クグノアーツ学院2
昇降機の扉が開くと、幅のある大理石の床と金模様で彩られた壁を組み合わせた廊下の、見慣れた白い景色が広がった。
しかしその内装の色とは対照的に、学院の生徒が身に付ける衣服は、紅のラインの施された黒い色をしている。
そのせいもあって、ツルハの姿は、すぐにギルの目に留まった。
黒いつなぎの学院服に覆われた桃色の髪を1つに縛った少女が気が付き、一度お辞儀をすると、ギルも軽く会釈を返した。
「グラディワンド王国第二王女、ツルハ・リオールです。
この度は突然の入学を認めてくださり、ありがとうございます」
ツルハが丁寧に挨拶し、その垂れた頭が見えると、ギルは心の中で頷いた。
なるほど。流石は王家出身の者というわけだ。
元より整った顔立ちをしているが、この気風はそればかりによるものではない。
一つ一つの動作、明瞭な声の調子。幼さがまだあるものの、その面持ちはしっかりとしており、その年齢よりも大人びた印象を与えた。
「クグノアーツ学院、学院長ルベル・リレーデ。そしてこの者は、ギル・ラネッカ。当院の教師の一人です。
ツルハ・リオール殿、我々は貴君の入学を心より歓迎申し上げます」
ルベルの紹介にギルが頭を下げると、ツルハも会釈を返した。
2人が挨拶を終えるのを見ると、ルベルはパンパンと手を叩いた。
「さて、堅苦しい挨拶はこのくらいにしよう。
ツルハ君、私は君の入学を心から祝福し歓迎する! ようこそ、このクグノアーツ学院へ!」
ツルハの両手を取り、無邪気に振る舞うルベルに、まだ緊張気味の表情をツルハが見せると、
「そんなに堅くなることはない。
この学院では詰まらぬ肩書は一切なしだ。この学院に入った者は王族であろうが貧民であろうが等しく、私の生徒だ。
私の生徒となれば、この学院は君の家のようなものであり、この国は君の故郷のようなものだ。
どうか肩の力を抜いて、これからの学生生活を楽しんでほしい」
ツルハの背中を叩き、鼓舞するようにルベルが言うと、ツルハは「はあ……」と戸惑った表情で空返事をした。
「学院長」
ギルが促すように咳ばらいをすると、ルベルは、
「おお、そうだったな。
ツルハ君、すまないが私はこの後、すぐ下で待たせている君の付き添い人と話がある。
今日に限って予定がビッシリでね。一分一秒も無駄にはできないのだ。
本当であれば君ともう少し話をしたかったのだが、参ったものだよ。
先程も紹介したが、この男が、学院での君の主な指導を担当することになる。
学院で困ったことや問題があった際は、この男に相談すると良い。
さて、長い説明を聞くよりは実際にその身で体験したほうが早いだろう。早速だが、今からこの男が、君がこれからの生活を共に過ごす仲間たちのもとに、案内する。
今日一日、彼らと過ごし、学生生活というものがどのようなものであるかを経験してみると良い。ギル」
一方的に話を終えたルベルに呼ばれると、ギルはツルハに向き直り、
「では、参りましょう」
ギルの丁寧な声かけに、ツルハも微笑んで頷いた。




