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「ふぁ…眠…」

「昨日は何かあったのか?」

「んー、祐輔の闇が出てきたくらいかなぁ」

「ほぅ」


おじさんは、聞いた割にはあまり興味がないといった風に、また薪を割り始めた。


「お、そうだ。お前、契りの証人は渡したのか?」

(あ…)

「まったく…」

(ルウェ、ごめんね…)

「チギリノショウニンって、何なの?」

(んー。聖獣から契約者にあげる贈り物みたいなものかな)

「アホか。それでもホンマに聖獣かい」

(むぅ…)

「契りの証人ゆうんは、契約者が聖獣の力を充分に引き出すための道具や。これがなかっても十二分に引き出すやつもおるけどな」

「ふぅん」

「まあ、持ってて損はないさ。少々かさばるかもしれんが」

「うん」


チギリノショウニン…。

どんなのかな。


「てか、お前、はよ渡せや!」

(あ。あはは、忘れてた)

「もう医者に行け!」

(ルウェ、手、出して)

「うん」


言われた通り、手を出す。

すると次の瞬間、何かが手のひらの上に現れた。

ちょっと小さめの刀…なのかな。

見た目ほど重くなかった。


(はぁ…。疲れた…)

「はっはっ、体力を付けんとなぁ」

(また今度ね…)


そう言って、ルウェは消えてしまった。

…そんなに疲れたのかな。


「さあて、朝ごはんにしようか」

「いよっ!待ってました!」


鉈を置いて、手を叩くお兄ちゃん。

自分も、乗ってた台から飛び降りて。


「朝早うから働かされて、ホンマ腹減ったわ~」

「何言ってんだ。ほとんど喋ってばっかりだったじゃねぇか」

「オレは喋んのが仕事やし」

「はぁ…。ホント、喋るしか能がないよな」

「おぅ。だから、喋んねん」


おじさんは、もう打つ手がないという風に肩をすくめる。


「よっしゃ。戻ろ」

「戻る前に手を洗え」

「おぉ、せやったせやった。朝からしっかり働いたからな」

「ふん」

「ほら、ルウェも」

「うん!」


お兄ちゃんの手を握ると、木の屑とかでザラザラしていた。

でも、大きくてゴツゴツしてて、気持ち良かった。



夏月はまだ寝ぼけ眼で。

大きな欠伸をしていた。


「ふぁ…あふぅ…」

「もう発つのか?」

「そうですね」

「そう…。残念だねぇ…」

「えぇっ!もう行くの!?」

「土産、いっぱいこうてきたるから」

「イヤだよ…。兄ちゃん…一緒にいてよ…」

「龍次。お前もいつか分かるときがくるやろうけど、男にはやらんならんときがあんねん。ほんで、兄ちゃんはな、今がやらんならんときや」

「うぅ…」

「な、絶対に帰ってくるから。今は我慢してくれへんか?」

「うん…」

「へへ、龍次は強いな」


お兄ちゃんは、龍次の頭をゆっくりと撫でる。

すると、もう泣きそうだった龍次はいなくて。


「夏月、起きろ。寝るのは食べてからだ」

「んぅ…」

「夏月!」


夏月はまた夢の世界だった。



しっかりと腰紐を締めなおして。


「ほなな。行ってくるわ」

「おぅ」「行ってらっしゃい…」

「忘れ物はないかい?」「兄上をよろしくお願いします」

「はい。たぶん、ないです。任せて、陽平」

「へへっ。また来いよな」

「こいよな!」

「うん。また絶対に帰ってくるだぞ」


そして、祐輔を抱き締める。

額をお腹に擦り付けて、お別れの挨拶。

祐輔も、ギュッと抱き締めてくれた。


「あの二人、何かあったのか?」

「さあな」

「いつまで経っても、あんたはニブチンだねぇ」

「ニ、ニブチン!?」

「お世話になりました」

「ああ。行ってらっしゃい」

「いってらっしゃ~い」「行ってらっしゃい」

「行ってきます!」


また次へ進む。

真っ直ぐ前だけを向いて。

…でも、ここにはまた戻ってきてもいいよね。

みんなが待っててくれているから。

温かい…家族だから。


「よっしゃ。次はヤマトやな」

「はい」

「はぁ~。また珍しい石、出てへんかなぁ」

「石が好きなんですか?」

「まあな。金剛石に石榴石…石英、翡翠、瑠璃…。たまらんわ~…。あぁ、金属もええな。金、銀、銅、白金、真鍮、黄鉄鉱…」

「…もういいです」

「ヤマトって、石が採れるのか?塩は?」

「塩も採れるけど、ヤマトの周りにはたくさん鉱山があって、いろんな鉱物が採れるんだ」

「ふぅん…」


コウザン…。

姉さまが前に高山植物って教えてくれたから、高い山のことなのかな。

ヤマトだし。

うん、きっとそう。


「珍しい石がオレを待っとる…」

「龍次へのお土産も忘れないでくださいね」

「せやなぁ…。龍次は猫目石がええやろか…。黒曜石も捨てがたい…」

「結局、石なんですね…」

「ふぅむ…」


お兄ちゃんは、腕を組んで唸り始めた。

石ってそんなに面白いのかな。

道端の石を拾って眺めてみるけど、何も面白くない。


「ふふふ。その石も良いけどね、ヤマトの石はもっとすごいよ」

「え?」

「せやな。ヤマトに着いたら、ルウェが一番好きな石、こうたるわ」

「えぇ…」

「ふふふ」


石…を買うの?

すごいって言っても、石だよね…。

大丈夫なのかな…。


石…。

良いですねぇ。

大好きです。

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