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留守番中の妹が兄のバ美肉アバターで配信を始めた結果、裏で最強の大人たちが命がけの防衛戦を繰り広げていた件  作者: マコPON


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第11話 お姫様と三闘神のFPS! ~平和なお散歩のハズが、猛者と遭遇!?~

第11話です! お読みいただきありがとうございます。

前回、お兄ちゃんの「厨二病ノート」の朗読により、チャット欄は怒りと笑いの渦に包まれました。

しかし、お留守番配信はまだまだ終わりません。

ノートを片付けた陽菜ちゃんが次に開いたのは、なんと世界的に大流行している「あのFPSゲーム」で……!?

激アツのスーパー姫プレイ、開幕です!

『えへへ、えほん、おもしろかったね! でも、ぜんぶよんじゃったから、おかたづけするね!』

同接1万人の大観衆が「クズ兄貴討伐」に沸き立つ中、陽菜(ひな)は無邪気に厨二病ノート(深淵の黙示録)をパタンと閉じ、机の端へと追いやった。

「ソウタ! 目ヲ覚マセ! ソウタァァッ!!」

バシャァァァッ!!

「ブハァッ!?」

同じ頃。スイスのレストランの厨房では、泡を吹いて気絶していた蒼太(そうた)が、屈強な店長に冷たいアルプスの天然水をバケツでぶっかけられ、勢いよく飛び起きていた。

「ハッ、ハァ……! よ、よかった……。黒歴史ノートの朗読、終わったのか……」

(た、助かった……。とりあえず、俺の右腕の疼き(だーく・るしふぇる)の話は終わった……)

びしょ濡れのまま床にへたり込み、スマホの画面を見て深く息を吐き出す蒼太。

画面の中の陽菜は、パソコンのマウスを両手で握り、ポインターをデスクトップ上でフラフラと動かしている。

『つぎは、なにをしてあそぼうかなぁ? あ、この「鉄砲(てっぽう)」のマーク、かっこいい! これ、おしてみる!』

カチカチッ。

陽菜がダブルクリックしたのは、全世界で数千万人のプレイヤーが熱狂している大人気チームシューティング・バトルロワイヤルゲーム『VERTEX(ヴァーテックス)』だった。

(――は?)

スイスの床で、ようやく生還した蒼太の顔面から、再びスッと血の気が引いていく。

直後、画面がスムーズにゲーム画面へと切り替わり、軽快なBGMが流れ始める。

蒼太が以前、自分でのバ美肉ゲーム配信デビューを夢見て「配信画面」や「通話アプリ(Discord)」の音声設定を完璧に済ませておいたため、何の手間もなくゲーム画面が全世界へ中継されてしまったのである。

【モブリスナーA】:お!? ゲーム画面に切り替わったぞ!

【モブリスナーB】:これ、あの超有名なFPSゲームじゃんwww

『わぁ! かっこいいおんがくがながれてきたよ! ……あれ? なにか、アルファベットがかいてあるバッジがいっぱいあるね!』

ゲームのロビー画面が表示された瞬間、チャット欄のゲーマー勢がざわめいた。

画面の右上、プレイヤーの「ランク(実力)」を示すアイコンが、禍々しい赤色のオーラを放っていたからだ。

【モブリスナーC】:ちょ、待って。これ『ドミネーター(全世界の上位0.1%)』の超高ランク帯のアカウントじゃねえか!!www

【モブリスナーD】:クソ兄貴、FPSの腕前はガチ勢だったのかよwwww

(やめろ陽菜! それは俺が何千時間も引きこもって血の滲むような思いで維持してきた、最高位(ドミネーター)のアカウントだぞ!?)

再び絶望の淵に突き落とされる蒼太をよそに、ロビー画面には次々と『パーティ参加リクエスト』が飛んできた。

『あ! ようせいさんたちがきてくれた! みんなでいっしょに、てっぽうのゲームするんだね!』

ここでお兄ちゃんの完璧な配信設定が、奇跡の「二重構造」を生み出した。

陽菜は大きなゲーミングヘッドホンを被っていないため、パソコンから流れる三闘神の『ボイスチャット(通話音声)』は一切聞こえていない。陽菜が見ているのは、あくまで画面の端の【MeTubeの文字チャット】だけだ。

