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山を下りてすぐのところに街があった。
ここがヤクゥルなのかな。
「まずは宿やな」
「そうですね。ルウェもまだ動けないみたいですし」
「うぅ…ごめんなさい…」
「何謝ってんねん。謝ったことに謝ってほしいわ」
「…ごめんなさい」
「よっしゃ、許したろ」
「ふふふ。じゃあ、行きましょうか」
「ワゥ」
まだ歩けないけど、身体を起こすことは出来る。
周りを見てみると、普通の家に混じって、いろんなお店が並んでいた。
「軒店やな。家に店が付いてんねん。いや、店に家か?」
「ふぅん」
「ユールオは、軒店と店専用が半々くらいやけどな。ここでは全部軒店や」
「へぇ~」
あ、お菓子だ。
美味しそう…。
「こうたろか?」
「光太郎?」
「人名かっ!ちゃうちゃう。買ったろかってゆうてんねん」
「良いの?」
「ああ。な、望もええやろ?」
「仕方ないですね…」
「よっしゃ」
そして、お兄ちゃんはお店の方に向かっていく。
なぜか、明日香も付いていって。
「誰かいやはりますか~」
「はいはい。お客さまですか?」
「お菓子欲しいんですけど」
「どれにしましょうか?」
「せやな…。お薦めは?」
「これですかね」
お姉ちゃんが指したのは、黒くて四角いお菓子。
何かな…あれ…。
「いくらですか」
「一本二百円になります」
「二百円かぁ…。ルウェはどれがええ?」
「うーん…」
「ふふ、可愛い弟さんですね」
「妹や」
「えっ。ホント?」
「うん」
「…ごめんね。あ、そうだ。お詫びに、キミが一番気に入ったお菓子、一袋あげるわ」
「ホント?」
「うん。どれがいい?」
「えっとね…」
いろんなお菓子があって、選べないんだぞ。
うーん…
「この丸い飴が良い」
「ダゥルね。ふふ、いっぱい詰めてあげるからね」
「ありがと」
「はい、どうぞ」
「良かったな、ルウェ」
「うん!」
「ほんでや。オレは、やっぱりさっきの貰うわ。二本。ほい、四百円」
「ありがとうございます。どうぞ、またご贔屓に」
「はいよ」
飴で、はち切れそうな袋を持って。
優しいお姉ちゃんに手を振って、お店をあとにする。
「あ、何買ってもらったの?」
「これ、貰った」
「貰った?」
「うん。お詫びだって」
「何の?」
「間違えたお詫び」
「あぁ…」
「ルウェの買い物術はすごいな。感心したわ」
「買い物術ではないような…。それに、わざと明日香に付いてくるように合図したでしょ」
「ええねん。細かいことは。それより、宿や」
「そうですね。組合の宿は…」
「あぁ、組合よりええとこ知ってるから」
「そうですか。じゃあ、そこにしましょうか」
「………」
「どうしたんですか?」
「いや、突っ掛からんなぁ思て」
「…突っ掛かってほしいんですか?」
「いいえ。そのままでお願いします~」
……?
どういうこと?
お兄ちゃんはそのまま歩きだす。
望は追いかけるように。
明日香も付いていき。
「どこなんですか?」
「行ってからのお楽しみや」
「その羊羹と関係があるんですか?」
「まあな。てか、よう分かったな」
「羊羹の匂いがしますから」
「えぇ~…するかぁ?」
「しますよ」
自分には分からないんだぞ。
望の鼻って良いんだな。
…それより、あの黒いのはヨウカンって名前なのか。
美味しいのかな…。
着いた場所は、街の外れの古い建物。
…何なのかな。
「お寺ですか?」
「昔はな」
「え?」
「あ!お兄ちゃん!」
「お兄ちゃんが帰ってきた!」
「よう。お前ら、元気にしとったか?」
「うん!」
「お姉ちゃんたち、誰?」
「私は望。この子がルウェ。こっちは明日香」
「こんにちは」
「こんにちは!」「あすか~」
「これ、お菓子?」
「相変わらず単刀直入やな、お前は。…ほれ、羊羹や。昼ごはんのあとに一緒に食べよか」
「うん!」
「あの…。ここって、もしかして…」
「ああ。孤児院や。昔は和尚さんもいたらしいねんけどな」
「おぉう。戻ってたのか」
「久しぶりやな」
みんなの騒ぎを聞きつけて裏から出てきたのは、大きなおじさん。
髪もヒゲもボサボサだけど、優しさが身体全体から滲み出ていた。
「お?可愛い子、連れてるな。お前の嫁か?」
「ち、違います!」
「はっはっ、そりゃそうか!こんな醜男、誰も欲しがらんよな!」
「大丈夫や。親父が嫁を貰えるくらいやねんから」
「俺はなぁ…」
「分かってる分かってる。それより、今日、ここに泊まらしてもらうで」
「おぅ。いくらでも泊まってけ」
「お世話になります」
「こりゃまたご丁寧に」
「ルウェ、遊ぼ~」
「こらこら。先に昼ごはんだ。手を洗ってこい」
「はぁい」「むぅ…」
みんな、家の裏へと走っていった。
裏に手洗い場があるのかな。
自分も…
「嬢ちゃん、ちょっと待ってくれ」
「……?」
「契約者か…。紹介したのはお前か?」
「成り行き上な。ていうか、あいつが勝手にルウェを引き込みよってん」
「ほぅ。珍しいこともあるもんだな。まあとにかく、お前が仲介者なら良いだろ」
「どういうことですか?」
「朝もゆうたけど、オレには師匠がおんねん。それが、この親父」
「えぇっ!?あなたも召喚師なんですか!?」
「まあな。でも、契約者ではない。斡旋をするんだ」
「斡旋…?」
「そうだ。まあ、長くなるし、昼ごはんを食いながらゆっくり話そう」
「お昼ごはん!」
やっと来た、この時間。
お腹ペコペコなんだぞ!
明日香を急かして、家の裏へと向かった。




