198 夢魔アルプ
◆◆◆
「クククッ。あの夢淫魔、また出てくれたわね。あいつの後だと簡単に吸精できるから楽でいいのよね。ククッ、そろそろ頃合いかしらね。」
やっぱりいつもの通りこの男もまだまだ元気ね。
根こそぎ吸い取っちゃえばいいのに。
人間なんていくらでも湧いて出るんだから、一人二人いなくなったって誰も気にしないのだから。
しかもあいつが籠絡した後だから簡単に落とせるし、楽な仕事だわ。
サクッと吸いきってさっさと帰ろーっと。
「ハァハァハァ」
「クククッ、いいわぁ。この子すごく濃くていくらでも吸えちゃうわぁ。あっ、しかも結構上手だわ。」
「ウッ」
「いいわぁ、もっとよ!もっと!もっともっと!」
◆◆◆
「いいわぁ、もっとよ!もっと!もっともっと!あああぁぁぁ!!」
「・・・。これ、傍から見てるとすごいシュールだな。」
「そうねー。バカみたい。きゃははは!」
「お前も似たようなもんだったけどな。」
「え!?ウソっ!?ウソよねっ!?ご主人サマも一緒だったわよね!?ねっ!?」
「さぁどうだったかな?」
「ええぇぇ!!?イヤャャャ!!バカみたいー!!!」
こいつも面白いやつだな。
今俺の目の前には床でビクンビクンと喘いでいる悪魔女がいた。
——少し前
「うふふふっ、あら?誰かしら?」
「ん?どうかしたのか?」
「折角これからお楽しみだったのに。」
イーリンが不機嫌そうにこぼした。
「誰かがご主人サマの夢に入って来たみたい。この町にワタシ以外の夢魔が居たのかしら?でもなんでここに?」
どうやら今度こそ犯人のご登場のようだ。
わざわざ俺をターゲットにした理由は分からないが、イーリンの様にいい匂いがしたとかだろうか。
俺の部屋(夢の中)に入って来たのはまたも見たことの無い女だった。
たぶん女だ。
顔が馬っぽいが身体付きは完全に女性のそれだから女だと思う。
美的感覚がどうかしている。
「クククッ。あらイイ男ね。あなたはどれだけ私の糧になってくれるかしら?クククッ。」
うわぁ。怖っ。
馬面が超怖い。
「あー!アルプだ!またワタシの獲物横取りしてたのね!」
「知り合いか?」
「商売敵!ワタシが食べた人をワタシの後に食べてるらしいの。直接会ったのは初めてだけど、気をつけるようにって仲間の夢淫魔に教えてもらったことがあるの!ワタシたちのルールを無視して好き勝手なことしてる迷惑なやつらよ。」
「何でわざわざ食べ残しを漁るような真似を・・・。」
「知らないけど、あいつらが食べた後は人間の人はみんな死んじゃうの!ワタシのお気に入りも何人か居なくなってたのあいつのせいだったのね!キー!」
「さぁ、もっと愉しみましょう?クククッ、ほらぁどう?イイでしょう?クククククッ!」
「ねえご主人サマ、こいつ何見てるのかな?」
「イーリンの幻術と似たような感じだよ。見たい夢を見せてるんだ。たぶん、力の抜けた俺を組み敷いて無理矢理精気を吸っている夢でも見てるんだろう。」
「キャハハ!いい気味ー!」
俺の夢の中での支配権はスキル曰く"誰にも負けない"らしい。
このアルプという夢魔が俺の夢の中に入った瞬間に幻にかけた。
こいつはイーリンが見せていた幻の続きを見せて精気を漁るのがやり方だったみたいだが、逆に俺の見せる幻に囚われてしまって醜態を晒している。
欲望が駄々漏れで吸い尽くしてあげるわとか言ってる。
限りなく黒っぽいけど、ちゃんと言質を取ってから、捕まえて衛兵に引き渡そう。
「あれ?でもこいつの本体は何処にいるんだろ?」
「ワタシが捕まえてこようか?」
「え、いいのか?」
「いいわよ!こいつキライだし。ご主人サマの役に立ちたいし!何だか今すごく調子がいいのよ!これもご主人サマのおかげかしら?うふふふっ!行ってきまーす!」
元気に出て行ったけど大丈夫かな?
夢魔ができる事って幻を見せるくらいしか思いつかないんだけど、現実でも何かできるのだろうか?
