(3)
3日後、セレンは王との謁見を終えてベリルと共に城の通路を歩いていた。目覚めた日の夕方にはグレシルとベリルが現れ、セレンの目覚めを盛大に喜んでくれたが、結局デルフィラとは顔を合わさずじまいだ。ショノアの話ではデルフィラの熱はあの日からすっかり下がり、彼と共に復興作業の手伝いなどもしているらしいが、セレンの前には現れない。そしてセレンも会いに行かなかった。
彼自身、自分が彼女を前にしてどんな反応を見せてしまうのか怖くなってしまったのもある。ショノアに対しては今では元通り普通に接することができているのだから、デルフィラに対してもあの時だけだろうと思ってはいる。だがもし何かのきっかけであの時と同じ状態に陥ってしまったとしたら、今度こそ本当に彼女を傷付けてしまうことだろう。それが不安でならなかったのだ。
城では王がセレンの回復を心から喜んでくれた。前回のネメアを追い返した件に加えて、今回の件についても褒美は思いのままだと言われたが、あまりにも慣れないことで戸惑ってしまった。何しろ彼の時代では『褒美』とは与えられなくて当然のものだったからだ。
「しかし折角陛下が何でも下さると仰られていたというのに、お前ときたら…」
歩きながらベリルは大きな大きなため息を吐いた。彼女はどうやらセレンがグレシルを代表とした治療院を建ててほしいと申し出たのが気に入らないらしい。
「グレシルがいなければ私はこうして無事にいなかったかもしれません。彼の技術がもっと広く利用できるようになれば、あなたにもそして遠い未来にまでも役立つ薬が伝わっていくことでしょう」
「ああ、それは確かに賢明な選択だった。それは否定せん。だがお前には欲というものが無いのか? 高い身分を望めばあの王女とも誰に憚ることもなく会えただろうに…」
ここにいる間くらい好き勝手やりたいことをやれとベリルは言う。セレンは少なくともこの時代ではセリノアの血筋からは解放されているのだから、望めば上流貴族の養子にでも何でもなれた。そうなればデルフィラとの結婚も夢ではなかったはずだと愚痴る。
「ヘイムのことならば心配いりません。彼はデルフィラのことを身分のことで遠慮する必要はないと私に言ってくださっていますから」
「奴がそう言っても周りは納得せんのだ。お前もそれはよく知っているはずだろう?」
「……」
いくら本人同士が望み、その家族同士が認めても身分差の大きい結婚は他の貴族達の脅威の的になる。過去にはそれで突然権力を手にした人間が貴族や王族と争い、国が乱れた事例も少なくなかった。
「ですが身分のことが解決しても結局私は彼女とは…」
「わかっている。皆まで言うな…。だが限られた時間だからこそやれることは全てやっておいても良かったのではないか?」
「それは…彼女に申し訳ないでしょう?」
最後まで添い遂げられないとわかっていてデルフィラとこれ以上親密な関係になるというのは、彼女のこの時代での人生を邪魔してしまいはしないだろうか。
「だから最近あの王女と距離を空けているのか?」
「…それは…」
デルフィラが未来においてセレンの宿敵となっていることまでは、ベリルに話していない。そのためセレンが何故デルフィラを避けているのかは話すことはできずにいるのだ。だが答えあぐねているセレンを見かねてベリルが苦笑を漏らした。
「色々と事情があるのだろうから深くは聞かんがな…。だが今の時代、将来を約束し合った相手が明日には突然いなくなる…そんな事例など珍しくはない。だからこそ皆後悔のないように今を懸命に生きるのだ」
ベリルは突然足を止めるとセレンの前に回り込んできた。驚いたセレンも足を止める。
「お前にとってあの王女がその程度の存在であるならば何も言わん。だが迷っている内に時間はあっという間に過ぎるぞ? 大事だと思うなら決して離すな。お前には無駄にしている時間は少しも無いのだからな…!」
