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この世界でただ1人の人間の戦い  作者: 冒険好きな靴
第4章 地獄篇 空中要塞アネンヴァング
64/244

64話 集合

 黒龍(ブラックドラゴン)の襲撃から数時間後。


 「ルフェシヲラ、ロンポット、エイシャ、セスタ、ポポロ、シャミール」


 魔王がそれぞれの名前を言う。

 直後・・・


 「ハッ!」


 と、返事する声が聞こえた。

 聞こえてきた声の中には、見知った顔であるルフェシヲラやロンポットの姿がある。

 後は・・・分からない。

 前線には出ていたが、今が初対面の奴らだ。

 

 どうやら、重力の固有能力を使っていた悪魔がエイシャ。

 フードを被って、杖を持った土使いがシャミール。

 ボロボロの大剣を持って、狂ったような戦いを見せていたのがポポロ。

 忍者のような格好をして、電撃を使っていたのがセスタ。

 ・・・と言うらしい。


 それぞれの立場は知らない。

 格好から推察しにくいのだ。

 悪魔なのに忍者の格好だったり、他にも独創的な服装をしているので分かりにくい。


 おいおいおい。

 隠密活動にでも使えそうな、黒いピチピチタイツを履いた悪魔はこっちのことを睨んでるし。

 陰湿な雰囲気を漂わせていて、正直怖い。

 

 「よお」

 「ロンポット・・・」


 気軽に挨拶を交わしてくるロンポット。

 何であそこで戦ってたんだよ・・・

 配膳係だったのに。

 俺がそう思っていることを察したらしく、ロンポットはにっこりと笑う。


 「俺は見張りだったのさ。魔王様の指示でな」

 「・・・嘘だったのか」

 「いや、俺は何にも嘘は吐いてないぜ。話せることは話した。それだけだ」

 「それで俺を黙ったまま見張ってたのか」

 「お前の為でもあるんだぜ?自殺しないか、俺個人も心配だったからな」

 

 そう言われて反論する気を失くす俺。

 心配だと言われて、何か口答え出来るような精神は俺は持っていない。

 と言うか自殺って・・・


 「確か、中央市場で貴方と戦ったわね」

 「ん・・・」


 そう横から口を挟んできたのは、重力使いの女悪魔であるエイシャだ。

 随分と重そうな鎧に身を包んでいるが、それを軽々と着こなしている。

 そんな彼女は険しい表情で、俺を見ていた。

 俺にそんな見つめられるような所なんてないはずだが・・・


 「貴方・・・あの時とは随分印象が違うわね・・・」

 「印象?」


 ああ・・・

 あの時っていうと、逃走してるときか。

 そこでしかこの女悪魔とは会ってないし。

 

 あの時は必死で、ついでに訳分からない状態になってたからなぁ。

 印象が違って見えても仕方ないだろう。


 「命がかかってたら、誰だって変わるだろ」

 「んーそれとは何か違う感じね・・・分からないけど」


 エイシャは感覚で物を言うタイプか。

 人間にもいるな、そういう奴。

 その場で突発的に発言して、後に何でそんなことを言ったのか考察するような奴。


 「俺はそんなに違ってるとは思わないがな」


 そうロンポットが口出ししてくる。


 「そりゃあ、あんたがこいつの戦ってる場面を見てないからよ。あんたは城内で下っ端のやるようなことをしてたじゃない」

 「下っ端とは何だよ!あれだって立派な仕事なんだぜ!」

 「うるさいわね。あんたが戦うといっつも周りの建物壊すじゃない。だからこんな時じゃないと戦わせてもらえないのよ」


 ・・・何か勝手に会話が逸れてってるし。

 俺は置いてきぼりにされたようだ。

 まあ、その方がいいかもしれない。


 横を見てみると、ロンポットとエイシャが言い争ってる横で、ビクビクと覚えている悪魔が1人いる。

 ソイツはボロボロのマント姿で、背中にはこれまたボロボロの大剣が背負われている。

 確か、黒龍(ブラックドラゴン)の攻撃にビクともしてなかった狂人の悪魔・・・だったはずだ。

 だが、目の前に居るのは気弱そうな青年の悪魔だ。

 ・・・どういうことだ?


 「や・・・やめてよ、2人共。ケンカはよくないよ・・・」


 ・・・うん、おかしい。

 性格が180度逆になっている。


 ちょっと待てよ。

 黒龍(ブラックドラゴン)と戦っていた時は、ハハハハハハハ!!とか叫んでたじゃないか。

 しかも最高の笑顔をしながら。

 狂ってるとは俺の評だ。

 それがこんな気弱そうな青年だなんて、あの時は微塵も思わなかった。


 なのに、今はなんだ?

