消えない違和感と、白銀の視線
実習から戻っても、胸のざわつきは消えなかった。
(……塔で見た、あの子)
白銀の髪。
琥珀の瞳。
塔の影で、ただ静かに僕を見ていた少女。
名前も、所属も、何もかも不明。
でも――胸の奥の“さらさら”を沈めたのは、間違いなく彼女だった。
* * *
午後の授業は魔力感応の基礎だった。
アゼル先生の指示で胸に手を当て、目を閉じる。
すると、胸の中心で流れが広がる。
さら……さら……。
(これ……魔力の流れじゃない。前から聞こえる“あの音”だ)
呼吸が少し乱れたそのとき――
耳元を冷たい風がかすめた。
まるで誰かが近づいたみたいに。
(……え?)
目を開けると、窓の外で白い髪が揺れていた。
白銀の少女だ。
中庭に立ち、まるで授業中の教室の中を覗くように、
静かにこちらを見上げている。
(どうして……ここに)
視線が合った瞬間、胸の音が静まり返った。
さら……
……
本当に、音そのものが“止まった”。
(……まただ)
少女は首をかしげ、
僕の様子を探るように数秒だけ見つめていた。
そして、音もなく踵を返し、校舎の影へと消える。
「……レイル? 話聞いてるか?」
アッシュに肩を揺すられ、我に返る。
「ご、ごめん。ちょっと……」
「お前ほんとに大丈夫かよ」
大丈夫じゃない。
(あの子……絶対に、何か知ってる)
胸の奥が静かに疼く。
(……会わなきゃ。もう一度)
理由は分からない。
でも、確信だけがあった。