「!……」
ベリルの言葉を聞いた途端、頭の中の靄が切り払われたような気がした。自分は今まで何を恐れていたのだろうか。デルフィラを傷付けるのが怖いなどと、それは詭弁に過ぎない。本当はセレン自身が彼女に嫌われるのではないかと、それが怖かっただけだ。それをたった今、ベリルの言葉で思い知らされた。
「ネメアを倒す力が得られたことでミレノアルは近々ガレスへ打って出ることだろう。その時期はお前が完全に回復した後になるのは間違いない。だとしたら回復を待つ間、お前には時間があるということだ」
ベリルはそう言うとまた歩き始めた。それに付いて行きながらセレンは考える。今の内に、この時代にいる間にセレンがデルフィラにできることとは一体何だろう。確かに王子である彼女の『兄』が現れたことで、突然デルフィラが遠い存在のように感じた。やはり自分の身分では王女である彼女とは全く釣り合わない、そう思い知らされたような気がしたのだ。セレンはあとどれだけこの時代にいられるかもわからない。近い内に別れが来てしまうなら、今別れてしまった方がお互い傷も浅くて済む。そんな気弱な考えが頭を過った。
「そんな見た目では、完全回復まではかなりかかるだろう」
ベリルが指摘してきたのはセレンの髪と目の色だ。確かに目覚めた直後に見た自分の姿は随分といつもと違っていた。もう燻んでいる、などという次元の話ではなく、地の色が透けて見えていて、髪は緑色に目は紫にまで変化していたのだ。元の時代で死にかけた時でもここまで色の変化は見られなかった。
グレシルが言うにはその色の変化は『魔力』の消耗が原因だと言う。アルゴスが掛けた解呪の魔法とデルフィラの加護の魔法のせめぎ合いがセレンの魔力をかなりすり減らしてしまったらしい。怪我はすっかり完治し、体力もこの3日、起きて動いている内に元に戻ったようだ。だがそれでもグレシルは、魔力が復活し切るまで一切心身共に負担の掛かるようなことはするなとセレンに言った。無理をすればそれだけ戦いに復帰する日が先延ばしされるだけだと言われてしまえば、セレンとしても彼の言う通りにするしかない。
「かと言ってお前のことだから、騎士の仕事以外に何かしろと言ってもどうせわからんのだろう?」
「そ、そんなことはありませんよ? いくら何でも私にだって私用で動くことくらい…」
反論しかけてベリルの指摘通りに何をしたらいいのかわからない自分に気が付いた。自分の時代でも全ての時間を騎士の役目に割いてきたのだ。こんな限られた人間しか知り合いもいないような115年前では更にできることはなくなる。
「やはりな…。お前は娘に似た所があるからそうではないかと思った」
「御息女が?」
「上の子がな…。私と違って真面目なあの子は、休みの日でも剣の稽古だ何だと騎士の鑑のような生活ぶりだ。あれでは将来結婚できるかどうかも怪しい」
困りきった様子のベリルにセレンは思わず笑みを漏らした。確か彼女の長女ベリシアは同期の魔法騎士部隊の騎士と結婚している。当時にしてはかなり遅い結婚ではあったが、それでも一男一女の母となっている。セレンの時代には彼女達夫婦の仲睦まじさや劇的な大恋愛が語り継がれており、そんなベリシアが若い頃は全く恋愛など縁のないような女性だったとは驚きしかない。
「ご心配には及ばないと思いますよ?」
「……そうなのか? まあ、お前が言うなら黙って見ててやっても良いが…。だがむしろそれなら今の所、心配の種はお前一人ということか」
「……」
どうやら自分で自分の首を絞めてしまったようだ。セレンは何か他に話題はないかと考えを捻り出してみる。
「ああ、そうだ。一度“私の墓”を参らせてはもらえませんか?」
「お前の墓だと…?」
