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07 ロンドンの鳥(2)

皆さま ご無沙汰しています。

いらしてくださりありがとうございます。

 ロンドンでは公園に比較的大きな池があることが多く、複数の池を訪れました。たいていの池は、浜辺のように水辺まで歩いて行ける部分がありました。

 日本の公園では、歩道と水面に落差があり水辺までは近づけない池しか行った記憶がありません。なので、最初は人間に向かってさまざまな水鳥が餌をくれ! とわちゃわちゃ押し寄せることに大変驚きました。


 日本と同様、ロンドンの池にもいろいろな種類の水鳥がたくさんいました。

 で、白鳥(swan)、黒鳥(black swan)、鴨(duck)、名前を知らない小さな黒い水鳥、名前を知らない小さな茶色っぽい水鳥などが一斉に水辺に上がって芋洗い状態で人々から餌をもらっている光景をよく見かけたものです。


 鳥たちは皆、「ご飯をくれよ〜」「めーし! めーし!」みたいな勢いで大声で鳴きながらのしのし人に寄ってきます。


 ある日、大きめな鴨が水から上がり、こちらを見すえ、しっかりと発達した両脚でピンクの水かきを上下させながら近づいてきた時には、(ごめんよ。何も持ってないんだ……)と後ずさりしてしまいました。特に脚の上の方は短い羽毛に包まれて太めなガマの穂っぽく発達しているし、背丈もあまり変わらなく感じ緊張しましたね。


 日本の池では、遠い水面を優雅に滑っていくように見える白鳥や鴨を眺めながら、(あの水の下はどうなっているのか? どこかの誰かが言っていたように、鳥たちが必死になって脚で水をいているんだろうか。私ももうちっと頑張らねば)なんて抽象的に考えていました。でも実際にはスワンでなくスワンボートが頭に浮かんだりして、水面下で水鳥の脚がどうなっているか、全然思い描けていませんでした。


 なので、ロンドンで大きめな鴨の太く長い両脚を目の当たりにし、(こりゃ日頃から相当水を搔いて鍛えていてもおかしくない。というか生きることが自然と体を鍛えることになってるのかな?)と想像が急に一気に具体的になりました。とはいえ、その鴨以外の鴨の脚がどうなっているかや、水面下でさまざまな鴨の脚がどう動いているかはわかりません。


 同じ水鳥でも白鳥の脚は意外と短く細かったです。片脚をちょこんと上げて、というか折り曲げ、まるで歯にくっついている海苔( のり)みたいに脚を体の脇に貼り付けるようにして泳いでいる時もあったし、陸でもふっくらした腹は目立つけれど足元はよたよたしているし、上述の、とある大きめな鴨と比べるとずいぶん違います。本当に必死に脚で水を掻いているのか疑問でした。


 ネット上の、私が勝手にこれは信憑性がありそうと思った 水中から白鳥を撮影した動画では、白鳥はほとんど脚を動かしていなかったです。また、白鳥は空気を含む構造の羽毛と尾脂腺びしせんから分泌される油(羽に塗る)の撥水性のおかげで水に浮いているのだそうで、そのことと考え合わせても、どうもふだん常に必死に脚で水を掻いているわけではなさそうです。

 ただ、 真剣に撮影された動画だと感じましたが信憑性を私は証明できないので 断言はしません。歯切れが悪くてすみません。


 また、このあと、鴨や他の鳥にも尾脂腺はあることや、ひとくちに鴨と言っても種類によって餌の採り方(水面でか水中に潜ってか)や脚の付いている場所(体の中央か後ろか)が違うらしいことも知りました。


 使うシチュエーションや付いている場所が違えば、脚の形状や使い方も異なってきてもおかしくはありません。(水面下で鴨や白鳥の脚がどうなっているかについては、やはり簡単には結論づけてはいけないな)と思いました。


 ちなみに水鳥の餌については、「パンは全粒粉のものでなければダメ」という旨の警告の掲示板を公園で見たことがあるのを覚えています。



 ハシビロコウ(shoebill、shoebird)の実物も ロンドンで初めて見ました。日本で人気があるのは知ってたんですが、何であそこまで? っていうのはわかっていなかったんですね。


 でも、公園内の湿地でハシビロコウがじっとしているのは、古い海外小説の挿絵のようでおもむきがありました。


 ハシビロコウは、全長約1.2mの青みがかった灰色の鳥で、頭が大きく、ビジネス用の紳士靴に似た形の黄色いくちばしも特徴的です。が、木々が鬱蒼と生い茂り暗い湿地にたたずんでいるのを遠くから見ると、子供の頃読んだ小説にあった白黒の細密画みたいに見えたのです。


 その後ある日、同じ公園の花壇で視線を感じてふっと振り向いたら、いたんですハシビロコウが。びっくりしましたね。背が高く大きな体、ネットで見たのより色が薄めな青みがかった灰色の羽、黄色くて平たいくちばし、そして体の割に小さな丸い目。


 ちょっと首をかしげていて、何を考えているのか全く読み取ることができません。つつかれてもおかしくない距離です。息をひそめてそばにいた夫の服の裾を引っ張りました。ハシビロコウ はじっと 私のことを見つめたままです。不思議と怖い感じはありませんでした。


 こちらの勝手な想像ですが、興味を持って 私を見つめているようにも見えます。なぜだろう。餌に見えるんだろうか?(魚などを食べるそうです)。いや、私越しに好きな花を観賞しているのかも。

 全然動かないので、とてつもなく深遠なことを考えているようにも見えます。


 そうっと少しずつ後ずさりして スマホのカメラを構えました。でもそんな時に限って容量不足で写真が撮れません。

 しばらくするとハシビロコウは羽ばたいてどこかへ行ってしまいました。


 しかしながらこの話の心もとないところは、8割はハシビロコウだったと思うのですが2割ほど、あれはアオサギ (grey heron)だったんじゃないかという疑惑が自分の心の中にあることです。申し訳ありません。


 この2つの鳥は写真を比べてみると見間違えようがありません。アオサギは全長約90cmとこちらもでかい鳥ですが、全体的にほっそりしていてくちばしも細長く鋭いです。それに小さな頭から首はぱっと見白っぽい(よく見ると頭部には後頭部にかけて黒い筋があります)。


 頭の大きさや体の太さも違うし、ハシビロコウとの共通項といえば背が高めで羽に青みがかった灰色っぽい部分があること、目が小さく丸いこと、くちばしが黄色っぽいこと、脚が細長いところくらいです。あ……結構あったな。


 まあ、アオサギは何度もその公園で見ていたので、いくらすぐそばで遭遇しても、きれいだなあとは思っても衝撃を受けるようなことはなかったと思います。

 それに、ハシビロコウでないとしたら、なぜ急にハシビロコウに対する印象が好意的になったのかその理由がわかりません。


 夫に聞いても「どっちかだったとは思うよ」と言うだけで彼もはっきり覚えていないようです。元々、食べ物になったもの以外は鳥に興味がない人間ですし。


 同じ公園にハシビロコウもアオサギもいるのはわかっているのですが……。

 あー、スマホ容量を常に一定量空けて、写真を撮っておくべきでした!


 余談ですが アオサギもきれいな鳥で、シャガというアヤメ科の花を見ると、私は色合いや花弁の形からからアオサギを思い出します。桜の季節に足元に咲いていることもあります。


ここまでお読みいただきまして、どうもありがとうございました。

ご来訪に心から感謝いたします。

急に秋めいてきた(執筆時)ので、ご自愛ください。

よろしければまたお越しください。

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