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この世界でただ1人の人間の戦い  作者: 冒険好きな靴
第3章 地獄篇 ラース領ラース街
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49話 人間と中級騎士2人

 土から出てきた者。

 それは、新たな悪魔の騎士だった。


 援軍だ。

 どうやら、風使いの悪魔に気を取られすぎたらしい。

 地面から新たに現れた騎士は、これまた強そうな雰囲気を纏っている。

 

 「やっと来たか」


 風使いの悪魔は、新しく来た悪魔にそう言った。


 「だいぶ消耗したな・・・人間相手に」

 「人間だからといってなめるなよ?コイツ強いぞ」

 「ほうほう」


 新しく来た悪魔は俺をじっくりと見始めた。

 品定めでもしているかのような目で。

 余裕ぶっこいてやがる。


 「そうは思えないんだが・・・」

 「だが、魔剣からは凄いエネルギーを感じるだろ?」

 「魔剣からはな。確か、ドレインか」

 「俺の強化した風も吸い込まれる」

 「なら、俺も同じか・・・」

 「俺はもう殆ど能力を使えそうにない」

 「そんなに消耗したのか」

 「コイツ強いって言ったろ?」

 「・・・まあ、戦えば分かるさ」


 この野郎。

 悠長にお喋りなんかしやがって。


 俺は2人の話を待たず、地面を蹴る。

 この悪魔の騎士達からは、恐らく逃げ切れない。

 チャントを第2段階まで上げてくる相手と、俺の速度を比べると騎士の方が恐らく速いからだ。

 だから、俺は風使いの悪魔の方へ走った。

 魔剣を振り上げて。


 複数戦の鉄則・・・消耗している奴からまず排除。

 風使いの悪魔に一気に近付く!


 だが、それは俺の前方に急に盛り上がった岩石によって阻まれた。

 岩?

 土の能力?

 俺はその障害物を乗り越えようと、さらに勢いを強くするが・・・


 「うお!」


 俺と悪魔を阻んだ岩から、突如として鋭い針が生えてくる。

 岩で出来た針だ。

 針はかなり速いスピードで俺に伸びる。

 俺はそれを横にかわすも、頬にかすり傷が出来てしまう。


 「おう!あれをかわすのか!」


 土使いの悪魔は驚いたように言った。


 「強化も無しでまさかかわすとは・・・」

 「だから言ったろ、強いって」

 「話が違うじゃないか。人間は弱いんだろ?ルフェシヲラ様の言っていたことと違うじゃないか」

 「そんなこと言っても仕方ないだろ?でも、人間って無詠唱で能力を使えるほど強かったのか?ドレインは魔剣だからいいとして、この身体能力は・・・」


 また話を始めやがった。

 ルフェシヲラとか誰かも分からない名前を出しているが、こいつらの上官だろうか?

 俺が脱走したことはもはや周知の事実だろうから、上官か誰かが知っていてもおかしくはない。

 そいつの指示でここに来たのだろうか?

 だとしたら、余計に時間はかけられない。

 他の悪魔が到着したということは、いつ他の悪魔がここに辿り着いてもおかしくはない。

 その上官だってここに来るかもしれないし・・・

 中級騎士とかいう奴1人でもこんな時間稼ぎをされるぐらいなのに、これ以上敵が増えたら本当にマズイ。


 このまま膠着状態が続くのは、大変よろしくない。

 俺はまた攻撃を仕掛けることにした。

 次は土使いの悪魔に。


 風使いの悪魔は、疲れているかのように、息を切らしている。

 なら、ソイツへの攻撃を妨害する奴を優先した方がいい。

 どうせ風使いはそんなに動けない。


 さっきは突然の攻撃に思わず避けてしまったが、予め予想しておけば対処出来る攻撃だった。

 針の攻撃を避けている場面に驚く程だから、あれ以上速い攻撃はしてこないとは思う。

 恐らくだが・・・


 俺は土使いの悪魔に向かって走る。

 今度は全速力で。


 「うお!速えぇ!」


 土使いの悪魔はまたしても驚く。

 能力を唱えてもいないのに、この速さを叩き出すことに驚いているんだろう。


 「老練なる大地よ(イング・マトラス)!」


 悪魔は、俺の聞いたことのないルーンを勢いよく唱えた。

 すると、俺の前方の地面が、急激に何箇所か高く盛り上がる。

 俺の身長くらいの高さだ。

 大地はそれに合わせて波打ち、俺の走りを邪魔してきた。


 「食らえ!」


 土使いの悪魔がそう叫ぶと、盛り上がった土から玉を飛ばしてきた。

 まるで砲台のように。

 野球ボールサイズの小さな玉。

 しかし、その玉は異常な速度でこっちに飛んでくる。

 200キロは出てるんじゃないのか?