「ええ、そうです。…それしか“私が存在した”という証拠は無いのでしょう?」
セレンが言っているのは本物のリーンの墓のことだ。彼女のことだから、“存在しない”はずの部下であろうと粗末な扱いをするとは思えない。本物が死亡している限り、墓は存在するはずだ。『リーン』の名はセレンが名乗ってしまったがために、これからは完全に別人として語り継がれていくことになる。リーン自身が誰かもわからない人間の名なら気にしてはいられないが、彼は騎士として最後まで懸命に生きた人間だ。本当なら彼のことも正しく未来に伝えていくべき存在だったのだ。なのに彼の存在は歴史からも抹消される。
「“お前の墓”は我が一族の墓地に建ててある。心配するな。墓碑銘には“お前の”本名が記されているから、怪しむ者もおらんだろう」
「本名…」
まさか“リーン”の名でさえ仮の名だったと言うのだろうか。確かに諜報部隊では仮の名を何個も持つ者が少なくない。セレンも『ロギア』の名を長年使い続けた。
「墓は“お前”が最初に死んだとされた時に建てたものだ。実際に死んだらその墓に“お前”は入る。…それでも一度は見ておきたいと言うなら場所を教えるが…。少なくとも王女を伴って行くような場所ではないからな?」
「え…?」
ベリルに念を押されて、何故そんな話になるのだろうかと首を捻る。
「ん? 違うのか? 私はてっきりあの王女と何処に行くのか悩んで、候補地の一つにするつもりなのかと思っていたのだが…」
つまりベリルはセレンがデルフィラと一緒に行くのだと思い込んでいたようだ。
「い、いきなり彼女を連れ出せと言うのですか? さすがにそれは…。一度彼女と話し合ってからでないと」
「今更何を言っている? ここに来てすぐに2人だけで街に出かけただろうが。それと同じことではないか」
「⁈……」
あの日のベリルは先に王都に出発していた。セレン達が何処で何をしていたかなど知られずに済んだと思っていたが、しっかりと知られていたらしい。
「しかしあの時とは状況が…」
「意識してしまうと恥ずかしくなったか? それともお前の方から誘うのが難しいだけか? いくら戦いで目覚ましい功績を上げても、好きな女性1人喜ばせられんようでは人としては半人前だと言えよう。そんなことではあの王女のことも先が思いやられるな…」
「……」
デルフィラのことではつい先程も反省したばかりだ。もう余計なことばかり考えるのはやめにしよう。
「…そうですね。彼女には…お礼を言いたいこともたくさんあります。私のことをまだ嫌わずにいてくれるなら….、彼女の行きたい場所で伝えるのが良いかもしれません」
「あの王女がお前を嫌う日が来るとは到底思えんがな…。まあ、良い。行くならこれを持って行け」
ベリルは服のポケットから何かを取り出したかと思うと、それをセレンに向かって放り投げた。慌てて受け取ったそれは1枚の金貨だ。確かこの時代ではこの金貨1枚で最高級の軍馬が1頭買えるくらいの価値がある。
「これは…! こんな大金、頂くわけには…」
「金も持たずに2人で出歩くつもりか? どうせなら市場にでも行って何か買うなり食べるなりすると良い」
『市場』と聞いてセレンの頭の中にデルフィラの喜ぶ顔がすぐに思い浮かんだ。そう言えば彼女は活気のある市場を以前から見たがっていた。
「この金のことなら気にするな。こいつはこの国からお前宛ての礼だ。お前は王から頂いた褒美だと思えばいい」
「……しかし」
ベリルの口ぶりではこの金貨は騎士団に割り当てられている資金から出したということなのだろうが、それでも今の王都の情勢を思うと立場上簡単には受け取れない。
「良いか? これはあの王女のためでもあるのだ。彼女を喜ばせたいならおとなしく金貨を受け取れ。これは命令だ」
「ベリル様……」
