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この世界でただ1人の人間の戦い  作者: 冒険好きな靴
第4章 地獄篇 空中要塞アネンヴァング
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65話 牢屋の生活2

 〜8日目〜


 前の鉄格子生活と何にも変わらない。

 配膳係は以前のままロンポットだ。

 彼は変わらず気軽に話してくるが、俺の処分について話がいきそうになると、途端に話を逸らす。

 俺に気を使っているのかどうかは分からない。

 だが、彼はそうした態度を貫いていた。


 後はくだらない話をするだけ。

 たわいもない世間話って奴だ。

 どこどこでアイツが転んで面白かったとか、調理に失敗して飯が黒こげだとか、そんな話。

 でもたまに、有益な話をしてくれることもある。


 「なあ」

 「ああ?」


 俺は飯を食いながら、それを見張っているロンポットに声をかける。

 大概俺達が話すのはこの間だ。

 30分くらいは時間がかかるからな。

 その間無言って言うのは精神衛生状あんまりよろしくない。


 「黒龍(ブラックドラゴン)が襲ってたろ、昨日」

 「ああ」

 「何か色々個性的な服装してたよな。忍者とか・・・」


 そう聞くと、ロンポットはニヤリとして返答した。


 「あのメンバーは現世に行った奴ばっかだからな。現世に少なからず影響されて帰ってくる奴も少なくない」

 「へえ・・・」

 「例えば、ルフェシヲラなんかはスーツ着てるだろ?現世に行った時にこれだ!とか閃いてマネしたらしいぜ?よほど気に入ったのか、もう何年もスーツしか見てないし」


 ルフェシヲラがか・・・

 スーツ姿じゃないルフェシヲラはちょっと想像出来ないな。


 「じゃあ、忍者姿の奴・・・セスタとかもか」

 「そうだな。あいつは現世のオタクって人間の種族が着てるのを見て、動きやすそうだからって着てるぞ。実際動きやすそうだな、あれは」


 オタクか・・・

 記憶は失っているが、オタク自体は知っている。

 あれだ。

 アニメとかコスプレする奴等だ。


 「オタクなんて言葉、よく知ってるな」

 「ああ・・・俺が現世で魔物を狩った時期にはマリア様がいたからな。知識付与はもう知ってるんだろ?マリア様の自宅で過ごしたって聞いたぞ」

 「ああ・・・知識付与ね」


 知ってる。

 俺も1回受けた。

 おかげで地獄の文字が理解出来るようになった。

 あれは反則技だよな。


 「それにしても、黒龍(ブラックドラゴン)と戦った悪魔みんな強かったな、お前も」

 「だろ?」


 おだててみたら、案外簡単に乗ってきた。

 コイツちょっと天然入ってるのかもな。


 「だって俺も含めたあのメンバーは、みんな隊長クラスか側近やってる奴らだからな。当然あれぐらい出来なきゃ勤まらない。まあ、結局幻想種は倒せなかったけどな・・・」

 「いやいや・・・あんな化け物相手に押さえ込むだけでも、十分アホくさい強さだけどな」

 「化け物か・・・地獄にはあれ以上なんてゴロゴロしてるぜ?」


 あれ以上って・・・ヴァネールか。

 あのじいさんの攻撃は・・・凄いの一言に尽きる。

 どんな奴も敵わないんじゃないのか?


 「騎士団?の隊長以外もいたのか?あの中に」

 「いたな」

 「どれがどれだか分からなかったな・・・」


 ロンポットは親切心からか、哀れみを感じているからか、俺から話題を振ると答えてくれる。

 顔つきは優しいし、見た目と性格が見事に合致しているところが好印象だ。

 ルフェシヲラは冷たい顔つきだったな。

 アイツも見た目と性格が合致しているが、好印象とは全く逆の感想しか浮かばない。


 「魔王様の側近がセスタとルフェシヲラ。ルフェシヲラは秘書兼任だな」

 「あの忍者悪魔が側近なのか」

 「アイツは魔王様にいつもビッタリだぜ。隠れながらだけどな」

 「ん・・・」


 にしては謁見の部屋には、俺と魔王しかいなかった気がする。

 あの時も影から見てたのか?

