123 遭遇
石碑を見つけてから、しばらくは何事も無く進み無事に陣地に到着した。
そこそこの強さの魔物が襲って来たような来てないような気もするが気にしない。
また魔物肉の在庫が増えた。
陣地は数日前とほとんど変わっていなかった。
魔物に荒らされた形跡も殆ど無い。
食料などは荒らされててもおかしくないのに特に変化が見られなかった。
「どこから手を付けますか?」
「・・・。」
「?どうしました?」
「シロ。なんか居ない?」
「にゃ。」
黙って武器を手にするゼンとイチ。
話が早くて助かる。
「たぶん気配を消すのが上手いんだ。でも居るよ。右後ろ200m。」
シロの索敵範囲はかなり広い。
だが、こいつはその範囲内にいる。
なのにシロも言われるまで気づかなかったようだ。
検索様々である。
「物資はどうしますか?」
「荒らされたら嫌だから、先にまるっと回収してしまおう。」
俺はエナジーウィップの形状を布の様な薄く大きなものにして陣地を覆うように広げていく。
もうウィップじゃないが、そういう魔法なので仕方ない。
全ての物資に接続。
一気に回収。
シュン
一度に大量の物が無くなったことで、周囲の景色が一変する。
流石に動揺したのか気配が揺らいで俺でも感知できた。
そして、畳み掛ける!
クロが急反転して、敵に突撃をする。
俺はそのままみんなに強化の魔法をかける。
ゼンとイチはクロから降りて、自らの足で急加速。
闘気も相まって後方に土煙を上げるほどの速度だ。
10秒とかからず、接敵する。
出合い頭のクロの突撃は躱されてしまった。
流石に素早い。
敵はブラッドタイガーだ!
名前:ブラッドタイガー
レベル:44
種族:大虎種
属性:風
スキル:咆哮、爪牙
説明:ブラッドタイガーの成体。
ブラッドを冠する様に血を好み、遊びで獲物を殺すこともある凶暴凶悪なタイガー種。
多くの血を吸って赤黒くなった毛並みは耐魔法特性が高く、対物防御能力も高い。
巨体の割りに俊敏で小回りが利き、気配を殺すのが上手いハンターでもある。
顔が怖い。
思っていたよりもレベルがかなり高い。
俺たちのレベルは30前後。
ステータスのブーストがあると言ってもこのレベル差ではあちらの方が地力は上だ。
虎だし。
なので、装備と魔法と連携で対応しなければならない。
魔法があまり利かないみたいだけど、どれほどのものか。
あと顔が怖い。
戦端は既に開かれている。
クロの突撃を躱したブラッドタイガーはすぐ後ろを付いて来ていたシロの火炎弾に曝された。
直撃はしなかったものの火炎弾は着弾と同時に爆発し、一瞬視界を奪う。
そこに切り込むのはゼンだ。
双剣に闘気を纏い、斬りつける。
初ヒットはゼンだ。
だが、浅い。
傷付けられたブラッドタイガーはゼンに狙いを定め、飛び掛かってきた。
いけるか?
