助け舟
これからは毎週木曜日更新予定です。
パン、パン、パンと音が聞こえる。
そちらを振り返ると、和服とも洋服とも言えない赤紫色の服を着た男が手を叩いていた。
「ケンシンさん、お見事です」
「あっ、モトヤさん!」
ケンシンが笑顔で手を振り答える
「だれ?」
マーリーがいぶかしむ様な顔でケンシンにたずねる。
「ああ、紹介するよ!この人はモトヤさん、俺がハイマツ行きの船が無くて困っている時に文字通り助け舟を出してくれた人なんだ」
笑顔で、その男の横にいき得意気に話すケンシン
「ええ、そうなんです。たまたま商売で自分の船を持っていまして、セントラルに買い付けに訪れて居ましてね」
「小型だけど、すごい豪華で速い舟なんだぜ、途中でカマタマーレにも寄ってくれたしな」
「ふーん、でも何か怪しくない?」
「おい!何を失礼な事を言ってるんだよ!この人が乗せてくれなかったら俺はハイマツを助けるのにも間に合わなかったんだぞ」
マーリーにかけよりヘッドロックをするケンシン。
「いや、だって…」
苦しそうに呻くマーリー
「ハハハ、そちらの眼鏡をかけた方が言うことも最もですよ」
と自分の顔に被っているお面に手をかけて
「だって、こんなお面をした男が急に出てきたらね!ハハハ」
と、くぐもった声で言いながら笑った。
そう、モトヤと名乗る男は白い狐のお面をしていたのだ。
「せめて、そのお面をとってもらえる?」
「おい!失礼だろ!」
ヘッドロックする力を強めるケンシン、しかしマーリーはヘッドロックから抜け出し、モトヤと名乗る男を指差しながら言った。
「いや、でも!怪しすぎるだろ?港にいた船が急に出れなくなって、この人の船だけが無事で送り届けてくれるなんてさ」
「それはテロ事件があって船が全部破壊されてて、たまたま着たばかりだったモトヤさんの船は無事で…確かに、いや…」
少し困ってしまうケンシン
そう言われると、いや言われなくても怪しすぎるし、知らない人についてっては行けない!
異世界でも現代日本でも変わらない常識で、マーリーの言うとおりだった。
「分かりました。ケンシンさん大丈夫ですよ!では」
と言ってモトヤが白い狐の面をとると、そこには…
顔がなかった!
正確にはあったのだが、顔の皮膚がはがれて肉が剥き出しなっていたのだ。
絶句するケンシンとマーリー
「す、すまない…」
下を向き気まずそうに謝るマーリー
モトヤは素早く、お面を被り直すとくぐもった声で
「ハハハ、良いんですよ。この顔は以前旅をしている時に海賊に捕まってしまい、剥がされてしまいましてね…幸い家が裕福だった物ですから、送られてきた「顔」を見て慌てて身代金を払った親のお陰で命だけは助かったと言う訳です」
「そ、そんな事が…すみません」と謝るケンシン
「いえ、大丈夫ですよ。」
と、お面の中は分からないが恐らくは笑いながら言うと
「それに貴方達は私にとっても恩人と言って良いかもしれませんしね」
と呟くモトヤ
「それは、どういう…」とマーリーが訪ねると
「それはね、その時の海賊と言うのが黒髭一味だからです」
と、さっきまでの明るい声とは違う、暗い低い声で言った。




