第1話 LAST=MORNING
"朝"それは何気ない普通の時間。あるいは平和の象徴とも言っていい。
戦争から4年。このころ世界には朝を迎えられない子供達が何人もおりそれは確実に現在進行形をし続けている。
朝。一緒にご飯を食べたのに夕方には一緒にご飯を食べていない。そんなことが当たり前の世の中であった。
――そしてここにこの世界において比較的幸せであろう2人がいる。
一緒に笑ったり。一緒に悲しんだり。一緒に怒ったり。一緒に遊んだり――何気ない1日をともに過ごす2人がいた。
だがこの2人の平和は偽りの平和。かつて少年が創り出した疑似の平和でしかない。なぜなら2人はこれまでも――これから先も抗う事の出来ない【運命】という鎖に縛り付けられているからである。
したがってこのとき2人は知らなかった。この平和が崩れ去る日が今日であることを――
この朝が何もかも忘れてしまっていられる最後の平和な朝であることを――
日向side
――……ガチャッ!!!!
「…知恵理。遅刻まであと15分だ」
「…ごめんなさい」
玄関の扉を勢いよく開きながら俺はこの状況を分かりやすく幼なじみの少女へと言い渡す。
さて皆さん。いきなりですまないが現在遅刻ギリギリだ。
だがちょっとしたいいわけはさせてくれ――
日向side(5分前)
「着替えたよ〜知恵理〜」
俺は制服への着替えを済ませてそう言いながら我が家なはずなのに既に知恵理の城と化したキッチンへと足を踏み入れる。
そしてそこで俺を待ち構えているのは可愛いフリフリのピンクのエプロンをした知恵理。そして知恵理作の温かな料理の数々である。
思わず生唾がでそうだ。
少し余談だが実は俺と知恵理には親がいない。記憶の上ではおぼろげに顔をかたどることができるがすべては思い出せない。
そのため俺と知恵理は親がいない子ども達が集められる場所。所謂孤児院の出身である。
寂しいといえば寂しいさ。
だがそれを押して余るくらいの幼馴染と親友(詳しくは後で)達がいるからまぁ結構楽しく人生を遅らせて貰っている。
ちなみにもう1つ余談として俺は一切合切家事ができない!!←威張って言うことではない。
だから俺は家事を全面的に隣に住んでいる知恵理に任せているのだが――
なんて知恵理は家事の天才だっただ!!
いやこれには本当にびっくりだよ。 一度食べたものならほぼ再現できるし掃除は一時間もすれば両家(家は違うから間違いなく)ともチリ一つなしおまけにそれを何の苦もなくやるのだ。
――化け物じみてね。
まぁそういうことだから俺は家事一切をしてない状況に陥ってしまった訳だ。
う〜ん。自分で言っておきながら情けない……。
こほん――話がずれたな。
簡単に言ってしまえばとりあえず俺は今知恵理の朝ご飯の前にいる。
はしょったったとか気にすんな。俺は気にしない。
「いつもながらすげーなー」
こんな言葉がでるのも必然である。
「ふふふ♪ありがとう。まだ一時間近く時間あるからゆっくりたべてね」
――そういうことなら遠慮なく………ん?
そのとき俺はある違和感に気がついた。
まず学校は7時には出ないと間に合わないから今の時刻は7時の一時間前。つまり6時だということだ。
だが外を見れば日は6時にしては高すぎるような……。
――まさか……な。
でも確認する必要はある。なぜなら向かい合わせに座った幼なじみは何が楽しいのか終始笑顔のまま。
だが忘れてはいけないのがこいつが超天然のポンコツだと言うこと。
俺は一度ゴクリと唾を飲み込み。彼女にそれを確認するために口を開くのであった。
「…なぁ。知恵理??」
「な〜に?」
知恵理は可愛らしく首を傾げる。その仕草。確かにかわいいけど今はそれどこれではない。
俺は再び唾を飲み込むとジッと彼女を見つめ問いかけるのだった。
「今何時だ?」
「え?」
「……………」
「……(腕時計を見る)ああ〜!!」
――やっぱりか。
どうやら俺の予想は完全に大当たりしてしまったらしい。
結論。やっぱこいつは今までに類を見ないポンコツだ。
「はぁ〜…」
「今。7時だ……」
「だろうと思ったよ」
まったく本当に知恵理はたまにというか1日1回は何かやってくれるよ。
俺はため息を吐きながら目の前の幼なじみのスキルを再確認する。
そして“両手”に箸を持ち大きく深呼吸をすると自らに与えられた朝飯を見据え宣言するのだった。
「……1分で食べるよ」
こうして今の状況になったわけ。はい回想終了。
日向side(5分後)
「ヒナ君早く!!」
玄関を閉めるために鍵をポケットから出す俺を知恵理が急がせる。
いや。まぁ起こされておいて言うセリフじゃないと思うが――
「知恵理。確かに俺も悪いけどお前も主犯の1人であること忘れるな??」
「はぅ〜ごめんなさい…」
あぁそんな悲しい顔されるとこっちが悲しくなってくるよ。
「いや……マジで起こさせてしまっている俺も悪いし寧ろお前には感謝してるんだからさ知恵理……だからそんな顔すんなよ……」
そう言いながら俺は知恵理の髪を撫でる。
昔から知恵理が好きな動作の一つがこれ。知恵理の長い白銀の髪はみていてあきないし触るとサラサラと気持ちいいから俺もこれは好きなんだ。
知恵理の方も撫でられたからか今では「えへへ」と笑顔さえ見せている。
その幸せそうな顔に俺も思わず笑みをこぼしてしまうのであった。
――とこんなことしている場合じゃなかった。
「知恵理。行くぞ!!」
「えへへ…うん♪ヒナ君。早く行かないと学校遅刻しちゃうもんね♪」
頭から手を離したとき少し残念そうな顔をした知恵理だが俺が手をつかむと再び笑顔が返り咲いた。
だがそんな知恵理の手を引こうとしたそのとき――。
――ゾクッ!!
