side奈津 なんか羨ましいな
◇◇◇◇◇
アタシはゴンのいた病室を出て外へと向かう。藜志と霧華の3人で。
「……?」
前方に目を向けると不自然な人物がいた。黒のスーツに身を纏った中年の男性。それならまだ不自然さはなかったと思う。だけど顔は酷く陰鬱としたものだった。
「今のなんだろうな?」
その中年が通り過ぎてから藜志が呟く。
「分からない。でも……あっ」
藜志の言葉に反応しながら、霧華が通り過ぎて行った中年の方に目を向けると声を上げた。
「どうかした?」
アタシは気になって霧華に問い掛ける。
「今の人、龍君の病室に入って行ったよ」
「――嘘っ」
アタシはそう言いながら後ろを振り向く。すると、ゴンの病室の扉が閉まる方向に動いていた。今の人はゴンの知り合いだったんだ。
「どういう知り合いかしら?」
「そうね……」
アタシと霧華が疑問を口にして考えようとすると
「詮索はしてやんな。とっとと帰るぞ」
と藜志が口を挟む。確かにこんな事を考えるのは失礼だよね。アタシはそう思いながら病院から外へ出る。
「うっ寒い……」
外に出ると冷たい風が容赦なくアタシの体温を奪おうとしてくる。この時期はしょうがないけど、もう少し暖かくならないかな。
「寒いからとっとと駅に向かうぞ」
そう言って、藜志が先を歩く。あたしの家は鷹明駅から電車に乗って駅を2つ超えた先にある。
「そういえば、霧華って家どこ?」
「私? 私の家は……」
「俺と同じ……樋山だよ」
答えようとする霧華の言葉を遮って藜志が答える。樋山……。アタシの駅の1つ前の場所だ。そっか。藜志と霧華は小学校からの付き合いだもんね。住んでる所も同じっていう訳か。
「なんか羨ましいな」
「……うっ」
アタシがニヤニヤしながら霧華を見て言うと、恥ずかしいのか霧華はアタシと目が合うとすぐに逸らした。可愛い。
――藜志はアタシを変えてくれたの。
ふと霧華のあの時の言葉が蘇った。霧華と藜志。2人の出会いを知りたいとは思うけど何故か躊躇われる。
「あ、わりぃ」
「ううん。気にしないで」
まただ。ゴンが入院してからこの2人とよく一緒に行動するようになって気がついた。霧華と藜志はお互い必要以上に気を遣い合っていた。最初仲がいいからかと思ってたけど、にしては気まずい空気が2人の間で流れていた。まぁ今日話して霧華が藜志の事凄い好きって事は分かったけど。
ならなんで気まずい空気が流れているのか、凄く気になる。そしてずっと気になってるけど、教えてくれないことがある。
――いつから藜志があんなふうになったのか|?
藜志があんなヤンキーになったのには理由があるはず。不良の漫画を読んでヤンキーに憧れてなった人もいるみたいだけど、藜志はそんな理由でなるような子じゃない。泣き虫だけどそれと同じ位優しい子だって知ってるから。今度霧華に聞いてみよう。そう思いながらアタシ達は駅から電車に乗って帰るのだった。




