No.9 初仕事
今回は、ナナミさんの初仕事です。
私は、船長室に戻った後、早速レイクスさんに仕事の内容を教えて貰った。今日は、午前はミュエルさんと話して、レイクスさんに服について話をしたので、最初の仕事は午後からになった。
「じゃ、こんな感じだ…頑張ってこい」
「はい、ありがとうございました」
因みに、初日は各部屋のシーツを交換すること。… ベッドのシーツは、ボックスシーツのためただ取ってボックスシーツのゴムの部分をマットレスに付けるだけなので、簡単に終わる。後は、掛け布団は洗濯で洗えるので、そのまま替えの布団と交換をする。使用していた布団は大きなワゴンの中に入れて、枕はカバーを取り替えて終わる。
これだけで、ヴァッカニアの船の中は広くて、船員だけでもかなり多い。大体25人くらいなので半日は掛かってしまう。一室一室が、二人部屋なので何とか全部変えた。そして、最後は、船長室のシーツを変えるために、ワゴンを引いて歩いていると…
「あれ?もしかして、ナナミか?」
私は、声のする方へ見ると……
「…サンダさん?」
「やっぱり、ナナミか!ワゴンなんか引いてどうしたんだよ」
サンダさんが、私に気づき、近付いてきた。
「今日から、雑用として働かして貰って…サンダさんは、もしかして、お風呂上がりですか?」
「おう!今、ちっと汗かいたからな、今から飯を食べに行くんだ!ナナミはどうする?」
もう、食事の時間であったのを思い出した。私は、
「そうですね…ベッドのシーツ交換が終わったら行きます」
「そっか…じゃあ俺は、先に行ってるぜ!」
「はい、また後で」
私は、サンダさんと別れるとそのまま船長室に行った。…どうやら、レイクスさんは今はいないようだった。私は、一回り大きいシーツと掛け布団、そして、枕カバーを持って寝室を訪れると…
「あれ?レイクスさん…ベッドで寝てる…」
レイクスさんが、端末を持ったまま眠っていた…私は、シーツを換えに来たけど、起こしたら悪いと思ってせめて掛け布団だけでも掛けようと、新しい物を持って近付いた…。そして、起きる様子のなさそうなレイクスさんを見て、新しい掛け布団を掛けて、枕を手にとってカバーを替えた…。
ー…シーツは、理由を話して明日換えようかな?…起こすのも、なんだか悪いし……ー
そして、枕カバーを換え終わって、レイクスさんの頭の上に慎重に起こさない様に置いて、離れようとすると…
「っ……!」
突然、レイクスさんの手が、私の手首を握った…
レイクスさんは起きたばかりなのかぼんやりと私の手を握ったまま自分の手を見つめていた…。私は、
「…レイクスさん、あの…今、枕カバーを換えたばかりで…起こしてしまいましたか…?」
「……………」
「…あの、レイクスさん?」
レイクスさんの反応がないまま、私は握られたまま固まってしまった…。
ー…レイクスさん…もしかして…寝ぼけてる?…ー
私が、どうしたらいいのか考えていると、
「……ナナミか?」
レイクスさんが、私に話を掛けてきました。私は、そうですと答えると、
「…なんでいるんだ?今、シーツ交換してるんじゃなかったのか?」
「もう、皆さんのシーツは終わって…後は、レイクスさんのところだけです」
「…そうか……悪いが、明日にしてくれないか…」
「分かりました…実は、ちょうど理由を話してレイクスさんに伝えようとしたんです…」
レイクスさんは、もう一度そうかと言うとまだ眠たいのか、私の手を離した。そして、
「…悪いな…少し、寝不足だったんだ…三日前から碌に寝ないでいたから…昨日は、少し寝れたんだが…寝たり無かったみたいだ…」
私は、その言葉に反応した…
ー…三日前…私が、レイクスさんと会う前だ…もしかして…ー
「…私が、居た施設に関係しているんですか…?」
レイクスさんは、私を見ると…
「…そうだと言ったら?」
…先程の眠たそうな表情から、読めないような顔を作って言った…私は、
「…もし、そうなら…私が居た施設はいったい何なんですか…どうして」
ミュエルさんが、さっきまでいずれ話すと言った言葉を思い出した…私は、上から寝そべっているレイクスさんを見て問いかけると…
「…俺が、三日間寝てないのはそれとは関係ないが、お前の居た施設は俺も分かることは、何かの大掛かりな実験施設としか言えない…ただ、」
「…ただ…」
「…ヘルドと俺が、あの施設に行ったのは、ある人物から、頼まれた…何でも今から十三年前、あの施設で行方不明になった奴がいたらしい…そいつは、結局戻って来なかったらしい…それで、ある人物はその事に疑問を持ったらしく、俺達に依頼したんだ…ま、依頼した奴は、昔の恩があるからな…んで、引き受けたら……ナナミ、お前が居た…」
レイクスさんの言葉に、私は衝撃を受けた…。
ー…十三年前に行方不明?…私が居た…?…ー
「……つまり、その人は本当に何処にも居なくなってしまったんですか…?」
「……そいつ自体は、まだ小さなガキだったらしい…そこしか、教えられていないが……考えられるのは…」
私は、レイクスさんの話を聞いて、ゾッとした…つまり…当時、まだ子供だったその子は…何かの実験で、消息を断ってしまったと言うことだ…そして、そこに私が居た…つまり、
ー…どうして、そんな事が…起こるの…?…ー
私は、耐えきれず、指輪を握り締め、レイクスさんに更に質問した…
「……騎士団の方は、知っているんですか…その事を……」
レイクスさんは、
「…知らねぇ事はないと思うが、知っている奴も多分ごく少数かもな…何にしても、あの施設は…とんでもなくヤバいって事は分かった…」
そういうと、私にぶつからないように起き上がって、
「……ナナミ、お前が何者かは知らねーが…お前が俺達に害があるとは思っていない…会った時から、敵意は無かったからな…けどな…」
レイクスさんは、私に顔を近付けると…
「…お前は、この事を知った上で…ヴァッカニアに居ることを…望むか?」
…視線が、そらせない…彼は私をまるで答えを待っているような、そんな視線だった…
ー…私は………ー
多分、この宇宙海賊船、ヴァッカニアはきっと危ない戦いも、これから危険にさらされたりするんだろう…私は、その時こそ…何にも出来ない……
そこまで、考えて私は…レイクスさんを見つめ直すと、
「……私は……」
答えを出そうと、声を出したところで……
…突然、けたたましい電子音が辺りに響いたと思うと…次の、放送で…
ー…警告、警告…正体不明のエネミーが近付いています…各員、配置について下さい…繰り返します…ー
「…ちっ…敵か…」
「…えっ…」
「…誰とは言わないが……ま、大方予想通りか…」
レイクスさんは、そういうとすぐに着替えを始め…そして、初めまして会った時と同じ格好をすると私に向かって…
「…ナナミ、話はすまんが、後で聞く…」
「…レイクスさんっ!!」
そうして、レイクスさんはそのまま部屋から走って出て行った…。
と言うわけで、次回からは戦闘に入ります。
…今回、レイクスさんと七海さんの少しドキッとするシーンと入れられなかった施設の話を入れました。さて、ナナミさんの答えは?
それでは