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「昨日もこの森に来たんやろ?」

「うん」

「え?なんで分かったんですか?」

「上、見てみ」

「……?」


街を出て、昨日の森へ入った。

改めて見てみると、ヤゥトの森にはないような大きな樹ばかりで。

秘密基地の樹なんて、何十人が手を繋げば囲めるんだろうってくらい大きくて。


「あー…何ですか、あれ?家…?」

「ヤクゥルの人は昔、こういう樹の上に住んでてんな。ほんで、昔も今も、ヤクゥルの人にとってこの森は、ゆうたら聖地や。ここから力を貰ってるんやな」

「へぇ~。初めて聞きました」

「ヤクゥル以外の人には滅多に話さんからな。まあ、そんだけ大切なもんってことや」

「じゃあ、なんでお兄ちゃんは話してくれたんだ?」

「ほんの短い間の付き合いやけど、オレにとってお前らは大切なもんになってるっちゅーこっちゃな。…言わせんなよ、恥ずかしい」

「大切なものか…」

「オレが勝手に思てるだけやから、望は無理に思わんでもええで」

「そうですね…」


望は少し俯いて、またすぐに顔を上げた。

寂しそうな表情を浮かべていたけど、でも、なんだか嬉しそうだった。


「ほんで話の続きやけど、ヤクゥルでは一年に一回、年末に樹齢祭ゆうて、めっちゃでっかい祭があんねん」

「あ、それは知ってます。参加したこともあるし」

「お祭があるのか?」

「ああ。結構有名な祭やねんけどな」

「ふぅん」


お祭かぁ。

ヤゥトにも収穫祭があったけど、あれとは違うのかな。


「せや。また年末になったらこよな。すっごいおもろいから」

「うん!」


年末が楽しみなんだぞ!


「ほんで、樹齢祭は、森に感謝するのもそうやけど、この森の主にも楽しんでもらうため…ってのもあんねん」

「主…ですか」


お兄ちゃんは歩きながら上を見て、呟くように話し始める。


「ヤクゥルの紋章でもある、鷹がこの森の主や。見た目は普通の鷹なんやけど、この森の最初から今まで…さらなる未来まで、ずっと、ずーっと見守ってるんやと。気の長い話やて」

「………」

「まあ、一年の慰労祭っちゅーこっちゃな」

「…会ったこと、あるんですか?この森の主に」

「まあな。でも、なんの不思議もない。いつも森におるんやから、会うこともあるやろ」

「…そうですね」

「そういや、最近会ってないなぁ。元気にしとるんやろか」


また上を見て、問い掛ける。

でも、答えは出てるみたいだった。


「心配するまでもないんでしょ?」

「…せやな。あいつが弱ってる姿なんて想像出来んかったわ、そういえば」


そう言ってお兄ちゃんが望に微笑むと、木の葉が揺れた。

風のせいなのか、それとも…


「ふふ、そうか」

「え?」

「いや、なんでもない」

「……?」


明日香は空気の匂いを嗅いでいた。

お腹、空いたのかな。

…でも、もしかすると主への挨拶だったのかもしれない。



森の中を歩き続ける。

…自分は、明日香に乗せてもらってるけど。

大きな樹が少なくなってきたとはいえ、まだまだずっと森だった。


「あ、そうだ。私には斡旋してもらえないんですか?」

「ん?あぁ、斡旋な。また今度、ヤマトに着いてからや」

「そうですか…」

「なんで?」

「ルウェも体験したやろ?契約にはえらい体力気力精神力がいる。ルウェは明日香に乗せてもらったら良かったけど、望はそうはいかんやろ?」

「そ、そんなことないですよ…」

「ルウェが疲れたら、誰が乗せたんねん」

「あ…」

「だから、ヤマトに着いてからや。分かったか?」

「うん」


明日香は頑張ってくれてるんだな。

明日香は偉いんだぞ。


「でも、適性くらいは教えてもらえますよね!」

「んー、まあええやろ」


そう言って、ゆっくり目を瞑り、また開ける。

でも開けたときには、さっきまでの透き通った黒い瞳じゃなく、火が燃えているような真っ赤な瞳になっていた。


「ふむふむ。へぇ~。なるほど…」

「ど、どうなんですか?」

「昨日、あいつがゆってたのと変わらんな。望は火の属性が並外れて強い。タルニアでもいけるんとちゃうかな」

「タルニア?」

「"灼熱"タルニア。"情熱の炎"タルクメスの使徒の一人やな。タルクメスはタルニアの他に四人、計五人の使徒がおるんやけど、タルニアは一番強くて気性が荒い。よっぽどでないと…てゆうか、自分より強くないと契約せんっちゅーやつやねんけど」

「え…。私、大丈夫なんですか?」

「まあ、大丈夫やろ」

「えぇ…。ホントかな…」

「選ぶんは、タルニアと望や。実際に会わせんと分からん」

(会わせてあげよっか?)

「のわっ!?」


いつの間にかルウェが出てきていた。

…もう大丈夫なのかな。


(大丈夫だよ。術式は契約ほど負担は掛からないし)

「お前なぁ、いきなり出てくんなって何回言わせたら気ぃ済むんや!」

(百万回。そんなことよりさぁ、タルニアに会いたい?)

「あー、やめとけやめとけ。せめて森を出てからや」

(…兄ちゃんは、タルニアを何だと思ってるの?)

「火事バカ」

(あながち間違ってない…って、そうじゃないよ!)

「ホントに大丈夫なんですか…?」

(大丈夫大丈夫)

「あかん!絶対に許さん!」


三人の会話は本当に面白くて。

葛葉が前に話してたマンザイって、こんなかんじなのかな。


(いっそ、五人とも喚んだら?)

「アホか!」

「ややこしいので、最初の通り、ヤマトに着いてからで良いです…」

「ほれ見てみぃ!でしゃばんな!」

(むぅ…。もう、関係なく全員喚ん…っつぅ…!)

「やめろ!殴るぞ!」

(殴る前に言ってよ!)

「喧嘩はやめようよ…」


ふふふ。

ホント、面白いんだぞ!

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