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レベル1の村娘、実は世界最強でした  作者: ななほし


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第14話 古き塔の守護者

――ドクン。


 短剣が。


 私の手の中で脈打っている。


「……ミア」


 レオンが私の前に立った。


「下がってろ」


「でも……」


「大丈夫だ」


 レオンが剣を構える。


「俺たちがいる」


 その言葉に。


 少しだけ安心した。


「……はい」


 私は一歩下がる。


 目の前には。


 黒い腕。


 そして。


 一つの赤い目。


『――排除を開始』


 低い声が響いた。


 次の瞬間。


 黒い腕が。


 鞭のように振り下ろされた。


「――っ!」


 レオンが剣で受ける。


 ――ガァン!!


「ぐっ……!」


 身体が吹き飛ばされる。


「レオン!」


「大丈夫!」


 レオンは壁にぶつかりながらも立ち上がった。


「硬すぎる……!」


 ガルドが前に出る。


「ならば――俺が止める」


 盾を構える。


「うおおおおっ!」


 黒い腕と盾がぶつかった。


 ――ズドォン!!


 床が割れる。


「ガルド!」


「問題ない!」


 しかし。


 少しずつ。


 ガルドの身体が後ろへ押されていく。


「……重い!」


 シエラが杖を掲げる。


「なら――私が止める!」


「氷槍!」


 無数の氷の槍が飛んでいく。


 ――ドドドドドッ!