しかし配信には、三闘神たちの「必死な生声」がダイレクトに垂れ流されていたのである。

【パソコンくん(音声)】:『……お姫様が戦場に降り立とうとしている。護衛部隊、速やかに合流せよ』

【ルールくん(音声)】:『了解しました。法的な正当防衛の範囲内で、お姫様をお守りします』

【ぽかぽかさん(音声)】:『おう!! 銃の撃ち方は知らんが、俺の肉体でお姫様への弾を弾き返してやるぜ!!』

そして、陽菜が読んでいる【文字チャット】には、パソコンくんからひらがなの優しいメッセージが届く。

【パソコンくん(文字)】:『おひめさま、まずは「れんしゅうじょう」にいって、あそびかたをおぼえようね』

『うん! わかった!』

パソコンくんの的確な指示により、4人はまず練習用のフィールドへと降り立った。

【パソコンくん(音声)】:『いいか、キーボードの「W・A・S・D」で移動、マウスで視点移動だ。ぽかぽかさんは「V」キーで近接攻撃(パンチ)だ』

ズサァッ! シュッシュッ!!

画面の右端で、ぽかぽかさんが操作する巨大な盾キャラが、銃を捨てて虚空に向かってものすごい勢いでパンチの素振りを始めた。

【モブリスナーE】:ぽかぽかさん、銃撃つゲームでずっとパンチの素振りしてて草www

【モブリスナーF】:裏のボイスチャットと、表のひらがなチャットの温度差えぐいwww

そんな中、陽菜の操るキャラクターだけが、開始地点から一歩も動けずにいた。

『うぇぇ……? まうす、動かすと、ぐるぐる回っちゃうよぉ……。キーボードも、どこを押せばいいか、わかんない……』

9歳の小さな手には、PCゲーム特有の同時操作はあまりにも難しすぎた。

画面は床や空を向いてグルグルと回り、陽菜の声からだんだんと元気が失われていく。

『……ごめんなさい、ようせいさんたち。わたし、へたっぴだから……みんなのジャマに、なっちゃうかも……』

シュン……と落ち込むロゼ姫の声。

その瞬間、1万人のリスナーと、三闘神たちの心に「世界で一番守るべきもの」にヒビが入ったような、凄まじい衝撃が走った。

【ぽかぽかさん(音声)】:『クソッ! 俺が不甲斐ないばかりにお姫様を悲しませてしまった!! パソコンくん、この練習モードはもうやめだ!!』

【パソコンくん(音声)】:『……ああ、私の配慮が足りなかった。お姫様、難しい操作は一切覚えなくていい。私が敵をすべて薙ぎ払う』

パソコンくんは静かに決意を込めると、チャット欄に優しく文字を打ち込んだ。

【パソコンくん(文字)】:『おひめさま、むずかしいから、たたかわなくていい「おさんぽモード(カジュアル)」にしよっか。あかいボタンを、ぽちってしてね』

『ほんと!? わたし、おさんぽならできるよ!』

陽菜の声にパッと明るさが戻り、画面のモード表記が「ランクマッチ」から気楽な「カジュアル」へと切り替わった。

「…………ふぅぅぅぅ!!」

スイスの厨房の床で、蒼太は心の底から安堵の息を吐き出した。

(よかったぁぁぁ!! カジュアルなら、いくら負けても俺のレート(ランクポイント)は減らない!! 頼むからその平和なお散歩モードで、安全に終わらせてくれよ……ッ!)

ブゥゥゥン……ッ!!

マッチングが完了し、4人は本番前の「待機島(ロビー)」へと降り立った。約60人のプレイヤーが、試合開始までの数十秒間、自由に走り回ったりエモート(感情表現)をして遊ぶ場所だ。

『わぁ、いろんなおともだちがいっぱいいるね!』

陽菜が画面をグルグル回していると、目の前に、禍々しいオーラを放つ別チームのキャラクターが立っていた。

【ルールくん(音声)】:『……パソコンくん。目の前のプレイヤー、なんだか禍々しい赤いバッジをつけていますね。お姫様のアカウントについているのと同じですが……』

【パソコンくん(音声)】:『……ああ。あれは最上位であるドミネーターの証だ。しかもあのプレイヤーID……海外勢の中でもトップクラスに凶悪な猛者チームじゃないか。息抜きでカジュアルに遊びに来ているんだろう』

蒼太の心臓が、再びヒュッと跳ね上がった。

(嘘だろ!? なんで平和なお散歩のハズのカジュアルマッチに、海外のトップ猛者が集まってきてんだよ!!)

