131-魂たちの叫び
「こいつらだ、改造を頼む。俺様じゃ指の細かい改造は難しくてね」
チルルはイチにそう言うと、目の前にある5体の土人形に視線をやった。ベースはモグラ土人形のようだが、もう少し大きくて、より人間の形に近い土人形だ。
「時々姿を見せなくなる事があるなと思っていたけど……兄さん、追加の土人形作っていたんだ⁈」
「だから兄さんと言うなと……まあ良い。なに、迎え石がまだ残っていたからな。兵士はいくらいても良いから時間の限り作ろうと思っていた。残念ながら5体しか作れなかったがな」
そう言いながらイチの肩に留まるチルル。肩で息をしている、だいぶ疲れているようだ。改めて新しい土人形を見てみる。こうして見るとミトンみたいな手以外はほぼ人間だ。
「シリウスの作った戦士タイプ土人形を参考に作ってみた。あれよりは戦闘力はないが、俺様が昔作った土木工事土人形よりかは遥かに強いし細かい動きができる。お前が手と指を改造すればほぼ人間の兵士みたいな動きができるだろうさ」
イチは改めて新型土人形に触れてみた。形だけじゃない。密度も高く隅々まで魔力も流れていて動きも俊敏そうだ。武器だけじゃなくて何なら簡易的な魔道具だって装備できそうだ。
「モグラ土人形改ってところか、たしかにこいつは強そうだよ兄さん」
「そのかわり数を作るのは難しそうだがな。あとはコイツに少しでも強めの魂が入ってくれれば良いんだが、強者の魂は優先的に戦士タイプに入れるだろうからな。まあ、ここは古戦場跡だし、戦士の魂には事欠かないだろうさ」
そんな事を話しながら、全てのモグラ土人形改の指の改造作業を終えた。ふと見ると、チルルが古戦場跡の平野をジッと寂しそうな目で見つめている事に気づく。
「(あ、そうか)」
チルルが何を見ているか気づいた。自分も呼吸を整え、静かな気持ちで平野をジッと眺めてみる。すると、蛍のような小さな光がふわふわ舞っているのが目に映った。おそらくこの戦場で散った人たちの魂だろう。
「(死後100年彷徨っている魂たちだ……)」
今さらながら申し訳ない気持ちがこみあげてくる。無意識に合掌すると、
「死後も戦わせて本当に申し訳ありません。どうか手をお貸しください。お願いします」
祈るように呟いた。チルルも、
「本当にすまない。でもできれば強い奴を頼む。俺様の姉ちゃんを守って欲しいんだ。俺たちだけじゃ守り切れない」
震える声でぼそりと呟いた。ああ、それがチルルの願いなんだ。そう思い、もう一度戦場の魂たちに向けて祈りを捧げた。すると、どこからか来たいくつかの魂がモグラ土人形改の周りを回り出す……が入ってくれない。
「思ったより魂を入れる作業って大変なんだなあ。本当に、土人形に入れる、というよりお願いする形なんだ。これを2000体以上やるんだ……全然入ってくれない。自主的に入ってくれたモモさん本当にありがとう」
「そりゃそうだ。魂には自分の意思があるんだぜ⁈気に食わない奴の言う事なんか聞いてくれねえよ」
「なるほど……竜人が魂の実用化に失敗し続けた理由がわかる気がする。竜人の言う事なんか聞きたくないものなあ」
そう思いながらも、ザーレの脅しに屈してズーミの死体に入る事を強要されたカルラさんの元夫の魂を思い出していた。半強制的に入れることはおそらくできるのだろう。絶対にやりたくはないが。
周りを舞う魂を見つめる。魂たちはなんかまごまごしている。もしかしたら見られていると恥ずかしいのかもしれない。
「チルル、一旦席を外そう。彼らに決心する時間を与えたい」
「同感だ。じゃあ姉ちゃんたちの方に行こう」
そう言いながらカルラさんの方に向かう。
カルラさんは2000体の戦士タイプ土人形を前に考え込んでいた。見るとリコやフォレスタも何か必死で語りかけている。
「カルラさん、どうしたんですか⁈早く土人形に魂を入れないと。」
「イチくん、チルル……ヤバいかも……」
「どうした、姉ちゃん。強者の魂たちは竜人たちに恨み骨髄の連中だろ⁈そう言う士気の高そうな奴は自分から入ってくれるもんじゃないのか⁈」
「それが……」
カルラさんの手の中には、小さな小瓶がある。エリトがザーレから奪った強者の魂がたくさん入っているやつだ。よく見ると魂たちが小瓶の中から出てこずに引きこもっている。出てきた魂も少しフワフワ浮いた後にまた小瓶に戻っていく。
「ど……どうしたんですか⁈これ⁈」
イチがそう言った瞬間に、魂たちの声が聞こえた。
「モウ……イヤダ……タタカイタクナイ」
「コワイ……リュウジンオウ……コワイ」
「イヤダ……モウイヤダ……コワイ!」
カルラさんが泣きそうな顔で呟いた。
「みんな……心の底から怯え切っているの……土人形に入ってくれない……」
全員の顔が青ざめた!