 でも、見てたら速攻で俺を捕獲か殺そうとしただろう・・・

 うーん、分からん。


 「後は・・・俺とエイシャとポポロ、後はシャミールが隊長だな」

 「お前・・・隊長だったのか」

 「隠していて悪かったな」

 「・・・なんでそんなことを教えてくれるんだ?」


 隠すのはまだいい。

 だが、せっかく隠していたのに何で今更話す?


 「もう教えてもいいからさ。この1週間でお前の傾向はもう分かったってお達しがあったんだよ」

 「・・・あれか?こっそり俺の様子をどこかで見てたのか?」

 「俺には分からん。俺はただここで飯運んで、お前と話していただけさ」

 「そっか・・・」


 まあ、話半分に聞いておこう。

 嘘付いてるかもしれないし。


 「確か、魔王は第2隊長とか言ってたな・・・」

 「ヴァネール様だな」

 「いや、それは知ってるけど・・・第2とか第3って隊長の階級みたいなものなのか?あれは」

 「そうだな。数字が1に近ければ近い程強いと思っていい。全部で13隊の戦闘職だな」


 13隊もあるのか。

 規模がでかい。

 そりゃそうか。

 現世で言う警察みたいなもんだもんな。

 でも、ダゴラスさんは悪魔みんなが警察みたいなもん、とも言ってたが。


 「第2隊長であれだから、第1隊長は正真正銘の化け物なんだろうな」

 「ああ・・・あの方こそ本当の意味で化け物だな。なんせ、レッドドラゴンだからなぁ」


 唐突に遠い目をするロンポット。

 なんか憧れでも抱いてたのか?


 「第1~第4隊長は全員化け物だな。お前の逃亡を手伝ったララ様は第3隊長だ」

 「おお・・・だったら凄い強いんだ」

 「お前を逃がせなかったのは実力が出せなかったからか・・・と俺は睨んでる」


 或いは俺が邪魔だったから・・・か。


 「ちなみに、俺は第10隊長な」

 「そうなのか」

 「反応がやけに薄いな」

 「いや・・・第2隊長とか第3隊長とか見てるとどうしてもな」

 「まあ・・・あの方達と比べるとな・・・」


 ここでお互い沈黙。

 うお、気まずい・・・


 俺はさっさと飯を食べ終えて、ロンポットに食器を渡す。

 囚人の立場なのに、結構な量の飯を食わせてもらってる。

 味は・・・気にはするまい。


 「んじゃ、また来るぞ」


 彼の足音が廊下に響き渡る。

 これから、こんな日々を送るのか・・・




 ---




 〜9日目〜

 

