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The day ④

 桃香は、あからさまにホッとしたような浮かべ、その後私を睨みつける。だから、この件に関しては私は基本ノータッチなんだって。

 そもそも、成りすましアカウントのURLをゆり子さんをはじめ私の周囲にばら撒いたのは自分でしょう? 捨てアドから送ってきたんだろうけど、そのアドレスからのメール受け取った事が大昔にあるんだよ……桃香が差出人のメールをね……。

 あのSNSだけじゃなくて、ちょっと調べれば浮気相手が桃香だなんて簡単にわかっちゃうのにね……。


 ゆり子さんの手元には、バッチリ証拠が揃ってるって話だし。きっと桃香は自分がどれだけのことを仕出かしたのか理解していないのだろう。そうじゃなきゃ、怒りの矛先が私に向くわけがない。

 なんだか、真幸が気の毒な気がしてきたよ。




 その後、つつがなく二次会は進行し、あっという間にお開きの時間となった。


 私は桃香に渡す予定だった封筒を取り出して破る。黒田は、眉を下げて呆れた顔をしているけれど、別に良いでしょう?

 きっと、私がしなくとも成りすましの件では彼女が追求されるだろう。だから、私からこれを渡す必要はないのかなって思うんだ。

 と言うか、間違いなくゆり子さんとの件で黒田がそれを追求する。

 黒田と私の関係も既に彼女の耳には入っているようだし、そちらの話し合いが始まれば、彼女自身がもう私と関わりたくないと思うだろう。


 私だって、もうあなたと関わるのはごめんだよ。

 ドロボウ呼ばわりも卒業したいんだ。





「アリサ、ちょっと待ちなさいよ!」


 ゲストの見送りをする桃香と真幸の元へ、私たちは敢えて1番最後に向かう。渡す予定だった封筒は破り捨てたが、言っておきたい事があったのだ。勿論、最後まで残ったのは他のゲストにまで迷惑をかけたくなかったからだが、それ以上に桃香や真幸へ配慮したからでもあった。