その時だった。

猛者プレイヤーが、パソコンくんのキャラクター(ID:ZERO)の目の前までツカツカと歩いてきて、ものすごいスピードで「しゃがむ・立つ」を繰り返すアクション(屈伸)を始めたのだ。

『あ! おひめさま、あのひと、しゃがんだりたったりして、ごあいさつしてくれてるよ! こんにちはー!』

陽菜は無邪気に喜んでいるが、裏のボイスチャットの空気は氷点下まで凍りついていた。

【パソコンくん(音声)】:『……いや、違うなお姫様。あれはFPSにおける「煽り(挑発)」のモーションだ。……奴ら、最高ランク帯で暴れ回る私(ZERO)に気付き、宣戦布告してきているんだ』

【ぽかぽかさん(音声)】:『なんだと!? お姫様のお散歩を邪魔する気か!!』

【モブリスナーG】:陽菜ちゃんはご挨拶だと思ってるのに裏でバチバチで草www

【モブリスナーH】:海外の猛者チームVSサイコパス戦闘狂(パソコンくん)www

パソコンくんは、マウスを握りしめ、低く冷たい声で宣言した。

【パソコンくん(音声)】:『……平和なお散歩にしたかったが、どうやら血の雨は避けられないらしい。いいだろう。奴らを叩き潰し、私が必ず、お姫様に1位(チャンピオン)を捧げる!!』

【モブリスナーI】:誰もそこまで求めてないのに躍起になってて草www

ズサァァァッ!!

試合開始の合図とともに、4人は激戦区のど真ん中へとダイブした。

『ひゃっ!? な、なんか、すごく大きな音が鳴ってるよ!?』

着地と同時に響き渡る銃声にパニックになる陽菜。

【パソコンくん(音声)】:『……狩りの時間だ! ぽかぽかさん、キーボードの「Q」キーだけを今すぐ力強く押せ!!』

【ぽかぽかさん(音声)】:『おう! お姫様は俺が守る!! 押忍(おす)ッ!!!!』

メキョォォォッ!!

異様な破壊音がマイク越しに響き渡った。

ぽかぽかさんが気合いの乗った渾身の正拳突きでキーを叩き割った瞬間、陽菜たち4人をすっぽりと覆うように、巨大な半透明のドームシールドが展開された。

【ぽかぽかさん(音声)】:『すまんパソコンくん!! 気合いを入れてQキーを突いたら、キーボードが真っ二つに割れてウンともスンとも言わなくなった! 俺はここまでだ、後はお姫様を頼む!!』

ぽかぽかさんの操作する盾キャラが、ピタリと動きを止めた。

そのままシステムメッセージに『回線落ち(切断)』の文字が無情にも表示される。

【モブリスナーJ】:キーボード物理破壊して退場すなwwwww

【モブリスナーK】:開始10秒で盾役(タンク)が逝ったぞwww

仲間が開始10秒で物理的に散っていく中、パソコンくんの操る攻撃特化キャラが、シールドの外へと猛烈なスピードで飛び出していく。

『わぁ……! まるで、きらきらのおっきなシャボン玉みたい! きれいだねぇ!』

陽菜が半透明のドームシールドを見上げて無邪気に喜んでいる、ほんの数秒の間。

外から響いていた鼓膜をつんざくような銃声と爆音は――パソコンくんの超人的なエイムと機動力によって、文字通り「一瞬」で完全に鳴り止んだ。

【モブリスナーL】:……え? もう銃声止んだんだけど。

【モブリスナーM】:嘘だろ……あの戦闘狂、陽菜ちゃんがシャボン玉見て喜んでる数秒の間に、外の3部隊をひとりで壊滅させやがった……。

かくして、あの海外の猛者チームを倒すための、三闘神による『絶対死なせないスーパー姫プレイ』の過酷な戦端が切って落とされたのであった。

最後までお読みいただき、ありがとうございます!

第11話、新展開の「ゲーム配信編」に突入しました!

陽菜ちゃんの世界観を守るため、「裏のボイスチャット」と「表のひらがなチャット」の二重構造でお送りします(笑)。リスナーにだけ、三闘神の必死な生声が聞こえています。

気絶から復活したお兄ちゃんは「カジュアル(お散歩)」に安堵しましたが、まさかの待機島で海外の猛者チームと遭遇!

陽菜ちゃんは「ご挨拶だね!」と喜んでいますが、パソコンくんは煽られたと解釈し、「絶対に1位を捧げる」と勝手にバチバチの戦闘モードに入ってしまいました(笑)。

さらに、ぽかぽかさんが気合いの正拳突きでキーボードを粉砕し、まさかの開始10秒で物理的リタイア!

シャボン玉を見ている間に敵を瞬殺するパソコンくんの異常な強さも光ります。

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