 何もすることがないと、運動不足になってしまう。

 いざって時に動けないと、後々後悔するだろう。

 だから、狭いスペースの中でも運動することに決めた。


 走るのは無理そうなので、ここは腹筋とか背筋、腕立てなどの王道を攻めるべきだろう。

 ムショトレーニングって奴だ。

 略してムショトレ。

 囚人なんかが暇つぶしとかするのに行う、アレだ。


 俺の体は元々恵まれているようで、中々快適に動いてくれた。

 試したところ、途切れなく腹筋、背筋、腕立てを100回することが出来た。

 しかも、腕立ては片手でだ。

 左腕は斬り落とされてないので、右腕だけを鍛えた。


 バテバテだけども、途切れることなくこなせたのは意外だった。

 前世では、運動とかやってたんだろうか。


 そういえば、戦う時なんかの反射神経も結構よかったな。

 素早く動くものに対して、さほど遅れることなく反応してた。

 きっと前世では、そういう環境で生きてきたんだろうな、俺。


 運動はストレス解消になって良い。

 スッキリする。

 ただ、汗まみれのままなのがたまにキズだ。


 シャワーがないんだよな。

 いい加減体が汚くなってきた。

 臭いような気がする。

 自分で自分を臭いだなんて思い始めたら終わりだな。




 ---




 〜10日目〜


 今回は珍しく、ロンポット以外の悪魔が俺の元へやってきた。

 重力使いの女悪魔、エイシャだ。

 エイシャはロンポットが飯を運んできたのと同じように飯を持ってきた。

 ・・・何の風の吹き回しなんだか。


 「会ったのはこれで2回目ね」

 「そうだな」

 「ほら、ごはん」


 そう言って、飯を鉄格子の空いたスペースから入れてくるエイシャ。

 毒でも入ってるんじゃないだろうな・・・


 「食べたら?」

 「ああ・・・」


 俺をじっと見てくるエイシャ。

 むう・・・食べない訳にはいかないか。

 しぶしぶ俺は飯を食べ始める。

 そうして俺が、パクパクと黙って飯を口に運んでいると


 「貴方はさ、ここに閉じ込められて脱出したいって思わないの?」


 いきなりそんなことを言い出した。

 ・・・脱出出来たらとっくのとうにしてるっつーの。


 「したいけど出来ない」

 「・・・そうだよね」


 そうだろ。

 だからここにいるんだろ。

 なに考えてんだ?コイツ。

 俺をバカにしたいのか。


 「んー貴方って、心の余波も何も感じないから、何考えてるかさっぱり分からないのよね。私、顔見て気持ちを理解するのあんまり得意じゃないから」

 「心を読むことに頼ってたら、普通表情で判断しなくていいんだから当然じゃないのか?」


 そう。

 それは便利な機械に頼って、自分自身の技術や価値を気が付かない内に落としてしまうこととよく似ている。

 頼りすぎたらダメなものなんて、腐る程ある。

 いざって時に、自分が役に立たなくなるからな。

 だから俺は、常識は害悪にもなりえると思っている。

 多分、悪魔も同じじゃないのか?

 よくは知らないけど。


 「そうね。よくよく考えてみたらそうね・・・」

 「・・・」


 彼女にそんな考え方はなかったらしい。

 こっちもこっちで天然なんだろうか。

 いや、それが常識だと思う場合、気付かないのは当然か。

 ・・・だって常識だし。


 飛行機は水を潜れる。

 車は宇宙に行ける。

 水道水は爆発する。


 そんな常識なんて、現世の人も想像しないだろうから。

 そんな発想をする奴は、狂ってるとか言われるのがオチだ。

 視野が狭いとは、こういうことも言うんだと俺は思う。


 「いえね、心が読めないのは、魔王様以外に見るのは初めてだからさ」

 「・・・ん?」


 魔王の心が読めない?

 今、そう言ったかコイツ。


 「心、読めないのか?」

 「・・・あれ?言っちゃダメだったんだっけ」


 ・・・ああ。

 コイツは天然確定だな。

 秘密厳守の契約も、コイツの前では無意味と化すだろう。

 味方につけたら油断出来ないタイプだ。

 まあ、これは俺にとって都合がいいと言えるが。


 「まあいっか。もう言っちゃったし」

 「・・・何で魔王の心が読めないんだよ」

 「読めないから読めないのよ。仕方ないでしょ?」


 そうか、読めないから読めないのか。

 つまり、何で読めないのか分からないんだな。

 かなりアバウトだな。

 色々ツッコミたいが、ここは我慢してよう・・・


 「にしたって何で・・・お前がここに?」

 「あら、悪い?」

 「悪いとかはないけど、正直怪しい」

 「何もしないわよ。あなたに興味があってここに来ただけだから」


 興味か。

 人間は地獄では珍しいもんな。

 見るなら今の内ってことか。

 ヤジウマみたいなものだろう。


 「貴方、私と1回戦ったでしょ?」

 「ああ・・・そういえば戦ったな」

 「現世で見た人間よりもかなり強かったわね」

 「強かったか?」

 「ええ、人間と比べると物凄くね」


 褒められているのか。

 まあ、悪い気分にはならない。


 「あの強さだったら、強い魔物もあしらえるんじゃないかしらね」

 「倒したよ、闇の器の捕食者(ブラックイーター)って言ったかな」

 「かなり強い魔物じゃないの」

 「どのくらい強いんだ?」

 「んーそれなりの上級騎士が複数でで倒せるくらい・・・かしら?」


 そうなのか。

 まあ、ダゴラスさんの魔剣は強かったからな。

 人間の腕力でもブンブン振れた。

 そういえば、ダゴラスさんの魔剣は森に放置したらしいが、そのまま置きっぱなしなのだろうか?