 それが真っ直ぐ、複数同時に俺を襲ってきた。


 「こんの!!」


 しかし、俺はそれを見切って見せた。

 森で魔物と戦った時のことを思い出す。

 あの魔物は直線的な攻撃ばかりだったが、スピードはあった。

 この土の弾丸は直線的な軌道をしている割りに、魔物程の速さではない。

 感覚だけでなく、身体も大幅に人間の限界を超えた俺がかわせない程ではないのだ。


 「これもやっぱりかわすよな」


 予想していたかのように笑う悪魔。

 続々と岩石を複数打ち出してくるが、俺はそれを右へ左へ避けながら土使いの悪魔に接近していく。

 が、俺の進行方向先の地面から、太い土の針が続々と生え出した!


 「こっの!」


 土の弾丸をかわしながら針を避けるのは少し難しい。

 数の力でかわしきれなくなった俺は、弾丸を魔剣で弾いていく。

 能力が崩壊していく音と、連続で能力を打ち消す音が聞こえる。

 攻撃の間隔がどんどん短くなっていく。

 土の針はまだまだ生え続けていた。


 「すげえかわすな・・・人間」


 土使いの悪魔はそう言いながら、両手を地面に置いていた。

 そうか、手で触れないと土を操れないのか。

 あれを止めさせれば攻撃は止まる。

 ともあれ、接近しないことには話しにならない。

 遠距離で攻撃出来る手段を俺は持っていないからだ。


 幸い、進行を妨げられる程の攻撃ではない。

 走りながら岩石を打ち消し、針を避ける。

 俺は相手の連続攻撃に慣れてきたことを体で感じながら、再び前へ走り出す。

 

 「やっぱ俺だけじゃダメだ!セムトラ手伝え!」

 「分かってる!」


 突然ビュッ!と音が鳴る。

 途端に、俺を吹飛ばす程の風が横から体に直撃した。

 風使いの悪魔はまだ能力を使えるのか!

 意外な所からの攻撃に、防御が遅れてしまう。

 そのまま風の力によって飛ばされた。


 俺の飛ばされる先には、土の針が生えていた。

 土の能力発動後、そのまま残った針だ。

 このままじゃ串刺しだ。

 俺は風の流れに逆らって、無理矢理地面へ魔剣を突き刺して着地した。

 今の俺の腕力であればこそ、可能な選択だった。

 

 それにしても、強い能力の使い手が2人同時か。

 さっきは不意を突かれたとはいえ、これはやっかいだ。

 死角から俺を妨害する風。

 土の弾丸と針の同時攻撃。


 ・・・これは厄介だ。

 俺が敷地内を駆けている時に攻撃していた悪魔の兵達程度の実力。

 或いは知能の低い魔物相手だったら何とかなっていたかもしれない。

 だが、ある程度の手練がコンビを組むと、話が変わってくる。

 単体では成し得なかったことも、連携であれば戦術と言うのは一気に幅広くなる。

 その攻撃に対応しきれるかどうかは、かなり怪しい。

 例え、片方の悪魔が本来の実力を発揮出来ないとしてもだ。


 相手は変わらず岩の弾丸を撃ってきている。

 土の砲台の位置は変わっていないのに、全て正確に俺へと当てに来る。

 さっきの悪魔達は、大した距離でもないのに、俺に攻撃を当てられなかったからな。

 複数の攻撃をこなしながらも、この正確さは流石悪魔の騎士だと言わざるおえない。


 相手はそこら辺の兵よりも強い。 

 だが、戦わなくてはいけない。

 元々逃げられない状況を覚悟して突き進んだんだろうが。

 やるしかないだろ!