飛び掛かるブラッドタイガーの横から突然イチが現れて、ハンマーを叩きつける。
「グガァー!!」
「よしっ!」
「やー!!」
追い打ちをかけるようにゼンが飛び込み、更に斬り刻む。
「グガッ!!グガゥウー」
三度斬りつけようとしたところでブラッドタイガーは大きく飛び退き、悔しそうに唸った。
きれいに決まったと思ったイチとシロの連携はあと少しのところでずらされていたらしい。
イチが突然現れた絡繰りはシロの【陽炎】だ。
少しずつ使いこなせて来ている陽炎でイチを見えなくしていたのだ。
タネがわかっても周囲の気配にかなり気を使わないと気付けない。
戦闘中に気を配るのにも限界がある。
「グガァァアーー!!」
今度はブラッドタイガーから来た。
イチを狙い、飛び掛かる。
横からゼンが飛び出して斬りつけるも、今度は予測していたのかそれを躱した。
躱した先に次は俺だ。
闘気を纏った剣で斬りつける。
ゼンの付けた傷よりも大きく切り裂け、鮮血が舞った。
「グガゥウ!」
「ちっ!」
ブラッドタイガーは爪を俺に向かって振り下ろす。
俺は咄嗟に飛び退いたが、剣に少し掠ってしまった。
ブラッドタイガーの爪が掠った剣は見事に両断され、刀身が消えていた。
恐ろしい切れ味だ。
あの爪はヤバい。
「ブルファー!!」
「グガァァア!!」
クロとブラッドタイガーがぶつかり合う。
クロの魔力角とブラッドタイガーの爪が切り結び、激しい火花が飛び散る。
魔力の残滓が線を引き、激しい闘気が光を発する。
クロの突撃に合わせてゼンとイチも攻防に加わって激しさを増していく。
ゼン達からブラッドタイガーが離れたタイミングを見計らって、俺とシロの遠距離攻撃の弾幕だ。
マルチ・ラピッド・エアショットと火炎弾の弾幕がブラッドタイガーを襲う。
「グガァァー!!」
弾幕の直撃を受けながら、ブラッドタイガーは一際大きく吠えた。
「ぐっ!」
ブラッドタイガーの咆哮と共にビリビリと衝撃波が周囲を襲った。
これが【咆哮】スキルなのかもしれない。
近くにいたゼンとイチは軽く眩暈を起こし、復帰に時間がかかりそうだ。
その隙をブラッドタイガーが待ってくれる訳も無く襲い掛かってくる。
ブラッドタイガーは赤い光を纏っていた。
闘気とは少し違うようだが、あまりよろしくは無さそうだ。
「クロ!シロ!フォロー!」
「ブルファー!!」
「にゃーー!!!」
シロは鳴き声と共に無数の炎の矢を生み出し、ブラッドタイガーに殺到させる。
それに続いてクロの突撃だ。
展開した魔力角は通常時の倍の大きさの2倍ホーンだ。
細かな制御は難しいが、切り替えくらいなら何とか出来るおかげで、2段階変形角になっている。
2倍ホーンは消費魔力も2倍、強度も大きさも2倍だ。
ゼンとイチに向かっていたブラッドタイガーをクロが押し留めることに成功した。
「グガァァー!!!」
ブラッドタイガーはクロの魔力角が視認出来ているかのように受け止め、躱している。
クロだけでは抜かれそうだ。
「俺もいるがな!」
俺も魔力剣で応戦する。
危機感知能力が高いのか、ほとんど躱されてしまう。
それでも少しずつ躱しきれずに当たる斬撃が出てきた。
たまらず後ろに下がるとすかさずシロの火炎弾が飛び、バランスを崩してしまう。
それでもブラッドタイガーは怯まず、咆哮を上げ、今度はこちらが吹き飛ばされる。
「グガァァー!!」
「ぐっ!!」
魔力剣の切れ味は鋼の剣とは比べ物にならないはずだが、赤い光を纏ったブラッドタイガーには致命傷を与えられていない。
今度は魔力剣に闘気も纏って斬りつける。
「おぉらよっと!」
「グガァウ!!」
ブラッドタイガーはやはり上手く避ける。
明らかに見えているらしい。
離れた位置では魔力剣を当てるのは難しいのだが、練習の賜物で中々上手く操作できている。
手首の微妙な切り返し、跳ね上げて、下ろす。
微妙な操作でブラッドタイガーを翻弄する。
闘気を纏うことで徐々に大きな傷が付いてきたが、それでも致命傷には程遠そうだ。
魔力剣で倒せないとなると事態はかなり深刻だ。
早急に次の手を開発しなくては。
細かく切り返すことでブラッドタイガーを翻弄しつつ追い込む。
「クロ!」
「ブルファー!!」
クロが再び突撃する。
「グガァァ!!」
それを爪で受け止め、弾き返すブラッドタイガー。
直後、激しい轟音が響き渡った。
ゴロゴロドッカーン!
轟音と稲光と共に姿を現したのはイチだ。
つまりテンドンである。
陽炎によって姿を隠したイチが必殺の一撃をお見舞いしたのだ。
イチの一撃は見事にブラッドタイガーの頭に直撃し、頭蓋骨を粉砕して地面にめり込ませていた。
「よしっ!」