まあ精神体が今目の前に転がったままだから問題ないだろうけど。
「あれ?止まった。え、死んだ?」
ビクビクしていた馬面が突然その動きを止めて驚いた。
「たっだいまー!」
「え!?」
「こいつの本体捕まえたよ!ちょーっと強めに催眠かけたから丸一日くらいは起きないと思うよ!どう?ワタシ役に立つでしょ!ね?うふふふっ!」
あっという間の出来事で驚いたが、深い催眠にかけたから目の前のが止まったらしい。
言っている間に目の前のアルプが薄くなっていき消えた。
イーリンの言葉を信じるなら催眠で完全に捕らえたらしい。
「うふふふっ!ねぇご主人サマ?ワタシご褒美が欲しいなぁ?」
「え?ご褒美?」
「もぅー、分かってるくせにー。ねぇいいでしょう?うふふふっ!」
イーリンがピンクのリップを湿らせて近づいてくる。
その後のことは語らない。
語らないぞ!
語らないったら語らない!
「うふふふっ!」
名前:夢淫魔
真名:イーリン・ラ・ストラトラス
レベル:33
性別:女
年齢:■■歳(ダメ絶対!)
種族:魔人族悪魔種
職業:ウェイトレス、奴隷
属性:闇
所有者:ソーマ
罪科:なし
称号:なし
スキル:催眠、魅了、変化
説明:人の夢に入り込み、幻を見せて精気を漁る魔人族上位悪魔種である夢淫魔。
種族特性として強い催眠、幻術、魅了の力があり、高い魔力と魔法的才能を持つが、志向の偏りも強いため、その能力が十分に発揮されないことが多いが本人たちは気にしない。
享楽主義が多い種族の中でも人の中で暮らしている変わり者。
悪魔種にとって真の名は非常に重要なもので主として認めた者にしか明かさない。
真名を呼ばれると強制的に隷属状態になる。
主が死ぬか解除するまで、主の上書きは出来ない。
名前:アルプ
真名:XXXXXXX(知りたくない)
レベル:21
性別:女
年齢:246歳
種族:魔人族悪魔種
職業:なし
属性:闇
罪科:殺人
称号:なし
スキル:催眠、変化
説明:人の夢に入り込み、幻を見せて精気を漁る魔人族下級悪魔種である夢魔。
変化が得意で犬や、猫など様々なものに姿を変える。
幻術の力は夢魔の中では弱く、軽い衝撃で解けてしまう。
その為、搾精の力も弱い。
翌朝、俺のベッドに潜り込もうとしたイチが潜り込んでいたイーリンに遭遇してひと騒動あった後、捕らえていたアルプを衛兵に引き渡した。
フラムウェル王国内には魔人族の者は少ないながらも暮らしているらしく、その待遇は問題を起こさなければ他の種族と同じだそうだ。
ただし、夢魔の特性として闇に潜って移動が出来るらしいので、魔封じか隷属が必要だそうで、魔封じの首輪を嵌められていた。
どうやら魔道具らしく、魔法のコードが見当たらなかったので、魔法道具と違って自作するのは無理そうだ。
残念だ。
話すとややこしくなりそうだったから、イーリンのことは黙っておいた。
イーリンはこの町の酒場でウェイトレスをして暮らしていたらしい。
夢淫魔なのに至極真っ当に町人をしていたようだ。
普通の食事だけではどうしても足りなくなる精気をウェイトレスをしながら酔ったお客から少しずつ吸っていて、それでも足りなくなる分を夢の中で集めていたそうだ。
先輩夢淫魔から吸い過ぎると目を付けられて追われるからと、身体に害が無い程度しか吸精しないようにしていたらしい。
そうする事で吸精された方はいい夢が見れた程度にしか思わないため、吸精が露見することが無いというカラクリだ。
処世術がしっかりしている所に驚くべきか、横の繋がりがしっかりしている所に驚くべきか。
黙って吸精しているため、悪質と言えなくもないが、害悪とまでは言えない。
いい夢が見られる宿屋とかで売り出せばいいんじゃないだろうか。
イーリンに言ったら、"ワタシはもうご主人サマの精気じゃないとイヤ"と返された。
喜ぶ所なのだろうか?それとも食料と見られたことに憤慨すべきか悩みどころだ。
イーリンは、働いていた酒場では愛想が良く可愛らしいことでかなりの人気者だったようだ。
吸精のためにスキンシップが必然的に多くなるイーリンは多くの男たちを惑わし、貢がせて来たようだ。
貢ぐといっても多くの注文を取って売り上げに貢献していたということだったが。
酒場からも客たちからも辞めると聞いてかなり惜しまれていた。
辞める理由が"ご主人サマ"が出来たからと聞いた男達からは憎悪の視線を向けられた。
俺のいないところでやって欲しかったが、イーリンに言ったらご主人サマを自慢したくて仕方なかったの、と可愛く言われて許しそうになった。
取り敢えず拳骨を落としておいた。
暮らしていただけあって町のことに詳しいイーリンに案内してもらってサルウェルを観光したり、トリスタでは中々お目にかかれ無いものを買い漁ったりと充実した休暇が取れた。
ドーラがイーリン案内でまた変な人形を買って来ていた。
肌の感触の再現がすごいとか言って興奮していた。
変な素材が使われていない事を祈るばかりだ。




