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1、少女と全力疾走
走る
走る
走る
少女はひたすら走った。
ひゅう、ひゅう、と喉の奥に勢いよく空気が流れる音がする。
口の中には苦い鉄の味が広がる。
苦しかった。
痛かった。
だけど、少女は走り続けた。
真っ黒な服を着て、
スカートをなびかせて、
脇には遺影を抱えて。
ひたすら走った。
どこに行ったらいいかはわからないが、とにかく走った。
走ることしかできなかった。
走った先に少女に何があるのか。
少女にすらわからない。
ただ、脇に抱える遺影だけはずっと笑顔のままだった。
【未知との遭遇】