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バニーガール神に選ばれたので、学校がダンジョンになった  作者: 浦賀やまみち
第一章 崩壊の開始

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第05話 チュートリアル開始




『東の城門が突破されました。

 直ちに敵を迎撃してください。繰り返します……。』



 自動音声のような声が、校内放送から流れた。



『じゃあ、頑張ってねー』



 巨大なバニーガールが、笑顔で両手を振る。


 そして、そのまま消えた。

 空は、赤く染まったままだ。



「東! グラウンドか!」



 俺は舌打ちを一つ。

 即座に走り出す。



「や、やだっ……。」



 だが、ひなたがすがりつくように、俺の腕を掴んだ。

 今更ながら、バニーガールの狡猾さを思い知る。


 空に浮かぶ巨大な姿は、現代科学では到底説明できない。

 それだけで、異常事態だと分かる。


 一瞬だけ迷う。

 不安に瞳を揺らすひなたを見捨てられず、抱え上げた。



「キャっ!?」

「変な噂が流れて、あとで恨むなよ!」



 お姫様抱っこのまま、グラウンドへと駆け出した。




 ******




「おい、くっつきすぎだぞ?」

「だって、壁を登るなんて非常識だよ!」



 日頃、抑えていた力を解放する。

 校舎の壁を垂直に上り、屋上へと駆ける。



「真っ直ぐ進んだほうが早いだろ!

 次、跳ぶぞ!」



 屋上のフェンスを踏み台にする。

 その瞬間、鉄が軋むより先に体が跳ねた。


 跳躍の頂点。


 視界を遮るものが消えた。

 赤で照らされたグラウンドを眼下に眺めながら、落下していく。



「キャアアアアアアアアアアっ!?」



 グラウンドは混乱の渦だった。

 サッカーゴールの近く、十五人ほどの生徒がいる。



「なんだよ! なんだよ、これ!」

「馬鹿! 逃げるんだよ!」

「うわっ!?」



 そして、彼らに襲いかかっている緑色の小人。


 あのバニーガールは、ゴブリンと呼んでいた。

 俺の知っている特徴とも一致している。


 なら、ゴブリンは雑魚だ。


 数でも勝っている。

 落ち着いて対処すれば問題はない。



「お、お前、空手やってんだろ!」

「だ、だから、どうした!」

「ゴブリ!」

「す、鈴木ぃっ!?」



 しかし彼らは、平和な日本で暮らしていた学生に過ぎない。

 いきなり戦場に放り込まれても、動けるはずがない。


 まだ落下は終わらない。

 やけに長く感じる。もどかしい。



「うらうらっ! うちの学校で何やってやがる!」

「鉄ちゃん、突っ込め!」



 直管マフラーの爆音がグラウンドを裂いた。

 土煙を巻き上げながら、二人乗りのバイクが突っ込んでくる。


 うちの学校は、バイク通学を認めていない。

 あいつら、また部室棟の裏に隠していたらしい。


 教師の間では『問題児』とされる彼らだが、俺は花丸をやろう。

 同じ学校の生徒の危機に駆けつける時点で、十分だ。



「ドッカーーンっ!」

「ゴブブブブっ!?」



 バイクと衝突したゴブリンが、サッカーゴールに叩き込まれる。

 ゴブリンたちの足が止まる。


 すかさずバイクを運転する彼がエンジンを吹かす。



「うらうらっ! かかってこいよ!」

「ヒュー! 鉄ちゃん、格好いい!」



 ゴブリンたちは完全に怯んだ。


 百点満点だ。

 思わず苦笑が浮かびかけて、目を瞬きさせた。



【周防鉄二:書道三段】


【力:12】

【知恵:3】

【信仰心:8】

【生命力:8】

【素早さ:5】

【運の強さ:2】


【可能クラスチェンジ】


【ファイター】

【ナイト】



 バイクを運転する彼の隣に、不思議なウィンドウが浮かんでいた。



「……何だ、これ?」

「キャっ!?」



 だが、それを気にする間もなく、着地。

 グラウンドの砂を踏みしめ、衝撃を殺すように体勢を立て直す。


 すぐさま意識をゴブリンたちに戻す。


 しかし、次の踏み込みを考えたところで気づく。

 ひなたをお姫様抱っこしたままでは、動きが鈍る。



「よし、踊るとするか!」

「……えっ!?」



 腕の中から、ひなたを下ろす。


 両手を取り、向かい合う。

 そのまま、ステップを踏んでいく。



「安心しろ! リードしてやる!」

「キャーーーーっ!?」



 くるくると回る。

 回転の勢いを乗せた裏拳が、ゴブリンの顔面にめり込んだ。



「ゴブッブっ!?」



 勢いは止めない。

 ひなたの足が浮き、その身体が弧を描くように水平へ流れる。


 振り回すたび、ゴブリンたちが次々と吹き飛んだ。



「藤井! 助かるぜ!」

「おう、待たせたな!」

「きゅー……。先生、酷いよ」



 大勢は決した。

 残るゴブリンたちの中には、逃げ出すやつまで現れた。



「ダメだよー?」 



 あのバニーガールの声が響いた直後だった。

 逃げ出したゴブリンは、グラウンドの端で『見えない壁』に弾き返される。



「チュートリアルなんだから、ちゃんとやられ役しないとね!」



 思わず、赤い空を見上げる。

 だが、そこに姿はなかった。




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