そこまで言われてしまえばもう受け取るしかない。セレンは一度頭を下げると金貨を服の内ポケットにしまった。
「それでは今から行くのか? あの王女なら今日も復興作業を手伝ってくれているはずだ。城下で聞いて回ればすぐに見つかる」
「わかりました」
セレンはベリルに軽く敬礼すると、彼女から分かれて城門の方に歩き始める。3日ぶりに心が晴れやかになった気分だった。
一方同じ頃、デルフィラはベリルの予想通り城下で壊れた人家の修復を手伝っていた。彼女がこの作業を始めたのはセレンが目覚めたその翌日の昨日からだ。ショノアはもうずっと前から色々と作業を手伝っているので、色々な人から呼ばれてすぐにいなくなってしまう。しかし彼女も昨日一日で器用にいくつもの人家を直したからか、今日は人家の密集地に連れてこられた。
この辺りは1階が店になっており、2階や奥が住居となっている少し複雑な造りのものが多い。だがこの建物が無事だった頃はきっと賑やかな場所だったに違いない。その通りでは少し離れた場所でテントを立て、家の持ち主達が本来の商売を始めているらしい。そこではどんな様子なのか、ここからでは到底見えない場所を彼女は頭に思い描く。
「デルフィラ様、石をあそこに積み上げてもらえますか?」
しかしここでは呆けている時間はほとんどない。通りを眺めていると魔法具師の1人がすぐに次の指示を出してきた。
ここでのデルフィラの役割は城門前に置いてある四角く整えた無数の石を転移させ、家を建てる場所に整然と高く積み上げることだ。彼女は最初から一分の狂いもなく真っ直ぐに石を積み上げることができるが、ショノアの話では普通はそう上手くいかないらしい。昨日はこの辺りの家の残骸を一瞬で粉砕して更地にした。城門前に積み上げた四角く切り出した石を作ったのは全てショノアらしい。彼はそれによって何日もかかる工程を1人で1日で片付けた。そこに彼女が参戦することで、また王都の修繕作業は加速したのだそうだ。
「本当に助かります。我々がやっていたら2人がかりでも10日はかかってますよ?」
昨日からよく話しかけてくれる魔法具師はそう言って苦笑する。彼らの作った魔法具は十分優れた道具なのだが、これほど大規模な修繕や再建となると数が足りなくなるのだそうだ。新しく作るにも工房は壊れ、材料も精製できない。死者が出なかった分、人手はあるが、とにかく生身ではどうしようもないというのが現状らしい。
最初の頃は街を破壊したアルゴスの娘ということで良い顔はされないのではないかと恐れていたが、街の人々はあっさりと彼女を受け入れてくれた。それには先に作業に参加していたショノアの存在も大きかったようだ。人々はガレス人の魔法が何も破壊するだけでは終わらないことを、ショノアの仕事ぶりを見ていて知っていたのだ。
色々な場所で人々に感謝され、彼女自身も自分の新たな一面を見つけられて楽しかったこともある。おかげでセレンのことは昨日は地下に戻るまで一切考えずに済んだ。今日もこの調子で作業に打ち込もうと意気込んでいると、突然セレンの心を身近に感じた。
「⁈」
セレンはまだ遠くにいるらしいが、ここ最近感じる彼の心としては随分と強い。
「……」
まさかこれから別れを告げに来るつもりだろうか。怒りと喜びの心の違いは判別しにくい。どちらも強い力を伝えてくるからだ。
セレンが目覚めたあの日、すぐに会いに行きたい気持ちをぐっと堪えて彼女はベッドで寝ていた。セレンの心は目覚めてからは少し様子がおかしかった。大きい部屋同士であるためすぐ隣の部屋であっても声は聞こえてこない。何を話しているものか、セレンの様子を見たらすぐに戻ってくると言っていたヘイムもなかなか戻る様子はない。