だけれど、私たちのそんな気遣いなんて彼女に伝わる事無いのだろうな。


鬼の様な形相の桃香に私は胸ぐらを掴まれた。純白のウェディングドレスの所為で、彼女の顔の赤さが更に目立つ。

 私の事をよくは思っていない真幸だけれど、さすがに桃香の様子がおかしいと思ったのだろう。黒田と浩市と共に私と桃香の間に入って彼女を引き剥がしてくれた。


「どうしてあの人達が来るの!? あんたが私を妬んで、ぶち壊そうとしてるんでしょ!?」


せっかく、周りの目を気にして他のゲストが退出するまで待っていたと言うのに、これでは意味が無い。これだけ声を荒げて怒鳴れば筒抜けてしまうだろう。


「悪いけれど、私は桃香を羨ましいなんて思ってないよ。なのに嫉妬なんてするわけないでしょう?」

「嘘よ、嘘! あんたが呼ばなきゃ誰があの女を呼ぶの?」


 冷静に答える私が心底気に入らないらしく、浩市と真幸に両サイドを押さえられた状態でも私につめ寄ろうとする桃香。


「じゃああんたはどうして来たの!?」


 来いって言った本人がそれを言うか? 鬼気迫る迫力に怯みそうになりながらも、私は彼女の問いに答える。


「本当は渡したいものがあったの。でも、どうでも良くなっちゃった。逆に桃香はどうして私を呼んだの?」

「………そんな事どうでも良いじゃない! それよりあんたが渡したかったものって何よ? 何なのよ!?」

「別に知らなくても良いと思うよ。どうしても知りたいなら、そのうち黒田が教えてくれるんじゃない?」

「何で黒田が出てくるのよ! 黒田は関係ないでしょ? だいたいちょっと見た目が良くなったからって、キモメンはキモメンでしょ? 男の癖に整形でもした?」


 黒田は前から男前じゃ! バカにすんじゃねぇ!! と思わず反論しそうになった私を制して、黒田は鞄から名刺入れを取り出した。


「俺、今こういう事やってるんだわ。今後は仕事を通じてお世話になると思うんでよろしく」

「はぁ!? 意味わからないんだけど」

「今は酒も入って酔っているだろうから、落ち着いたら連絡するよ」


 逆上した桃香はこの状況を全く理解していないらしい。真幸の顔だけがどんどん青くなってゆく。


「なぁ、黒田、一体どういう事だ?」

「真幸がそれを尋ねる相手は俺じゃねーよ」


 真幸は腑に落ちない顔をしている。そんな彼に黒田は続けた。


「仲間内じゃ浩市とアリサが悪者になってるけれど事実はどうだ? それが分からない彼女には、俺の言っている事が理解できないだろうな。お前がどんな判断を下すか分からないけれど、必要があれば連絡してくれ。俺としては、連絡がない方が嬉しいけどな。それじゃあ末永くお幸せに」


 黒田はそう言って、真幸にも同じ名刺を渡す。

 私と浩市は黒田に促されて店を出た。桃香の怒鳴り声のせいなのか、春とはいえまだ夜は冷えるせいなのか、もう二次会に出席していたと思しき人々の姿は見えなかった。






***


「ねぇ、アリサ。俺頑張ったからご褒美頂戴?」

「黒田ぁ、そういうのは俺が帰ってからにしてくれないか?」


 黒田は無駄にフェロモン撒き散らすんじゃねぇ! 浩市もにやけるな!


「悪いけど、私ゆり子さんと約束してるから。たまには2人で飲んで来たらー? じゃあまたね!」


男2人を残し、私はタクシーへ乗り込んだ。

黒田の色気に当てられてちょっぴり火照る頬。気付かれてたら厄介だなぁ……なんて考えながらゆり子さんの待つ大人なバーに向かう。


 その後、ゆり子さんは離婚した。けれど、清々しく活気溢れる彼女を見るたびに思う。黒田がいい仕事したんだなぁって。

 黒田は私に何も言わないから、桃香と真幸がどうなったかは知らない。別れていてもいなくても、あの晩ゆり子さんと飲んだ時に言った言葉の通りだったのだろうな。


『嘘吐きな彼女がエイプリルフールの午前中に神様の前で誓うなんてさ、偽りの愛ですって言っている様なもんよねぇ……』


もちろん、4月1日に式を挙げた人がみんなそうだっていう訳じゃない。むしろ、そうじゃないって、決して揺らぐことのない愛だという自信があるからこそ挙げられるのだろう。

桃香は、嘘を吐き過ぎたのだ。それも、周りを不幸にする嘘を。



 私はと言えば、黒田に孕まされた。あの日、ゆり子さんとバーで飲んだ後に。

「待つって言ったじゃーん!!」と言えば、「エイプリルフールって嘘ついていい日でしょ?」って返されて。

 翌日、私の実家と黒田に実家にも連れていかれ、あっという間に色んな事が決まっちゃったから、ギリギリ順番は守れた……はず。


「嘘吐きはドロボウの始まりだけど、エイプリルフールの嘘は幸せの始まりだなぁ。ついでに言えば、5年前のアリサの嘘に俺は心を奪われてたりするし。馬鹿だけど友達思いのいい奴だなぁって。……アリサはドロボウでもただのドロボウじゃない。俺はハートを盗まれたんだから……ちゃんと責任取ってくれよ?」


 なんて、黒田がどこぞの怪盗すら砂糖を吐きそうなセリフまで言い放って。実はそれがものすごく嬉しかったなんて、私だけの秘密。





 おしまい

お読みくださりありがとうございました。


※ 4/6、一部加筆いたしました。


以下おまけです。


・アリサ

お人好しで、見る人によってはアホの子に見えてしまうけれど、頭は悪くない。

顔の造作がはっきりしており、そんな顔に似合う服を着ているため、キツイ印象とか派手で遊んでそうな印象を相手に与えがちだけれど、実は恋愛下手で奥手なヘタレ。そのくせ時々開き直りで大胆な行動に出てしまう結果、間違った印象をより相手に強く与えてしまう羽目になっている。