 黒い腕に突き刺さる。


「効いてる!」


 クロエが叫ぶ。


 しかし。


 次の瞬間。


 黒い腕から。


 黒い霧が噴き出した。


 氷が。


 全部溶けた。


「嘘……」


 シエラの顔が青ざめる。


「魔法を……食べた?」


 黒い腕が。


 ゆっくりとこちらへ向く。


『――障害を確認』


『排除』


「まずい!」


 レオンが叫ぶ。


 黒い腕が。


 四人へ向かって伸びた。


「みんな!」


 私は叫んだ。


「逃げて!」


「ミア!?」


 私は走った。


 みんなを守らなきゃ。


 そう思った。


 黒い腕が迫る。


 私は短剣を握る。


「……お願い」


 何をお願いしているのか。


 自分でも分からない。


「私の仲間を傷つけないで!」


 そして。


 短剣を。


 黒い腕へ向けた。


 ――カッ。


 光が。


 部屋いっぱいに広がった。


「……え?」


 次の瞬間。


 黒い腕が。


 止まった。


『…………』


 赤い目が。


 私を見る。


 そして。


『認証』


「認証?」


 私が聞き返す。


『管理者権限を確認』


 シエラが目を見開いた。


「管理者……?」


 黒い腕が。


 ゆっくりと。


 私の前で跪いた。


 ――ズズン。


 巨大な身体が。


 床へ沈む。


「……え?」


 私は固まった。


「敵じゃ……ない?」


 黒い目が。


 私を見上げる。


『対象――ミア・ルナベル』


『確認』


『守護対象に変更』


「……守護対象?」


 私は首を傾げる。


「じゃあ……」


 私は少し考えて。


「もう攻撃しない?」


『肯定』


「よかった……」


 私はホッと息を吐いた。


 レオンが。


 呆然と私を見る。


「……今の何だ?」


「分かりません」


 私は正直に答えた。


「短剣を向けただけです」


「それだけで?」


「はい」


「…………」


 誰も何も言わない。


 クロエが。


 ぽつりと言った。


「……もう驚くの疲れてきた」


「私も」


 シエラが頷く。


「同感だ」


 ガルドまで頷いた。


「ええっ!?」


 私は驚いた。


「みんな、ひどくないですか?」


 クロエが笑った。


「ミアが普通じゃないのが悪い」


「普通です!」


「はいはい」


「本当ですよ!」


     ◇


 守護者が。


 ゆっくりと立ち上がった。


『管理者へ』


「管理者?」


『あなたに伝達する』


 赤い目が光る。


『古き塔へ進む権利を付与』


 壁の一部が。


 音を立てて動いた。


 ――ゴゴゴゴゴ……。


 隠されていた通路が現れる。


「……道?」


 シエラが近づく。


「ここから先が古き塔への道ね」


『ただし』


 守護者が続ける。


『塔へ入る前に』


『一つ確認する必要がある』


「何を?」


『あなたが――』


 一瞬。


 赤い目が。


 私の瞳を見る。


『何者なのか』


「……私?」


『肯定』


 私は困った。


「私はミアです」


『それは識別名』


「……?」


『では質問する』


 守護者の声が。


 少しだけ低くなった。


『あなたは――人間ですか?』


 私は。


 答えられなかった。


「……人間」


 たぶん。


 そうだ。


 私は村で生まれて。


 母さんに育てられて。


 普通に暮らしてきた。


 だから。


「……人間です」


 私は答えた。


『――判定』


 赤い目が輝く。


 長い沈黙。


 そして。


『判定不能』


「……え?」


 シエラが息を呑む。


「判定不能?」


『生命分類――該当なし』


『魔族――該当なし』


『精霊――該当なし』


『神族――該当なし』


『人類――該当なし』


 私は。


 何も言えなかった。


「じゃあ……私は?」


 守護者は。


 しばらく沈黙した。


 そして。


『現在の情報では――』


『あなたを分類することはできない』


 胸の奥が。


 少しだけ冷たくなった。


「……私って」


 何なんだろう。


 その時。


 レオンが私の肩に手を置いた。


「ミア」


「……はい」


「分類なんて関係ないだろ」


「え?」


「お前はお前だ」


 ガルドも頷く。


「同感だ」


 クロエが笑う。


「ミアはミアでしょ」


 シエラも。


「少なくとも、私にとっては仲間よ」


 私は。


 少しだけ目を潤ませた。


「……みんな」


 嬉しかった。


 何者なのか分からなくても。


 この人たちと一緒なら。


 大丈夫な気がした。


     ◇


 そして。


 私たちは。


 隠された通路へ入った。


 長い廊下。


 壁には。


 無数の古代文字。


 その中に。


 一つ。


 見覚えのある文字があった。


 ――ルナベル。


「……また父さんの名前」


 シエラが文字を調べる。


「違うわ」


「え?」


「これは名前じゃない」


「じゃあ何?」


 シエラは。


 ゆっくり読み上げた。


「――『始原の血統』」


「始原……?」


「世界の最初に存在した血統、という意味だと思う」


 私は自分の手を見る。


「私の……血?」


 その瞬間。


 廊下の奥から。


 声が聞こえた。


「――その通りだ」


「!」


 私たちは一斉に振り返った。


 そこに。


 一人の男が立っていた。


 銀色の髪。


 赤い瞳。


 見覚えのある顔。


「……あなた」


 以前。


 私を襲った黒ローブの男たちから。


 私たちを助けた人物。


 そして。


「アレン・ルナベルの……弟」


 男は。


 静かに頷いた。


「久しぶりだな、ミア」


「どうしてここに?」


「お前を止めに来た」


「……私を?」


「ああ」


 男が剣を抜く。


 その刃には。


 私の短剣と同じ紋章が刻まれていた。


「これ以上、先へ進めば――」


 男の目が。


 悲しそうに揺れる。


「お前はもう、普通の人生には戻れない」


 私は。


 短剣を握った。


「……それでも」


 一歩。


 前へ出る。


「知りたいです」


「何を?」


「父さんのこと」


 男は目を閉じた。


「……そうか」


 そして。


 静かに剣を構える。


「ならば――」


 古き塔へ続く地下道に。


 金属音が響いた。


「俺を倒して進め」


 その瞬間。


 古代文字が。


 一斉に赤く輝いた。


 そして。


 遠く離れた場所で。


 誰かが。


 静かに笑った。


「ようやく始まったか」


 その声を。


 私はまだ知らない。


 それが。


 千年前から私を待っていた男の声だということを。

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