side奈津 アタシから送っちゃっても良いのかな?
◇◇◇◇◇
「ただいまカンナ〜」
「ワンッ」
アタシは鷹明高校から帰宅すると、リビングに行きカンナの頭に手を置いてサラサラの毛並みを撫でる。気持ちいい。カンナも気持ち良さそうに「クゥ~ン」と鳴きながら目を細めてる。可愛い。
でも今日はやる事があるんだ。アタシはカンナの頭から手を離すと立ち上がる。カンナが「クゥ~ン」と甘えた声を出す。まるで『もう終わり?』って問い掛けてるよう。
「うっ。ごめんねカンナ。アタシ今日やる事があるから」
カンナの誘惑(?)を振り切ってアタシは自分の部屋へと向かう。扉を開けるとそこにはピンク色の壁。右側に勉強机そしてその近くに小さめのクッション、それにテディベアの大きめのぬいぐるみ。左側にシングルベッドと割と女の子感満載の部屋が広がっている。
実はアタシは周りからクールだとか言われてるけど、結構な少女趣味だったりする。だから可愛い小物や洋服、ぬいぐるみが大好き。これはあんまり恥ずかしくて人には教えられない。言う相手もいないけど。と、そんな事より
「……手に入っちゃった」
アタシはスマホからLINを起動して友だち一覧に今日追加されたある人物の項目を眺める。そこには蓮本龍と書かれている。
「〜〜〜っっっ」
アタシは声にならない声を上げる。それ程嬉しい。だってここに来てようやく、連絡先を得たのだから。アタシはベッドにダイブする。バフッという音がアタシの耳に届くと、マットレスの柔らかな感触が手足お腹に伝わってくる。アタシは再度スマホを覗き込む。
「――アタシから送っちゃっても良いのかな?」
なんかいきなり今日送って変な奴って思われたりしない。ウザがられたりとか。いやまぁ学校でいつもあんなに絡んでるんだから、それは問題ないわね。うん。
「――でもなんて打てばいいか分からないよ〜っ」
アタシはマットレスに顔を埋めると手足をバタバタさせる。マットレスがアタシの手足の衝撃を吸収する。はぁ。よく考えたらアタシ、男子の友達なんて居たことないじゃん。アタシのスマホに入ってる男の連絡先なんてパパくらいだし。なんか自分で言ってて虚しい。
「っていうか、何を話せばいいのかな?」
考えてみればゴンとアタシに共通点が全くない。共通点が無いって事は会話の糸口が全く無いも同然。そうだっ。先ずは趣味を聞こうっ。
「ってそんなの明日会って聞けばいいじゃないっ」
バカなのっ。死ぬのっ。大体そんな事をLINで聞かれてもゴンが困るだけじゃないっ。
「はぁ〜。ゴンの声が聞きたい」
あの自信なさげな声が聞きたい。あの声を聞くと構ってあげたくなっちゃうアタシって変なのかな? 周りからしたら変かもしれない。だっていつものアタシは誰に対しても冷たく、決して人を寄せ付けないようにしてた。香那とか聖羅は勝手に寄り添ってたけど。あんなのはただのステータス目的。校内1の人気女子と友達っていう肩書きが欲しかっただけ。
「取り敢えず、こう打っておこうかな?」
アタシはゴンの名前が書かれた欄をタップしてトークボタンをプッシュする。そこから数十分。必死にああでもないこうでもないと文面を考えてようやく出来上がる。
こんばんは。早速連絡しちゃった♡
今日はなにも情報入らなかったけど
めげずに明日また頑張ろう。ファイ
トー(^^)/ じゃあ(つ∀-)オヤスミー
「〜〜〜っっっ」
その文面を見てアタシは身悶えする。自分で打ってて途中から恥ずかしくなったけど、出来上がった文章を、読み返しても恥ずかしい。大体、ハートマークはちょっとやり過ぎかな?
というか、顔文字とかも馴れ馴れしすぎてない。大丈夫? アタシは不安な気持ちになりながら、震える指を送信ボタンに近付ける。ドクンドクンと鼓動の音が鳴り響く。
ヤバい。LINを送るのってこんなに緊張して怖いものだっけ? そんな事を思いながらも指はどんどん、送信ボタンに近付く。あともう少し。あともう少しで。シュッとスマホから音が鳴り響く。それはLINの送信ボタンを押した時に聞こえる音。つまり、送信ボタンを押したんだアタシは……。
「はぁ〜」
アタシは肺に溜まった酸素を一気に吐き出す。緊張した〜。アタシはベッドから起き上がって、机の近くに置いてある大きめのテディベアを抱いてまたベッドに横たわる。
「返信来るかなっ?」
LINのやり取りなのにこんなに胸がトキメクものなんだな。
「いけないっ。カンナの散歩行かないとっ」
アタシはそう言ってベッドから起き上がり、部屋を後にした。