 「でも、今の貴方からはまるで強い感じがしないのよね。戦った時と今じゃあ、ホントに別人みたい」

 「・・・これが俺のデフォルトだ。あの時の俺はどうかしてたんだよ」

 「ふーん」


 彼女は今の俺と逃走してた時の俺にギャップを感じているようだ。

 だが、俺にそれで興味を持たれても困る。

 何で俺はあんな強くなれたかなんて、よく分からないし。


 魔剣のせいだということは分かる。

 だが、それ以上は分からない。

 魔王は地獄以外の何かとか言ってたが、その言葉の意味も分からない。


 「そっか・・・」


 そう言って、俺から目を逸らしたエイシャ。

 もう聞きたいことはないらしい。

 そうして、また1日が過ぎていく・・・



 ---




 〜11日目〜


 俺がベットで横になっていると、急に遠くから爆発音が聞こえた。

 何事かと、悪魔達が騒がしくしている声も。

 1時間ぐらいは遠くから戦闘と思わしき音が廊下から響いてくるが、それ以降は何の音沙汰もなくなった。


 その後、飯の時間に来た配膳係りは、ロンポットでもなく、エイシャでもなく、ボロボロのマントに身を包んだ狂人悪魔。

 ポポロだった。


 ポポロは俺の飯を持ってきて、いつもどおり鉄格子の空いたスペースから飯を入れてくる。

 ・・・何でまた飯を持ってくる奴が変わった?

 俺がそう思っていると・・・


 「あっ・・・あのね、怖い魔物が攻めてきたから・・・みんな忙しいんだ・・・」

 「・・・」

 「だから・・・ぼ、僕が運ぶことになったんだ・・・」


 ・・・そうなのか。

 相変わらず、戦闘と今の状態のギャップが激しすぎて戸惑ってしまう。

 いかん。

 俺が何にも答えないから、ポポロが不安がっている。


 「そうなんだ。ありがとう」


 ぎこちない笑顔を浮かべながら、お礼を言ってみる。

 荒い言葉もなんだから、出来るだけ優しく言ってみた。

 スー君と話したことを思い出せ、俺よ。

 あの時俺は、どんな言葉使いをしていた?


 「食べ・・・て・・・」

 「うん」


 何か変な空気が漂っているが・・・まあいいか。

 俺は構わずいつも通り飯を食べる。


 「あっあの・・・」

 「ん?」


 恥ずかしがるような、怖がるような態度で俺に話しかけるポポロ。

 んな臆病にならなくてもいいだろうに。

 逆に、俺の方が怖いくらいなんだから。


 いつ、あの狂人モードに入るか分からない。

 今はこうだが、急に凶暴になられたらこっちが怖い。

 気が抜けないのだ。

 だから、なるべく刺激しない方がいいだろう。


 「セスタから・・・きっ聞いたんだけど・・・マリア様の家に居たって・・・本当?」

 「うん、いたよ」

 「・・・なんで?」

 「助けてもらったんだ」

 「いいなぁ・・・マリア様の・・・家に泊まれて」


 だろうな。

 マリアさんはカウンセラーって聞いてるし、誰にだって優しいだろう。

 もしかして、コイツもマリアさんにカウセリングを受けてたりするんだろうか?

 何かそれっぽいぞ。


 「マリアさんを知ってるの?」

 「うん・・・沢山・・・お世話になった」

 「そうなんだ。優しいもんな、マリアさん」

 「うんっ」


 優しい笑顔を浮かべるポポロ。

 狂気的な笑みとは全く別の笑顔だ。


 「そう・・・だよね。優しいよね」

 「そうだね」

 「マリア様の家・・・誰も分からないの・・・だから会えない」


 誰にも分からない・・・

 そうか。

 物資とかは、転移の陣で送ったり送られたりしてたんだっけ。

 ダゴラスさんは例外的に、転移を個人で行使出来るらしい。

 個人で保有するエネルギー量が、例外的に莫大だからだ。

 自給自足出来るなら、孤立も起きるというものだろう。


 現世ではそんなことは滅多に起こらない。

 社会に寄り添って生きていかないと、生存出来ない弱い人間ばかりだ。

 それは金という線で縁が繋がっている社会。

 中々自給自足が出来る人間はいないだろう。


 「もしかしたら、人間が知ってるかもって・・・セスタが・・・」


 なるほど。

 それで俺に話したって訳か。

 自分に配膳係りの役割が回ってきて、チャンスだと思ったんだろうな。

 だが・・・


 「ごめんね、マリアさんの家は知らないんだ」

 「えっ・・・」

 「転移で街に飛ばされたからさ・・・家の場所が分からないんだ」

 「そっ・・・か」


 なんか意気消沈してしまった。

 デリケートだなぁ・・・


 「本当にごめん」

 「うっ・・・うう・・・」


 むむ!