 しきりに周りをキョロキョロするし、何かボソボソ小声で言ってるし。

 ・・・戦闘の時だけ興奮するとか?

 確か、ダゴラスさんの家で読んだ認定書には、興奮作用を引き起こす能力もあったな。

 それにしても疑問だが、興奮作用を引き起こすのなら、テレパシーのチャント派生先である、感情操作で補うことは出来る気がする。

 何か、興奮作用を引き起こす能力が、単独で存在してる意味が分からない。


 「セ・・・セスタぁ・・・何とかしてよ。2人がケンカしてるよ・・・僕、怖いよ・・・」


 何故か気が弱くなって、今にも泣きそうなポポロが話しているのは、忍者の格好をした悪魔だ。

 顔はお面に隠れて全く見えない。

 近くで見るまで分からなかったが、胸が膨らんでいるので女悪魔のようだ。

 名前は・・・セスタって言ったな。

 さっきから、ポポロが黒くて目立たないタイツのような服にしがみついている。

 ・・・仲が良いのか?


 「ポポロ・・・あれはケンカしている訳じゃない。じゃれているだけだ」

 「・・・じゃれてるの?」

 「そうだ・・・しょっちゅうやっているだろう?気にすることはない」

 「んだとぉ!」


 ロンポットが今の発言に不満があるようで、言い合いを中断してセスタに突っかかってくる。


 「本当のことだ。今更何の不満だ?」

 「あれはアイツが雑兵の仕事をバカにするから・・・」

 「あらぁ?事実じゃないの?」


 挑発するように言うエイシャに対して、ロンポットがさらに突っかかる。

 そんな2人を間に入れて、忍者姿のセスタは呆れているようだ。

 ポポロはそんな様子を見て、さらにオロオロとしていた。

 その中で、沈黙を守る悪魔が1人いた。


 フードを深めに被って、顔を見せないようにしている悪魔。

 黒龍(ブラックドラゴン)の戦いの時に、岩で重力使いのエイシャをサポートしていた奴だ。

 名前は・・・何だっけか。

 一気に覚える名前が増えて、めんどくさいな・・・

 えー・・・

 ああ、シャミールだ。

 シャミールとか言う名前だった。


 彼は俺のことをさっきからジッと見ているようだった。

 忍者のにらめつける視線より、何だかやりにくい。

 異質な目線だ。

 何を考えているんやら、さっぱり分からん。

 コイツはひとまず置いておこう・・・


 そして、肝心のルフェシヲラ。

 彼女は魔王の隣に居た。

 冷静そうな目線で、騒がしくしている5人の悪魔を見渡している。

 緊張感が解けた途端に、騒がしくしている悪魔達を快く思っていないみたいだ。

 まあ、そんな性格だろうからな・・・


 「さて、いいか」


 そう言われて魔王の方に向き直る悪魔6人。

 その表情は真剣そのものだ。

 俺と気楽そうに話していたロンポットでさえも態度を切り替える。

 忠誠心が厚いな。

 流石は魔王。

 あっという間に静かになった。


 「さて、今現在において、大きな戦力になりうる悪魔。それがここに集まっている6人。そして今はいないが、ヴァネールが1人。計7人だ」

 「・・・」


 みんな沈黙して聞いている。

 さっきまでの賑やかさはどこへやらだ。


 「本来なら、もっと隊長の面々や手練がいたのだろうが、各地に散らばっているせいもあって心もとない戦力になってしまった」


 今、何気にみんなのことけなしたな。

 7人集まっても戦力にはなりませんって言ってるようなもんだ

 だが、静聴している悪魔達は、誰も異論を挟まない。

 十分に自覚して・・・いるのか?


 「ヴァネールがいなければ、ここが落とされていただろう。今回の編成は全て、ルフェシヲラの一任だ」


 みんながルフェシヲラの方をじっと見る。

 気まずい空気はない。

 むしろ、これからどう改善していくか、みたいなプラスな雰囲気だ。

 心が読めることによる影響か?

