一区切り
本作品はカクヨムにも投稿しています
すべてのテストが返却され、迫る夏休みに思いを馳せる放課後。
買い物をしてから家に帰ると、いつも通り安奈がリビングでくつろいでいる。
「ただいま」
「おかえりー……」
スマホを眺めて顔をこっちに向けないままの返事もいつも通り。
「千尋ー」
「ん?」
「アンタ今年の夏休みもまた短期バイトするわけ?」
「んー……どうしよっかな。久瀬さんとの約束もあるし、今年はしないかも」
「あー、仲直りできたんだ? よかったじゃん」
「うん、安奈にも迷惑かけたね」
久瀬さんとは無事仲直りして、夏休みにたくさん遊ぶ約束をした。
いつも通りのゲームだけじゃなくて、一緒にお出かけをしようとも。
少しでも予定を開けておくためにも、バイトはしなくていいと思ってる。
去年は欲しいものがあって、そのために短期バイトを入れまくったけど。
「ふーん、迷惑かけたって思ってるなら、わかってるでしょ?」
「……はい、あとできっちりアイスとかいろいろ献上させていただきます」
「ん」
そういえばSNSで有名な抹茶アイスの類が販売終了になるって流れてきたな。
買い込んでおこうかなぁ。
「そうだ、今年の夏休みは大河さんは帰ってくるの?」
「知らない。毎日のようにメッセージや写真は送られてくるけど」
「……相変わらずだね」
大河さんは安奈のお父さんで、世界中を飛び回っている写真家だ。
愛妻家にして親バカみたいで、現地で撮った写真やエピソードが連日送られてくるんだとか。
「そういうアンタのとこはどうなの?」
「うち? んー……まぁ、お盆くらいは帰ってくるんじゃない?」
僕のお父さんはインフラ関係の仕事をしていて、今は関西に単身赴任をしている。
大河さんほどじゃないとはいえ、かなり家を空けている期間は長い。
「あ、でも二学期の学園祭には顔出したいって言ってたよこの前」
「あー、それうちのお父さんも言ってた。別に特別なことやるわけじゃないのに」
安奈の言う通り、学園祭って言ってもなにか特別なことをやる予定はない。
今のところ。
まぁ普段は解放されてない学校に足を踏み入れて、子供たちがなにをしてるのかって見学できるイベントは他にないだろうし、それ自体が特別と言えば特別なのかもしれないけど。
「あ、ちょうどメッセージきた」
「大河さん?」
「ん。8月にこっち戻ってくるって。アンタの家と一緒にバーベキューでもどうだってさ」
「へぇ~いいじゃん」
「そ。じゃあアンタは乗り気って伝えとく。私はパスだけど」
相変わらずの面倒くさがり、だけじゃなくて一緒にいるところを見られないためか。
油断して久瀬さんにバレたばっかりだから、その辺りしっかり気を付けないと。
それで言ったら、安奈がこうして僕の家に来ること自体やっぱり相当リスキーなんだろうけど。
こればっかりはもう習慣だからなぁ。
「なに? ジッと見てきてキモいんだけど」
「はぁ、そういう物言いもなんだか久しぶりだね」
僕はため息を吐くと、夕飯の支度にとりかかるのだった。




