16 男しか居ない三角関係
え~と、物語の途中ではありますが、
もう終了してもよろしいでしょうか?
もうカンベンして………ホンマにカンベンして…………。
そんな中、碇の視線を追って、葉瀬君も俺の方を見た。
そして全てを悟った様に、
「そう、なのか………………」と呟いた。
それに対して碇。
「うん、だから、葉瀬君の気持ちには、
答えられない………………ゴメン」
「いや、いいさ」
葉瀬君は一転して爽やかにそう言い、
立ち上がって俺の方に歩み寄ってきた。
そして俺の目の前に立ち、真っ直ぐに俺の目を見詰めてきた。
ここで彼が、
『僕も、あなたの事を好きになりました』
なんて言おうものなら、俺はそこの川に直ちに飛び込み、
入水自殺を図るところやったが、
葉瀬君はそうは言わず、代わりにこう言った。
「碇の事、大事にしてやってください」
それに対して、俺は真剣な口調で答えた。
「断る。君に譲る。出来る事なら東京に持って帰ってくれ」
しかしそれに対する葉瀬君の言葉はこうやった。
「いえ、余計な気は遣わないでください」
まっっっっっっったく遣ってないんやけど。
「あなたでしたら、碇と良い恋人同士になれると思います」
「わぁい、嬉しくないなぁ………」
「それじゃあ僕、東京に帰ります。色々、ありがとうございました」
葉瀬君はそう言い、碇の方をチラッと見やると、
涙を噛み締めるようにして、もと来た道を走り去っていった。
その後姿は何とも切なく淋しいものやった。
ただ、同情する気には全くなれなかった。
まあ、青春の形は人それぞれ違うっちゅう事かな。
俺はとりあえずそう納得し、碇の方へ向き直った。