 とりあえず、現世の反応とはまるで違う。

 現世では何か失敗したら、みんなが責め立ててくることが多いからなぁ。


 魔王はその後、悪魔達に分かりやすく説明を施した。

 ルフェシヲラが感情操作を俺が逃走している間、悪魔みんなに行使してたこと。

 その影響によって、人間に敵意を故意的に抱かせた可能性があること。

 それは行き過ぎた行為だということ。

 そうして俺を追い詰めた結果、黒龍(ブラックドラゴン)襲撃の原因になってしまったこと。

 俺の居場所が丸分かりなので、この後も襲撃が来るだろうということ。


 要約すると、そんな感じのことを魔王は長々と話していた。

 その間、悪魔みんなの目線は魔王と俺と、ルフェシヲラを行ったりきたりだ。

 魔王の傍に、悪魔達と対面する形で立たされているのでみんなの視線が容易に分かる。

 何か面白いな。

 ・・・いや、面白がってる場合ではないことぐらいは分かってる。


 そして、魔王の話の最中、微妙にルフェエシヲラの顔が少し苦くなっていったのを俺は横目で見逃さなかった。

 自分の上司に叱られて、嫌な思いをしない奴はいるまい。

 ちょっといいザマだと思ったのは心にしまっておこう。

 多分、俺の心は・・・読まれてないんじゃないかなぁ・・・

 みんな何故か、俺の心読めてないみたいだし。

 そうこうしている内に、魔王の説明が終盤に入ってきたようだ。


 「・・・このことで、ルフェシヲラを処罰するつもりはない。ただ、このようなこともあると意識しておいて欲しい。心を読む力を過信しないで欲しい。こういう例外はなんにでも付き物だからな」


 ルフェシヲラをどうこうするつもりはないらしい。

 ただ、注意喚起しただけだ。

 これが魔王の目的?

 これでルフェシヲラの考え方を変えようとしてるとか?


 「魔王様、いいですか?」


 ロンポットが魔王に許可を求める。

 多分、発言の許可だ。

 いちいちめんどくさいことするんだな。

 ロンポットが一番そういうの嫌うと思ったんだが・・・

 流石に魔王の前で私情は出さないか。

 いや、それにしては魔王の前でワイワイしてた気が・・・

 ダメだな、深く考えすぎるとキリがない。


 「何だ?」

 「今、そこにいる・・・人間の処分はどのように?」

 「それは変わらない。カムント城へ運んだ後、封印する」

 「・・・」


 みんな考え込んだような顔になる。

 丁度、ルフェシヲラが考えていたことと合致するんじゃないだろうか。

 俺を殺した方が手っ取り早いということ。

 おおよそそんな考えだろう。

 ・・・どうせ。


 「異論はあるか?」


 魔王の言葉に、しばらくしてうなずく悪魔達。

 一応・・・納得はしているようだ。

 険悪な雰囲気は今のところない。


 結局のところ、俺の脱出は無理だったということだ。

 でも、それにしたって救出しようとしていた、召喚王の所が安全って訳ではない。

 召喚王にくだっても、俺をめぐっての争奪戦はあるだろうし、何より召喚王が俺を殺すかもしれない。

 どうやって俺を使うのかは分からないが、だからこそ殺されるという考え方も出来る。

 どっちみち危険だ。


 俺が中央執行所から逃げたのは、その場で殺されるかどうかの危機的状況だったからだ。

 魔王は叙情酌量の余地ありみたいなことは言っていたが、それもあの時点では怪しかった。

 今は、こうして拘束されても殺されてはいないので、一応ある種の信用は出来る。

 だから逆に、封印とやらを実行することも、信憑性が高いってことだ。


 それはまずい。

 まずいと言うか、嫌だ。

 封印って檻とかに閉じ込めるとか、そう言うことではないっぽいし。

 出来ればそれは避けたい。


 が、望みはすれど、実際に避けることが出来るかどうかはまた話が別だ。

 今の状況は、明らかに逃げられない。


 謁見の部屋では、魔王が1人いただけだった。

 警備が不自然な程脆弱だったおかげで、俺は逃げ出せた。


 今はその真逆。

 警備と言うか、周りの目が多すぎる。

 しかも、ここは空中要塞。

 ガラスを見れば、どこまでも続く黒い雲、雲、雲・・・

 物理的な脱出は不可能。

 誰かからの手助けがない限り。


 ララは拘束中。

 召喚王は黒龍(ブラックドラゴン)をけしかけて失敗。

 むう・・・


 召喚王の他にも、俺を狙う奴はいる。

 魔王も後々襲撃があるだろうことは、悪魔の面々に伝えていたし。

 でもだ。

 さきほどのヴァネールの戦いぶりを見たら、もうそれは諦めた方がいいんじゃないかと思えてくる。

 極太のあの光線・・・

 そして巨大な十字架型の大剣。

 マトモな奴は太刀打ち出来ない。


 無理・・・か?

 確かに助けが来る可能性は薄い。

 しかし、諦めてしまっては何も始まらない。

 諦めないことが肝要だ。

 こんな時こそ根性論。

 そう自分に言い聞かせる。

 そうしないと、不安と恐怖で俺の心は一杯だ。


 本当はちくしょうと大きく叫んでやりたい。

 そんな気持ちは確かにある。


 しかし、それを理性で抑えるのだ。

 絶対にヤケにはなるな。

 今は少なくとも、だ。


 「では、各自持ち場に戻って、緊急時にも先ほどのように対応するように」


 魔王がそっけなくみんなに伝える。

 こうして結局俺は、また檻に閉じ込められることになった。



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