喧騒と。
今までにもらった贈り物たちは、皆それぞれ個性をもっていた。
すぐ怒る子もいれば、泣き虫な子もいた。
大きさもそれぞれで、大体が実際のモノの大きさと同じようだった。
多分、今回もらったクッキーもあの少女達と同じくらいの量なのだろう。
様々な性格の彼らだったが、皆一様に自己主張は激しかった。
どんなに気の弱い子でも、自分を使ってくれ、食べてくれと主張するのだ。
でも、私には人の形をしたものにジュースを注いだり、頭にかぶりついたりなんてできない。
彼らとは会話もできるし、触ることもできる。
大きさは違っても、私にとっては「人」だった。
いつだったか、鏡の男の子が使ってくれとうるさかったので、「君は鏡として役に立たない」と言ってしまったことがある。
そんなことがあった次の日、鏡は私の家から消えていた。
彼らは、無視していても一向に気にしないのに、「役に立たない」「いらない」という言葉には敏感なようだった。
そんなことが分かってきて、モノとして使えなくても彼らを大切にするようにしたら、彼らはいつの間にかモノの姿になることが分かってきた。
「ゆうさん! いつになったら食べてくれるんですか?」
「そうですわ。私は日持ちしますけど、きつねは腐ってしまいますわ。あぁ、手作りってかわいそう。」
「あんだとコラ。防腐剤臭いあんたよりはマシだっつーの。」
「…なんですって?」
「あー臭い臭い。換気しましょうよ、ゆうさん。」
大切にするといっても、複数の贈り物があると、どうにもうるさい。
彼女らと過ごすのも三日目。
毎日毎日、飽きもせず口喧嘩をしている。
「ちょっとは静かにしてくれないかなぁ。」
今日は休日。
私は算数の応用問題に挑戦していて、かれこれ三十分、頭を悩ませていた。
春から高学年になるのに、大丈夫かなぁ。
「あんた、どうせバレンタインデーの贈り物のくせに! バレンタインデーに渡すの忘れちゃって、ホワイトデーに持ち越しされたんだろ!」
きつね、その情報は聞きたくなかったかな。
ハートを見たとき、ホワイトデーに赤いのはおかしいな、とは思ってたけど。
二人の声がうるさくって、集中できない。
それに、朝からなんだか体がだるい。
私は少しイライラして、二人に何か言おうと思った。
でも、立ち上がった私の体はバランスを崩して、そのまま真横に倒れた。
あれ、おかしいな…。体が、思うように、動か…な…。
私が倒れた音が響いたのか、お母さんが部屋に入ってくるのが見えた。
でもすぐに、目の前が真っ白になって、私は意識を失った。