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ラミアの森  作者: 林育造
最終章
35/44

餌の問題がなければ、元々いろいろな肉食獣人たちに食糧にされているだけあって、多くの子どもを産む。需要も多く、それなりの数を譲っていたのだがそれでもイノシシは着実に殖えていった。牧場のめどが何とか立ったので、次は無謀にも発電所建設に挑戦してみた。

マナドから鉄を入手することができたし、例の鍾乳洞から滝になって落ちる流れを利用すれば、水力発電なら可能なのではないかと思ったわけである。うまくいけば電気の恩恵は計り知れない。

ただ、問題があるとすれば、


俺が発電機の仕組みをすぐ作成が可能なほどには知らなかったことと、発電所だけあっても電化製品が何一つ存在していないことだろうか。


働きだけ知っていて仕組みを知らない物を作るのは難しい。もちろん、仕組みを知っていても加工する手段などで苦労すると思うが、知っているのは大まかな方法だけ。確か、発電機はモーターと同じもので、モーターを作って回転させると発電するはずだ。わずかな知識をもとに何とかしようとしてみたのだが、モーターを作るにはまず磁石が必要だったと思いだし、そのまま途方に暮れた。


この世界で磁石を見たことなどないぞ、方位磁石とか存在するのだろうか。荒野で移動するときはいつも太陽の方角を基準にしていたし、ママサ近くの地形はだいたい覚えているから、太陽が出ていないと困るほどの遠出をしたことがない。森の中では方角がわからないが、ラミア族に聞けば道ぐらい教えてくれる。雨だったら、よほど緊急の用事以外出歩かない。要は方位磁石さえ、その必要性を感じたことがなかったのである。

そんな状態で、磁石の存在を気にするわけがない。もしどこかに磁石があったとしても、注意していなければ存在に気付けないだろう。

こうなったら電磁石だけでも作ってみようと、銅線を鉄芯に巻きつけて電気を流してみたらショートしたらしく火傷しそうになった。

こうして、電線に絶縁材として樹脂(木のヤニ)を塗ることを覚えた。


そんなところから始めて、モーターらしきものを作るのに数か月、ちゃんと回すことができたら発電できるのではないかと言う構造にするのに、さらに多くの時間がかかった。磁石は荒野や砂漠で鉄の棒を引きずってみた所、わずかに砂鉄の様な粒がくっついた。こんな細かいのではいくら天然の磁石があると言っても意味はないので、手分けして集めた砂鉄磁石を焼き固め、着磁というのだろうか、コイルを巻いて電気を流してみたらそれらしいものになった。

電化製品もないので、最初はもっとも簡単に照明からである。幸い、注射器を作れるほどの職人がいるのだ。発電に成功する前に、電球のようなものは完成した。光る部分である芯は竹の繊維を蒸し焼きにするのだったか、似たような植物で作った。大型の電池はすでに作っていたので、繋いでみたら一瞬光って焼き切れた。試行錯誤は楽しいのだが、発電機も未完成だったので電球の制作は興味を示していた職人見習いに丸投げした。

電気を作れても、送電できなければ意味がない。街の外に電柱を立て、これまたキノブさんに碍子を作ってもらい、絶縁と防水のために電線に塗った樹脂(木のヤニ)の耐久試験を兼ねて送電実験をすることにした。


電柱を立てる作業などは、すっかり土木工事に慣れてしまったマナド組がやったのだが、高所作業を手伝ってくれたのが木登りが意外に得意なパフと、電線を運んだハッピーたちだったりする。パフは木に巻きついて、そのままの姿勢で登っていくことができる。天辺で横向きに木の棒を固定し、碍子を取り付けていく。そこへ隣の電柱から電線を持ったハッピーが渡しに行ったのだが

「……の……もうむもんっ」

「ひゅーん……ぴゅっ……」


この二人、高い電柱の上の方で、何やら揉めていた。衝突している感じではなく、じゃれ合っているに近い揉め方だとは思う。

なにしろ、その気になればハッピーは爪を立てて引っ張り落とせば、パフは咬みつけばあっという間に決着がつくはずなのに、そんな様子はまったくないのだから。他のラミアとハルピュイアはどうか知らないが、というか、そもそも接触する機会がないはずだが、この二人、意外に仲が良かったりする。本来夜行性のはずのパフが手伝ってくれている時、ハッピーはイーグルが飛んで来ないか警戒し、もし来たら追い払っているのだ。他の個体が絶対に近づかない森に、唯一接近してあまつさえ木の上で寝ていることさえあったのがハッピーである。


そのハッピーだが、その3日後うちに卵を持ってきやがった。

あの時は焦った。

うちで産んだのならともかく、卵を持って飛んで来たのだ。

器用に卵を抱えて俺にすり寄り、見上げるようにして

「ぴゅういー?」と鳴いた。


これはなにか?

「あなたの子よ」

「誰の子かわかるものか」

ってやつなのだろうか。いやいやいや、そんなはずは……。まさか、電柱の上で揉めていた原因がこれだったりして。


「カルボ師匠、カルボ師匠」

「慌ててどうした、ルッツ先生」

「あの、師匠はハルピュイアの卵とか雛って見たことあります?」

「あるよ、やつらは卵を産むときにはえらく高い木の上に()を作るからな。巣の位置を見ると卵があるかどうかだいたいわかる」

「ハルピュイアが卵を持って来たことは」

「あぁ、そういうことか。巣を構えずに産んだんなら、まず無精卵だな、食えないこともないし、水筒にもなるぞ」

そこまで割り切れるか自信はなかったが、何とか安心した。

結局、卵は孵らなかった。ハルピュイアは卵が生きているかどうかわかるらしく、10日ほどするとハッピーは悲しそうに首を振ると卵を持ってどこかに飛んで行った。


次の日には元のハッピーになって戻ってきたが、何を思ったか電柱に()を作り始めた。お前はどこのコウノトリだ。

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