 

 俺は飛んできた岩の弾丸を正確に捕らえる。

 1台の砲弾が放つ間隔は意外にも遅い。

 俺がかわし切れず攻撃を打ち消しているのは、大量の砲台が俺の周りを取り囲んでいるからだ。

 質より量ってことだ。

 それを利用してやる。


 この魔剣は相手の攻撃に対して、圧倒的に強すぎる。

 攻撃に触れた瞬間、弾丸が跡形もなく消えてなくなってしまうから。

 俺の手には何かを打ち消した感覚が全然無いくらいだから。

 それ程の武器を持っていながら、今は苦戦している。

 

 問題なのは俺だ。

 いくら人間の限界を超えたといっても、戦闘能力的には中級騎士と同等程度だ。

 魔剣がいくら強くても、担い手が所有物に見合わなくては意味がない。


 だから俺は、魔剣の持つ能力の段階を大幅に下げる。

 相手の岩の弾丸は高威力ではあるが、ランク的にはそんなに高くないはず。

 第2段階の土の能力から放たれたのであれば、これも第2段階ぐらいの弾丸だろう。

 そのランクに、俺の魔剣を合わせる。


 この魔剣と感覚を共有しているから、能力の段階の下げ方ぐらいは理解出来た。

 魔剣は口では教えてくれずとも、感覚で俺に教えてくれる。

 俺はその感覚に黙って従う。

 ただそれだけで、この魔剣のことが殆ど分かったような気になれるのだ。


 周囲から、複数の弾丸が飛んで来ているのが分かる。

 第2段階同士でドレインをぶつけても、そのまま難なく打ち消すことは出来るだろう。

 今回、俺はそれをしない。

 持っていた魔剣のランクをもう少し下げる。

 そして、俺はそのままの状態の魔剣を振う。

 野球で言う、バッターの構えで。


 「いっけぇぇ!!」


 ガァン!と音がする。

 そのまま岩の弾丸を打ち返したのだ。


 この魔剣に触れたものは、全て能力による攻撃を打ち消される。

 だが、その打ち消す力を加減して操作すれば、その攻撃をある程度消失させずに留めておける。

 ドレインで少しの質量と攻撃の勢いを打ち消して、剣で受け止めるのだ。

 さっきから何回も岩の弾丸を打ち消しているから、どの程度力加減をすればいいかは分かっていた。

 ドレインの効果で攻撃の勢いは殆どなくなるから、後はそこを打ち返せばいい。

 もちろん、土使いの能力者に向かって。


 「打ち返した!?」


 攻撃を放った悪魔は驚く。

 さっきから攻撃を打ち消してばかりだったから、いきなり弾き返してきたのには驚いたのだろう。

 だが、驚いてもそこは中級騎士だ。

 とっさに岩壁を地面から作り出し、弾き返された弾丸から身を守る。

 それと同時に、周囲の砲台から攻撃が止まる。


 「よし!」


 この防御で出来た一瞬の隙。

 俺は即座に砲台の中心から抜け出す。

 走る先は風使いの悪魔。

 まずはお前を叩き切ってやる!


 「俺か!」


 風使いの悪魔は砲台の壁を利用して、俺の隙を伺っていた。

 風使いの今出来ることは、精々が土使いのサポートだ。

 なら、俺の追いつけない風による高速移動も出来ないだろう。

 今がチャンス!


 「させるか!」


 土使いは叫び、俺の全体に土の針を出現させる。

 だが無駄だ。

 俺は針をかわし、打ち消して、殆どスピードを落とすことなく風使いの元へ走る。

 針の攻撃のみであれば、かわすのは簡単だ。


 「クソッ!!守りの壁よ(オセル)!」

 「無駄だ!この風野郎!!」


 風使いは、最後の抵抗と呼べるような声で、結界のルーンを唱えた。

 しかし、俺はその結界を簡単に突き破る。

 こっちは結界破りの魔剣を持っているのだ。

 こんな初級の結界で妨げられるようなら、とっくに俺は死んでいる。


 結界を破った先には、風を纏った剣を持つ、風使いがいた。

 どうやら真っ向から対峙するらしい。

 上等だ!!


 風使いは、剣を空中に振るって風を放ってきた。

 俺は剣を突き出して、風を裂きながら打ち消していく。

 その風に合わせて、風使いは俺に肉薄してきた。

 風でリーチを伸ばした剣を持って。


 リーチを伸ばせば、近接で戦闘をした時相手は有利だ。

 本来なら、意味のあった行為。

 それは全て強力なドレインで消滅する。


 金属音が広がる。

 剣と剣が打ち合った音。

 さらにドレインの能力が発動して、剣の風が消失する。

 だが、それでも相手の剣は止まらない。

 そのまま剣で戦うつもりなのだろう。


 相手はかなりエネルギーを消耗している。

 俺が近接戦闘で負けるのは考えにくい。

 やってやる!


 俺にとって初めての、剣同士の戦いが始まった。

 

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