アダルバードの婚活-5
二人ではじめる日。の巻
これから挨拶だけじゃなくて、いろいろ話してみようよ。-屋敷の廊下でロアナに告げた日から約一年後の今日、俺とロアナは結婚する。
俺の予想通り、あのときロアナは立ち去るためだけに俺の申し出に賛成したようで、実際に俺がロアナに話しかけると驚いて固まっていた。
「まさか、本当にお互いのことを話すのですか?」驚くロアナに、「ロアナも承諾したじゃないか」と俺には珍しく押し切った。
ロアナは本が好きで、書物に埋もれて図書館の主になってもいいくらいだと思っていること。甘いものが好きで、一番のお気に入りは王国市場で売っているベリーたっぷりのバターケーキ。週末は王国市場で催されるノミの市で雑貨を選んだり、古本市で本を探していること・・・。
「私の話なんて、楽しいですか?」俺に話をするたびに、彼女は首をかしげる。
「楽しいよ。ロアナは俺の話を聞いていて楽しい?」そう聞くと、目を輝かせて「はい!アダルバード様の話はうさんくさいですけど、楽しいです」と微妙な返事をされてしまった。
お互いに話をしていくうちに、いつの間にか恋に落ちていた。
「アダル~。よかったなあ、結婚できて。それにしても若い奥方だな」ケネスが俺のところにやってきて冷やかす。
「まあね。」
なにせ、俺は彼女の兄弟よりも年上なのだ。ご両親とはそれなりに仲良くなったが、どうも彼女の兄弟(ロアナは上に兄・姉がいる末っ子だ。てっきり長女かと思っていた)とはいまだにギクシャクしている。
他にも世間的には「玉の輿」であるロアナに嫌がらせをした女がいたり、ちょっとしたケンカが長引いて破局の危機に陥ったり、彼女の家族に年齢差と家柄を理由に猛反対されたり(特に父と兄)・・・なんか、今までの恋愛よりいろいろあった・・・・でも、そのたびに二人の間は強固になった気がする。
最近になって、ようやくロアナも「アダルバード様」じゃなくて「アダル」になったし。
「アダル。にやけてんじゃないよ。気味が悪い」
ケネスに言われて、俺はあわてて表情を引き締めたのだった。
パーティーが無事終了し、俺とロアナは二人だけになった。
「ロアナ、おつかれさま」
「アダルもおつかれさまです」
「俺さ、これからよりいっそう健康に気をつけるから」
「急にどうしたの?」ロアナが不思議そうだ。
「長生きしろって、お義父さんに言われたんだ。娘をすぐに未亡人にしないようにって」
「もう!お父さんったら・・・ごめんなさい、父が変なことを言って」
「お義父さんは心配なんだよ。」
俺も、きみと早く別れてしまうのは嫌だから。
長い時間一緒にいられますように。
「ロアナ、幸せになろうね」
「はい。アダルバード様。」
「アダルって呼ぶようにって言っただろう?」
「えーっとお・・・その・・・き、緊張すると・・・アダルバード様のほうが呼びやすいです」
俺はちょっと苦笑いして、そのまま彼女を抱きしめた。
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婚活(?)が実ってよかったアダルバードでした。
この話で「きみに~」は完結済とさせていただきます。
読んでいただいてありがとうございました。