実は周りが『キモメン』と黒田をバカにしていた頃から、黒田の顔は嫌いじゃなくてむしろタイプではあったが、彼に対して近寄りがたい印象を持っていた。

黒田とは付き合っていないが、互いの両親に友人として紹介済み。いつになったら付き合うのだろうと親の方がヤキモキしていたりする。


・黒田

弁護士。

高校時代まではものすごくモテたが、恋愛面でのトラブルに嫌気がさし大学入学と同時に『キモメン』デビュー。

自らキモメンを狙っているものの、やっぱりバカにされるとイラっとする。

そんな黒田に対し、周りと分け隔てなく接していたのがアリサと浩市で、以前より好印象を持っていた。

桃香は「キモメンにも普通に接してあげてる」自分に酔いしれている節があるため、元々苦手。更に彼女の本音や股の緩さにはとにかくびっくり。アリサに害をなす桃香を許せない反面、アリサ

大学卒業後、法科大学院へ進み一発で司法試験を合格する程頭が良い。一発合格出来たのは、合格したらご褒美(お泊りデート)をもらえる約束があったかららしい。ちなみに、黒田に抱き潰されてしまったため翌日アリサは動けず、ただのお泊まりになってしまったそうな。

恋愛下手なアリサを落とすため、この話の1年前には既にアリサの両親へ彼女との結婚の許可をもらっていた。


・桃香

マウント系女子。

ものすごく甘やかされて育ち、自分が輪の中心にいないと気が済まない。

可愛い自覚があり、自分の魅せ方をよく知っている。

いつも自分がチヤホヤされていたいし、甘やかしてくれる人が大好き。

欲望に忠実で、欲しいと思ったら手を出さずにはいられない。ゆり子さんの旦那様だけでなく既婚独身問わず間男が常にいたが、真幸は気付かない。

得意技は責任転嫁。

黒田のような観察眼の鋭い人は苦手というか天敵。


・浩市

温厚で頑張り屋さん、だけどヘタレな残念イケメン。

なぜかアリサを師と仰ぐ。彼女のような気前の良さというか頼れる感じに憧れ、結果それを身につける。

奥さんはアリサの高校時代の友人。アリサの紹介で出会い、トントン拍子で結婚した。

黒田とタイプは違うものの、気が合うらしい。

黒田からもアリサからも恋愛相談を受けているため、両片思いな2人のじれっじれな恋路がもどかしくて仕方ない。しかしながら所詮ヘタレなので何も出来ず……


・真幸

よく言えば人当たりが良くて親切でまっすぐな人だが、悪く言えば優柔不断で流されやすく、周りが見えていない。しかも鈍感で押しに弱く、良くも悪くも周りの人の影響を受けやすく、やや冷静さにも欠ける。

決して悪い人ではないが物事を客観的に見ることが出来ずに良かれと思っての行動が裏目に出てしまうのが欠点。

自分にとって都合の良い言葉をかけてくれる桃香といるととても癒されるが、結局それは馴れ合いでしかない事に黒田に気付かされる。

その後桃香との離婚も考えたが、黒田に説得され共に歩む事を決意。多分、それなりには幸せ。


・ゆり子さん

バリバリのキャリアウーマン。同期の旦那様とは結婚4年目。子どもはいない。

アリサを休日に呼び出したのはカマをかけるため。来ると思わなかった彼女が直ぐに来たため困惑するが、彼女がシロだと分かるとそれまでの事を謝った。この一件で、アリサと彼女の信頼関係は深まり、プライベートでも親しくする事に。

当初は離婚する気は無かったが、桃香のお腹の子の父親が旦那である可能性が高い事、旦那がまとまったお金を桃香に渡し、子どもに会わせる約束までしている事を知り離婚を決意。

因みにアリサの紹介で黒田にその手続きを依頼。

その後、初恋の彼との再会を果たして幸せを掴む予定。



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