16
「ルウェ…起きないですね」
「心配いらんゆうてるやろ…。契約にはいろんな負荷が掛かるから、ゆうたら疲労困憊して眠りこけてるんと一緒やて」
「でも…」
「はぁ…。あのアホは、ホンマに後先考えんで…。ルィムナも止めたらええのによぉ…」
そんな会話が聞こえた。
でも、目を開ける気力もなかった。
明日香の背中に揺られて…
また夜空の世界。
でも、ルィムナはいなくて。
(こんばんは、ルウェ)
「こんばんは…」
(ごめんね。無理させちゃって)
「ううん…」
(慣れるまで辛いだろうけど…頑張ってね)
「うん…」
(………。ボクと、約束…してくれる?)
「何を…?」
(…闇に触れないで)
「………」
(光…ルウェの中に、闇が見えた。光と闇は相容れない存在。絶対に、触れちゃダメ)
「それは…無理なんだぞ…」
(なんで…!)
「ルウェ、やめなさい」
(うぅ…)
「ルィムナ…」
「目覚めて。望が心配してるよ」
「うん…」
「…光があるところには、必ず闇もある。たしかに、ふたつは相容れない存在だけど、あなたたちが変えてくれるのかもしれない。だから、自分の信じる道を進んで」
「うん…」
(ルウェ…)
狼の姉さまとルィムナとの約束…。
自分の信じる道を、真っ直ぐ前に進む…。
約束…
目を開けると、明日香の背中が見えた。
「あ、起きた」
「え?」
「おはよう」
「おはよ…」
「ルウェ!良かったぁ。大丈夫?」
「うん…。でも、ちょっとしんどい…」
身体が…動かない。
声は出るけど。
「明日香に乗せてもらったらええわ。昼にはヤクゥルに着く思うし」
「ワゥ」
「うん…ありがと…」
明日香はチラリとこっちを見て、また前を向いた。
(ところでさ…)
「おわっ!」「ひゃぅ!」
(なにさ。二人ともびっくりしすぎじゃない?)
「いきなり出てくんな!このアホ!」
(アホって何さ!)
「アホはアホじゃ、アホ!」
(いったぁ~!)
お兄ちゃんは、ルウェの頭を思いっきり叩く。
ルウェはしばらく目を回して。
「…で、どうしたの?」
(はうぅ…。頭が痛い…)
「だ、大丈夫?」
(うん…ありがと…)
「それで、何?」
(あ、うん。えっとね、うーんと…忘れた)
「帰れ!」
(に、兄ちゃんが悪いんだからね!)
「やかましいわ!」
「まあまあ…」
望が間に入って、喧嘩を止める。
…もうちょっと見たかったかな。
(ふぁ…あふぅ…。まあいいかぁ…。なんか眠たくなってきたし…)
「用件、思い出してから帰れよ」
(おやすみ~…)
「おい!」
そして、そのままルウェは消えてしまった。
「ホンマにあいつは…」
「あなたと喧嘩して疲れたんじゃないですか?」
「そんなヤワちゃうて。契約であいつも消耗してるからやろ」
「そうなんですか?」
「ああ。マ、ナク。北の言葉で生命共同体ゆう意味らしいねんけどな。聖獣と契約者はマ、ナクになるねんてさ。オレはよう分からんけど。師匠は、聖獣と契約者の生命が融合するときに莫大な力を使うとかゆうてたかな…」
「ふぅん。師匠がいたんですね」
「食い付くとこ、そこかい!」
「他に食い付くところ、ありました?」
「はぁ…。まあええわ。召喚師ゆうんわな、いわば一見さんお断りや。紹介がないと、聖獣と契約出来んどころか、会いも出来ん。まあ、自分らは運が良かったっちゅーこっちゃ」
「へぇ~。知らなかったです」
「召喚師に憧れてたんちゃうんかい」
「はい。でも、噂に聞くばっかりで…」
「まあ、数は少ないな」
「運が良かったんだなぁ」
「へへっ、オレを雇って正解やったやろ」
「…まあ、そこだけは評価してあげます」
「なんや、素直やないなぁ」
「ふん」
望はそっぽを向いて。
ホント、素直じゃないんだぞ。
「あいつも無理してたんかなぁ…」
「心配になりました?」
「まあな。兄妹みたいなもんやし」
「兄弟…」
「へへ、あいつの方が歳上やねんけどな」
「へぇ~。何歳くらいなんですか?」
「さあなぁ。あいつは百二十とかゆうてたかな」
「百二十!?」
「まあ、あいつらの十歳がオレらの一歳くらいやから、人間の歳に換算したら十二歳くらいやろうな。たぶん」
「あぁ、それなら分かるかも」
「それでも、オレらの何倍も生きとる。何倍も、出会いと別れを繰り返してる…」
「あ…」
出会いと別れ。
同じ時間を生きられないから。
同じ時間を生きられても。
必ず訪れる瞬間。
「でもな、オレらがしんみりしてもしゃーない。出来るなら、一緒に未来を見てやりたいところやけど、それは無理やろうから。だから、あいつが今を楽しく生きてくれるんやったら、オレはなんでもしたる。可愛い妹のためやからな」
「自分も…なんだぞ…」
「ふふ、私も」
でも、ルウェには内緒。
その方が楽しめるよね。
「そういえば、今、妹って言いました?」
「ん?ゆうたけど?」
「…あの子って女の子だったんですか?」
「んー、知らん」
「えぇっ!?」
「ええやん、別に。あいつが男やとしても女やとしても。それで、あいつへの対応が変わるわけやないんやろ?」
「そうですけど…」
「そんな気になるんやったら聞けよ」
「えぇ~…。そんなこと聞けないですよ…」
「ほな、オレが聞いたる」
「…やっぱり私が聞きます」
「ほうか?」
「あなたは本当にズケズケ聞きそうですから」
「あいつに遠慮してどないすんねん」
「親しき仲にも礼儀あり。特に、そんな繊細な話なら尚更です」
「…ほうか」
ルウェは男の子なの?女の子なの?
(ボクはね…)
…ふふ、そうなんだ。
(兄ちゃんと望には内緒ね)
うん、分かってる。
「どうしたの?」
「なんでもないんだぞ」
「そう…?」
マ、ナク。
生命共同体。
(いつでも一緒にいるからね、ルウェ)
うん。
いつまでも一緒だよ。
ルウェ(聖獣)の性別やいかに。
ていうか、公開する日は来るのでしょうか。




