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ホテル大和~史上最高にして最低の戦艦~  作者: 佐久間五十六


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史上最も愚かな水上特攻作戦

 世界の海戦史上、水上特攻が行われた事は未だかつてなかった。

 それでも大和や随伴艦による、沖縄水上特攻作戦は、史上最も愚かな作戦と言う事が出来る。

 護衛戦闘機を確保する事すら、ままならなかった。そういった諸事情を鑑みても、やはり沖縄への水上特攻は、するべきではなかった。

 とは言え、日本軍としても、沖縄へのアメリカ軍の侵攻を座して待つ事が出来なかった事も、事実である。

 言うなれば、大和の"死に場所"を確保したようなものである。出撃機会に専ら恵まれていなかった大和を、いつ、どの段階で投入するかという事は、日本海軍にとっても、悩みの種であった。

 沖縄への水上特攻は、降ってわいた好機となった。もちろん、勝利したいとは思うも、勝てるとは、思ってもいなかっただろう。少しでもアメリカ軍の足止めが出来れば良いと。

 勝てない作戦であると知りつつも、大和を投入せざるを得なかった時点で日本軍の負けである。作戦の是非ほともかくとしても、日本海軍は第二次世界大戦全般を通じて、戦略や、長期的なビジョンを欠いていた。

 場当たり的な戦略ばかりを繰り返して、敗退していった日本海軍にとっては、今回の大和沖縄水上特攻も、場当たり的なものであった。

 作戦と言うものは、本来、二手三手先を読んで行うべきものである。そこに、外交的な政治戦略を絡めて、戦うのが本来の国家総力戦の在り方である。

 にも関わらず日本軍は、全ての要素において後手に回り、作戦の一つ一つが場当たり的なものであったと言える。

 沖縄水上特攻が、最も愚かであった理由は、艦艇が不足していたからではない。海軍としての意地と面子の為に、多くの将兵を死なせてしまった事だろう。世界最強と言われた大和は、リメンバーパールハーバーの如く、見るも無惨にグラマンやシコルスキーにやられた。

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