背中にとてつもないくらいの悪漢が走った。
まるで何か鋭いナイフに刺されたようなそんな感覚である。
――…視線か?
そう思った瞬間に俺は真後ろにあるおおきなビルを眺めていた。
高い高い……そう屋上のほうだ。
だが眺めた先が遠すぎることもあり何も見当たらない。
そして気がついたときにはいつのまにかさっきまでの視線は感じなくなっていた。
――気のせいか…?
「ヒナ君??」
そのとき知恵理が俺の方をキョトンとした顔で眺める。その表情には俺を心配するような眼差しもあった。
そんな顔をされたら俺の方が悲しい。こいつにはいても笑顔でいてほしいからな。
そう思った俺はその顔に一度微笑みを見せると知恵理の手を引いて一気に駆け出すのだった。
「きゃぁ!!」
「ごめんな。そろそろマジでヤバいから全力疾走で行くぜ!!」
「待ってよー。もう少しスピード緩めて〜」
結局俺はその視線を気のせいだと思い込むことにした。
そう自分で納得させないと自分自身。あの視線に。そしてあの視線の主が辿っている世界に巻き込まれてしまいそうな気がした。
――このときすでに手遅れであったことも知らずに。
???side
俺はあの2人が立ち去るのをビルの最上階から見下ろしていた。
“あいつ”が白銀の髪をした少女の手を引いて走っていっている姿を。
だがそれはあいつが望んだこと……。
あいつが選び行った「平和」という名の道を進んでいる証拠であった。
そして俺はそれを壊す者。
離れたとはいえあいつの体に眠る戦いの記憶は衰えてない。俺の視線を読み取ったその瞬間に俺はそう感じていた。
まさかさっきの視線だけでこちらの存在に気づくとは正直想定外だった。
だがあいつはまだまだ使える。 あいつがまだ戦いを忘れていないと分かっただけよししよう。
「……次に会うときには目覚めてもらうぞ。かつての仲間【紅翼の天使】」
――バサッ!!
俺は俺の特徴である長い黒髪と死神を思わせる黒い表装を揺らしながらビルから飛び降りる。
だがそれで俺は慌てることはない。なぜならこれはこれまで様々な戦場をくぐり抜け闘いぬいてきた俺が手に入れた力。
4年前の戦争ですらくぐり抜けた俺の魂の力であるからだ。
「……LAST MORNING.精々最後の平和な1日を楽しめよ――日向」
そう言って黒ずくめの男――【時雨水城】はその場を立ち去っていく。
十四階だてのビルの目の前から……。
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作者(以下"作")「どうも初めまして〜作者の†HYUGA†でーす♪」
日向(以下"日")「同じく初めまして。主人公の不知火日向だ」
作「まず最初に読者のみなさん。この小説を読んでいただいてありがとうございまーす。で、ここは一応あとがきという形で次回予告のコーナーとしていこうと思ってます」
日「ストーリー上に乗せろなかった情報。隠れ情報や雑談を主にしたコーナーというわけだ」
作「はい。ちなみに今回は顔見せということでこれで終わりです。ですが次回からはさらに多くのキャラを乗せていきたいと思います」
日「楽しみにしててくれ」
作「では、次回予告行きます。時の秒針次回は――
学校へと走り着いた日向と知恵理。クラスメートは毎朝のことなのでそんな2人を気にすることはない。
そんな中、日向達に近づいてくる3人。バカとロリと眼帯。果たして彼らと日向達との関係は?
そして、日向は転校生の存在を知る。果たして転校生の介入により物語はどう動くのか?
次回【中国人の転校生】」
日「問題nothingだぜ!!」
作「なんでそこで日向が出てくるんだ?」
日「最後に主人公の口癖が絶対はいってくるアニメの次回予告とかあるだろ?あれのマネだって」
作「…まさか、これから毎回やるのか?」
日「たぶんね」
次回に続く!!