セレンの心は以前のように彼女に向いていたかと思うとその心が徐々に離れていき、最後には叩き付けるような激しい拒絶の心だけを感じた。一体何があったのか、しばらくして戻ってきたヘイムはセレンの過去の話をしていただけだと彼女に伝えるだけだ。
セレンが未来のデルフィラを相当憎んでいることは最初から知っている。だから来るべき時が来たのだと、今までが恵まれていただけだったのだと思おうとした。だがそれでも彼に会うのは怖い。
「デルフィラ様、次はここをお願いします」
周りにいる魔法具師達はそんな彼女の不安など全くお構いなしに仕事を頼んでくる。それはそれで喜ぶべきなのか。でなければ彼女は近付いてくるセレンから逃げようとこの場を立ち去っていたかもしれない。もう成るように成れとばかりに作業を進めていると、周りの魔法具師達が急に作業をやめて、一方向に顔を向け始める。彼らの表情は皆どこか緊張気味だ。
セレンの心は既にすぐ近くで感じる。デルフィラは覚悟を決めて顔を上げた。すると思った通り、魔法具師達の向こうにセレンが立ち尽くしていた。随分探してくれたのか、珍しく彼の息が切れている。
「皆さん、ご苦労様です。差し入れを持って来ましたので、少し休憩してはいかがですか?」
セレンは瓶を何本も入れた籠を手に提げていた。あれは確か通りで最近売られ始めた人気のジュースだ。それを見た魔法具師達はようやく緊張を緩めてセレンに集まっていく。ショノアから聞いたが諜報部隊の騎士というものは割と誰からも恐れられる傾向にあるらしい。セレンもベリルも2人とも頼りになる良い人なのに、デルフィラにしてみれば不思議でしかない。だが今の彼女にとっては確かにセレンは怖い存在だ。デルフィラはセレンの視線から隠れるようにしながらも、その人の波に乗って彼に近付いた。
セレンは一人一人に瓶を手渡し、声を掛けていく。その言葉に皆嬉しそうに笑っている。自分もあんな風にセレンの言葉で笑えたら良いのに…。デルフィラは少し悲しくなりながらもセレンの前に立った。
「お疲れ様です。随分と早く復興が進んでいるのですね? 皆、あなたのおかげだと感謝していましたよ?」
「……初めてだったけど上手くできて良かったわ…。何もしてないと気が滅入ってしまうから、体を動かしていた方が良いかと思って…」
顔を伏せたままでセレンに答えれば、彼はデルフィラにもジュースの瓶を差し出した。
「気が滅入ってしまったのは…私のせいですか?」
デルフィラは思わず顔を上げた。
「そのことで…私に挽回する機会を頂けませんか? 少しの時間でも構いません」
「え?」
予想外の言葉に思わず聞き返す。すると周りの魔法具師達が何人も寄ってきて、口々に喧嘩でもしたのかと尋ねてくる。
「でもまだ作業が…」
「気にすることはないですよ? あなたのおかげで家の再建は凄まじい早さで進んでいます。今日くらい我々だけで進めたって、当初の予定より早く終わるのは間違いないですから」
魔法具師達にも背中を押され、デルフィラはようやくセレンと話す決心が付いた。
「…わかったわ。何処に連れて行ってくれるの?」
「この先に仮設ではありますが市場のような場所ができています。そこに行きませんか? ここに来るまでに少し見てきましたが、なかなかの盛況ぶりでしたよ」
「市場…!」
デルフィラの顔が思わず綻んだ。以前セレンと一緒に行った街ではただ悲しい気持ちになるばかりだったが、今回は違うと言う。しかもその場所は彼女もいつか見に行きたいと思っていた場所だ。
「行くわ! ぜひ連れて行って!」
彼女の反応にセレンも喜んでくれているようだ。彼は嬉しそうに頷くと、周りの人々にデルフィラを連れて行くことを一言詫びていく。
「では行きましょう」
セレンの声にデルフィラは彼の腕に飛び付いた。セレンは少し驚いたようだが、何も言わずに彼女の抱きつくままに任せてくれる。もう先程までの不安は少しも残っていなかった。




