いざコウフィン商会へ。
街中で言うことを聞かなくなったら困るので御者はレードだ。
「仕事終わったらシルドのクッキー1枚ね」
[え~][いっぱい食べたい]
「拒否するならクッキーあげない」
[[イエス!マム!]]
レードは飴と鞭が上手だな。
到着したのはコウフィン商会裏手の馬車置き場だ。
「いらっしゃいませシルド様レード様ニャルム様。申し訳ありませんが馬車を調べさせていただいてもよろしいでしょうか。」
「?…いいですよ。」
ちゃんと修理できてるか確認したいのかな?
「積み込み作業の他、少々お話したいことも有りますのでこちらへ来ていただけないでしょうか。」
「わかりました。長くなりそうでしたら馬を外しておいてもらえますか。」
「承知しました。」
俺は馬車から降りてさっと馬たちに駆け寄り
「俺たちは少し話をしてくる。いい子で待ってろよ」
[[ラーサー]]
レードは手綱から手を放しているな。
[レードにはナイショだぞ]と『収納』から馬クッキーをさっと取り出し馬たちの口へ
[[アニさん!ありがとうございます!]]
「さっ、行こうか。」
<じーーーーーー>
レードがジト目だ。ばれているっポイ。
「昨日、レニーア様が来られて『馬車の軸受けを修理』したとお聞きしました。修理した冒険者様のお名前はお聞かせいただけませんでしたが、あれはシルド様が?」
「はい、俺が直しました。」
レニーア姉さん。秘密にしなくってもいいのに。
「もしや、昨日ご購入された魔導線はこの修理に?」
「あっそうだ、魔導線の代金はいくらになります。」
「そんな。当商会が販売した馬車を修理していただいたのです。お代はいりません。」
「結構余ってますし、高価なものでしょう。いただくわけには…」
「それはまた修理の際にお使いください。」
ただ繋いだだけなのに…。馬車の故障に責任を感じておられるんだな。
「そこまで言われるのでしたらいただいておきます。ただやはり心苦しいので、このレシピを渡しておきますので上手に使ってください。」
「このレシピは…」
「馬クッキーのレシピです。」
「?…馬にクッキーですか?」
「はい。馬は仕事する際の相棒です。相棒が頑張った後にこれをあげてねぎらってあげるととても喜びますよ。」
「確かによく走った後に砂糖をあげることはありますが。お菓子とは。」
「塩分補給のために塩も入れてます。あげすぎるのはいけませんが、特別なご褒美に一つあげてみてはと思い作ったものです。サンプルに一つ置いておきます。」
他の馬さんも喜んでくれるといいんだけど。
そうそう、一つ確認しておこう。
「今回購入する圧縮飼葉ですが、どのように作られているんですか?」
「企業秘密…というわけでもありません。普通に飼葉を圧縮して紐で括っただけです。」
「飼葉を熱処理はしていないのですか。」
「シルド様は面白いところに気が付かれますね。飼葉は熱処理はしておりませんが、サイロで発酵させる際、非常に高温となってまして虫などは一切いない状態になっております。」
虫がいないのか、ならば
「今回、圧縮飼葉3日分としてましたが6日分としてもらえます。もちろんビクセン支店でも3日分は購入します。後、シーツに使われるような布を3つ」
「往復分の飼葉をどうなさるのですか。」
「ちょっと思いついた事があるので。うまくいったらご報告しますよ。」
「承知いたしました。君、聞いていましたね。飼葉3日分、シーツ用の布3枚を追加です。」
「かしこまりました。」
「で、代金の方はいくらになります?」
「そうですね、食材2日分で金貨2枚、飼葉が金貨3枚、テント1式金貨1枚となります。」
[ニ"ャ!安すぎますニャ!]
「それだと相場の半分以下ではないのですか?それに追加の飼葉と布の代金が入っていないのでは?」
「いえいえ。シルド様のお話を元に儲けさせていただいてますのでそのお礼もかねております。追加の飼葉と布についてはその『思いついた事』のご報告に代えさせていただきます。」
いろいろとサービスしてもらって恐縮するなぁ。
「それでしたら、今回の依頼で気が付いたこと等も報告させていただくのはどうでしょう。俺の話が儲け話につながればよいのですが。」
「それは喜ばしい事です。シルド様のご報告は私共には宝の山でございます。ぜひともお願いします。」
やっぱり恐縮するなぁ。シスターのスィーツレシピで俺にできるものって他に何があったっけ?
「シルド様、馬車の点検および物資の積み込み終わりました。」
「では馬車の方に参りましょう。積み荷の確認をお願い致します。」
馬車にはすでに馬がつながれていた。
[アニさんいつでも行けるで][帰ったらクッキーちょうだい]
そう言ってるようだ。
「ちょっと待ってな。レード、御者を頼む。ニャルムさんは俺と荷の確認を。」
「まかせて」「わかりましたニャ」
ニャルムさんと伝票と突き合わせて確認してゆく。
うん、そろってる。
「それではいろいろ便宜いただきありがとうございます。帰ったらまた寄らせていただきます。」
「行ってらっしゃいませ、良い旅を」
「レード、出してくれ。」「わかった。」<パカ、パカ、パカ、パカ…>
俺たちはコウフィン商会を後にした。