 これは・・・やばい。

 ポポロが泣きそうな顔になっている。

 顔がクシャクシャだ。

 いくらなんでもいきなりすぎるだろう・・・

 頼むから泣くなよ・・・泣くなよ・・・


 「うっ・・・」


 俺の祈りが通じたのか、ポポロはギリギリのところで泣くのを堪えた。

 そのまま涙をボロボロのマントで拭きながら、フラフラと来た道を戻っていく。


 「ちょっ・・・ちょっと待って!ごはんまだ食べ終わってない!」


 食器は持って行かなくてもいいのか?

 別にどうということはないんだろうけど、ここに置いておくのは衛生的によくない。

 出来れば持って行って欲しいんだが。


 だが、俺の言葉はポポロの耳に届かず、そのまま立ち去ってしまった。

 あーあ。

 置いて行っちゃったよ。


 「・・・まあいいけどさ」


 俺は残った飯をまた食べ始めることにした。



 ---




 〜12日目〜


 ロンポットに昨日のことを話した。

 主にポポロが来て、泣いて帰ってしまったことを。

 それらを伝えると、ロンポットは珍しがる顔をした。


 「いやあ・・・まさかポポロが泣くとはな・・・」

 「珍しいのか?」

 「結構長い付き合いだけど、ポポロが泣いたところを俺は1度も見たことがない」


 その割には、俺の前でいとも簡単に泣いてたがな・・・


 「どうやって泣かしたんだよ?」

 「マリアさんの家はどこかって聞いて、それで俺が分からないって答えたら泣いた」

 「・・・」


 ロンポットは俺の話を聞いて、少しの間考えたようなそぶりを見せる。

 そして・・・


 「そうか・・・マリア様は色んな奴らに恩があるからな・・・」

 「へえ、どんなさ」

 「それは言わないぜ。お前の世界で言うところの・・・プライバシーってやつだ」

 「そうかい・・・」


 それなら聞けないな。

 悪魔の深いところまで踏み込む程、俺は親しくないし。

 詮索するのは止めておこう。

 何より、俺の気分が悪くなる。

 他に聞きたいこともあるしな。


 「じゃあ、昨日は何の騒ぎだったんだ?爆発が聞こえてきたぞ」

 「おう、ここまで聞こえたのか」

 「小さい音だったけどな」

 「まあ、魔物が襲ってきたんだよ。目当てはもちろんお前な」


 やっぱり魔物か。


 「お前も出てたのか?」

 「ああ、よく掃討戦には駆りだされるんだ。俺の能力は集団戦にピッタリだからな」

 「あのでかいハンマーを使ってか?」

 「俺の能力はもっと別さ」


 ハンマー以外にも戦う方法があるのか。

 ・・・気になるじゃないか。


 「何で戦ったんだよ?」

 「教えない。まあ、お前が逃げ出しそうになったら見せてやるよ」

 「・・・そっか」


 思わぬカウンターを食らった気分だ。

 教えてくれる気はないらしい。


 「ま、そういうことだな・・・」


 そういうことらしかった。

 ロンポットは話が終ったと言わんばかりに立ち上がる。


 「ポポロが置いてった食器、持ってってくれ」

 「おうよ」


 スペースから食器を押しやり、ロンポットが受け取る。


 「それじゃあな」


 それが、俺が今日聞いた、最後の言葉だった。




 ---




 〜13日目〜


 特に伝えるべきことはない。

 静かに1日が終った。


 体がなまらないように運動して、飯を食って。

 ただそれだけだ。

 何もなかった。

 だが・・・


 だがそれは、嵐の前の静けさというやつだったのだ。 


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